せかいのはてまでひろがるスカート

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「わたしのスカート/せかいのはてまでひろがるかな？」そう疑問を持った、スカートを履いた小さな女の子が、蜜蜂や蛙、梟や魚、それに月や太陽など、様々な相手に「あなたのスカートは/せかいのはてまでひろがるの？」と尋ねて回る、という筋の絵本。

蜜蜂なら細かい花びらが、蛙ならひるがえった蓮の葉が、梟なら鈴蘭型の鐘つき堂の屋根が、それぞれスカートに見立てられている構図がお洒落。赤を基調にした絵の線も、暖かさと緻密さを併せ持っていて心地良い。
また、絵の中に『不思議の国のアリス』『ハイジ』『オズの魔法使い』『長くつ下のピッピ』から『ムーラン』や『ハリー･ポッター』まで、元気な女の子が活躍する物語のモチーフを織り込んでいるのも眺めていて楽しい。

文に関しても、スカートについて問われたものたちが皆、「いいえ、だけど」と頭につけつつ、梟なら「いいえ、だけど/あかくそまったそらに/かねのおとはひびきわたるよ。」、虎なら「いいえ、だけど/ここでうたをうたったら/せかいじゅうにきこえるかもね。」などと、それぞれ返すのも洒落ている。その中でもあひるの答え、「いいえ、だけど/わたしがいくところまで　ひろがっていくはずよ。」は特に格好良い。

ラストで、女の子は自ら「せかいのはてまでひろがるスカート」を作り上げる。「わたしのスカート/せかいのはてまでひろがるかな？」という自問に対する答えは、とても主体的で、楽しそうで、鮮やかな形で描かれている。

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韓国の絵本作家、｢ミョン・スジョン｣のことは、図書館でタイトルに惹かれて、この作品を借りるまで知りませんでした。

でも、知ることができて良かった！！

おそらく、メッセージ性のあるものなんだろうなとは思ったのですが、中を開いて、その自由で独創的でカラフルで華やかなんだけれど、落ち着いたやさしさを感じさせる絵柄に意外性を感じ、何度も魅入ってしまいました。それと、これだけ赤をベースにしていて、くどい感じにならないのはすごい。

｢わたしのスカート
せかいのはてまでひろがるかな？｣

という疑問で始まる、ヘリンの世界を巡る旅は、

赤単色の外枠の世界の真ん中に、アルプスの少女ハイジ、ムーラン、不思議の国のアリス、赤毛のアン、モアナ、オズの魔法使い、長くつ下のピッピ、マファルダ、太陽の東　月の西、バリ公主、朴氏夫人伝、等々、女性のおとぎ話や民話をモチーフにしつつ、各国の動植物や建造物に歴史や文化なども自由に取り入れた、バラエティ豊かなスカートが美しく主張しており、彼女の疑問への答え方も様々で、明るく自由でポジティブに感じられたのが、ただ問題をそのまま訴えるより、胸にすっと入り込んでくるように思われました。

もちろん上記の問題というのは、スカートというその物についてだけの意味合いではなく、精神的なものも含まれるのは確かであって、作者のメッセージにもこう書かれています。

｢世界のすべての子どもたちが、平等に、自信をもって、自分のスカートを思いきり開けるように、夢を見られるようにという願いを込めて｣

こうした長い旅を経て、ヘリン自身のスカートはどうなったのかは、是非、ご自身の目で確かめてほしいです。また、各ページには、彼女がどこにいるのかを探すウォーリー的な楽しみもあり、そういったところが、また微笑ましい。

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ブラチスラバ絵本原画展で見かけて、やさしい朱色の描線がとてもいいなと魅了された。その後、邦訳版が出たのを知って購入。

「みつばちさん　みつばちさん、あなたのスカートは　せかいのはてまでひろがるの？」
「いいえ、だけど　いいにおいは　どこまでも　はれやかにひろがっていくよ。」
女の子がいろんな生きものに尋ねて、蜂やてんとうむし、虎やさかなたちが自分の居場所を表現する・・・という、シンプルな応答だけが繰り返される。花や葉っぱ、波の"スカート"の中には、世界各地の物語に登場する女の子がモチーフとして入れこんであって、国や民族を超えたひろがりも感じさせる。

かわいらしさと、物語を歩む少女たちのつよさ、生きものたちのこまやかさと、おおらかさ。そういったものが、この朱色の描線に込められている気がする。塗り部分の色使いも好み。とてもきれいで、楽しい一冊。