戦時中での横溝正史的なミステリ
2021/11/23 13:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけとり - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白かった。この時代背景・設定でないとできないトリック、動機、ストーリーであり、しかしこの惨劇も10万人殺された大阪大空襲の前では微々たる数でもあり、そこは「たかが殺人じゃないか」を彷彿とさせる…。ちょっと捻ったところもあるけれど正統派な展開だし、大阪弁でも読みやすいし、わからないところにはふりがなや解説があるので読みやすかった。
華やかな時代から始まって、徐々に太平洋戦争に世相が呑まれていく描写が切ないね…。
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船場の言葉は谷崎文学を彷彿とさせるし、お家柄や血のつながりやら旧家の跡継ぎもんだいやらは江戸川乱歩や横溝正史を思い起こさせる。プロローグからグイグイと引きずり込まれそれはもう楽しい(?!)殺人事件の始まり始まり!
しかも、探偵と名乗る輩の登場もあり……
骨董品、お宝状態のミステリ小説の紹介もあり、わたくし的には大ヒットいえいえ、ホームランでした。
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大阪船場で化粧品事業で富を得た大鞠家。
戦時中、大鞠家の長男に嫁いだ美禰子は夫が軍医として出征したため、大鞠家に身を寄せることになる。
創業者の妻でいまだに大鞠家で権力を握る多可
多可の娘、大鞠家を表向き仕切る喜代江
喜代江の婿の茂造
喜代江の長女、月子
次女の文子
戦時下で化粧品は売れなくなり、次男も出征、何かにつけて美禰子に嫌がらせをする、喜代江と月子。そんな中、大鞠家で事件が起きる。
大阪の土地勘が無いもので、大阪に思い入れがあったらもう少し世界に入れたのかな。
時間があちこちに飛ぶので混乱。
戦前戦後の大阪商人については興味深かった。丁稚さんっていうとドリフで番頭(いかりや)さんに怒鳴られて叩かれてるイメージで。
時代小説も読んでるけど、名前や立場がこんなだったなんて。
「たかが殺人…」とちょっと被るけど、こういう戦争の描き方は構えずに読めて、より身近に感じた。
あちこちに推理小説の有名どころと似たようなシーンがあって、もしかしてとニヤニヤするけれど、いろいろ盛り込み過ぎて、バタバタな感じ。
犯人はすぐにわかっちゃうし、そこは残念ー。
多一郎、美禰子夫妻がもっと活躍しても楽しそうなんだけどな、多一郎の生真面目で不器用な感じ面白いのに。
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戦時中の大阪・船場を舞台にした、雰囲気たっぷりの探偵小説。古き良き探偵小説のエッセンスをちりばめた感じ。
本当に犯人に実行できるのか厳しそうなところも含めて。
毅然とした美禰子の姿が好もしい。
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戦時中の大阪の商家、大鞠家を舞台にした連続殺人事件。
ミステリとしては少々強引な部分もあるかと思うが、大鞠家の年代記でもあり、当時の大阪の商人文化が詳細に描かれているのは読み応えあり。そうした背景がミステリに組み込まれているのもよかった。久々に芦辺拓を読んだが、面白かった。
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戦時中の大阪・船場を舞台にしたミステリ。かつては隆盛を誇った商家の大鞠家の一族を襲う奇怪な連続殺人事件。時代背景なども濃密に味わえる正統派本格ミステリです。
はい、もうこういうのは大好き。このシンプルかつ直截的なタイトルも良い! 事件そのものの道具立てやトリックの魅力もだけれど、思わせぶりなあれやこれやがラストで全部繋がって全景が見えるのがとんでもなく爽快でした。そして、事件のそこここに秘められた探偵小説のエッセンスが素敵としかいいようがありません。本当はとてつもなく暗い時代なのだし、描かれる物語自体も楽しいと言えるものではないはずなのだけれど(事件直後に起こったあれとか、ああいう解決の仕方になるというのも衝撃でした)。あまりに楽しい一作でした。
ああ、それにしても彼女たちが良いなあ。事件の「終わり」をまさかあんな形で見届けることになろうとは。素晴らしいラストです。
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大阪・船場の商家特有の文化。
謎解きは取ってつけた感があるが、伏線は一応回収されているようだし、本書の本筋はそこにはない。
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特に前知識もなく、何気なく図書館で見つけて借りたのがきっかけ。タイトルが「大鞠家殺人事件」なのでミステリーだとはわかって借りるがあまり期待はしていなかったけど、非常に面白かった!
読み初めから惹きつけられた。後取り息子の謎の失踪から始まり、昭和20年大阪大空襲の夜の大阪船場で化粧品を扱う商家での不可解な連続殺人事件をレトロな雰囲気で扱うミステリー。
お屋敷、一族、身分制度、謎の失踪、不可思議な死体、ヒロイン、幼気な少女、刑事、巡査、探偵、等々が登場する正統派ミステリー。であるのに何だか新しい。
さて、誰が犯人でしょうか?!
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ミステリーと言うより、戦前戦後の大阪の歴史を知る一助になる小説という感じ。
推理小説として読むとまだるっこしさと粗が目立つ。
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第二次世界大戦前後の大阪を舞台に、商人たちの活動の中で発生した奇怪な事件を主題にした長編小説だが、意外にするりと読めた.大鞠家の千太郎が神隠しに会い、話が始まるが、戦争で商売もうまく行かない所に次々に殺人事件が発生する.最終的に長男多一郎の嫁 美禰子、医師の西ナツ子、平田鶴子の同級生の3名が謎解きをする場面が楽しめた.商いの世界では女たちの勢力が非常に強いのだなと感じた.
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本格ミステリ大賞ノミネート作品とのことで図書館で借りたけど、ちょっと読めなかった・・・。
時代モノがもともと得意じゃないのと、ボリュームもかなりあり、ギブアップ。
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大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場。戦下の昭和十八年、陸軍軍人の娘・中久世美禰子は婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁いだ。だが夫・多一郎は軍医として出征し、美禰子は新婚早々、一癖も二癖もある大鞠家の人々と同居することになる。やがて彼女は一族を襲う惨劇に巻きこまれ..… 大阪大空襲前夜に起きる怪異と驚愕の連続を描き、正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!
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SL 2022.5.14-2022.5.17
本格ミステリ大賞受賞。
美穪子が魅力的。
ラストに鶴子が登場してチャチャっと謎解きするのはどうかと思う。
犯人も無理がある。生まれた時から両親と信じていた人たちをそんなに簡単に憎めるものだろうか。実の両親には会ったこともないのに。
あと、月子が刺されて血糊がぶちまけられていたのは何のため?「十二の刺傷」になぞらえた?だけ?
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大阪・船場の商家を舞台にした著者の自負いわく「前例のない作品」。豊かな語りで楽しく読める正統派ミステリだ。
「だから…みんなを殺したんです」(p14)
現代部分のいきなりの告白で、物語は幕を開ける。すると、時代は明治へ飛んで、パノラマ館での跡継ぎの失踪事件とくる。大正、昭和とくだって、ついに連続殺人の幕が開ける。ひとくせもふたくせもある人物が配置されて、ぐいぐい読ませる。動機もトリックも、この時代の商家ならでは。そして、犯人は…。
実に面白かったのだが、減点部分は探偵だな。唐突というかね。
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戦時中でも折目正しい旧家の様子やエグい死に方、金田一風の探偵の登場等、何処かで読んだ感が溢れていた。残りわずかの所で登場する美禰子さんの元同級生が、ちゃっちゃと事件を解決するのが面白いと言えば面白いが、何とも不可解さは消えない。
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舞台を大阪の船場に設定し、時代を明治から昭和前半とした事で、見事に日本版「お屋敷(マナーハウス)モノ」かつ「由緒ある一族の繁栄と没落」を描いたクラシカルなミステリとしてこれは大成功ですね。
2段組のわりと厚めの一冊でしたが、時代ごとに区切られて描かれる出来事とストーリー展開のテンポの良さですいすい読めました。面白かった。