世界の歴史認識の変化に日本は追いついているか
2022/01/05 09:41
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投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史認識において齟齬をきたす代表的な言葉に「太平洋戦争」という呼称がある。いまだにテレビ、新聞、インターネットでも目にする。長い年月、耳にし、目にしてきた言葉だけに、日本国民に浸透し、誰もその言葉に疑問すら抱かない。しかし、日本国民であっても、この言葉が通用しない世代がある。それが「大東亜戦争」体験者たちである。日本は昭和16年(1941)12月8日から太平洋だけで戦争をしたのではないという認識を持つ世代。更に、教科書でさんざん「太平洋戦争」という言葉を教えられてきた世代が、「アジア・太平洋戦争」という言葉を使い始めた。そもそも、「太平洋戦争」という言葉は、昭和20年(1945)12月8日から、新聞各紙において用いられたのが始まり。ここに、日本を占領統治する国連(連合国軍)の隠れた意図が見え隠れする。
本書は、国連(連合国軍)の術中にはまり、いまだ覚醒できずにいる日本人に、分かりやすく、具体例をあげ、世界の歴史認識の変化を解いたもの。例えば、EU議会が旧ソ連(ロシア)を侵略国家として議決し、プーチン大統領が猛反発している様を伝える。日本人の関心である真珠湾攻撃が、アメリカでどのように評価されているかなど。全8章、260ページ余にわたって述べられる。
二度と、悲惨な戦争を繰り返さないために国際連盟が設けられた。それにも関わらず、なぜ、再びドイツは日本、イタリアとともに、主義主張を超えた国連(連合国軍)と干戈を交えたのか。更には、悪の枢軸と言われた日本、ドイツが国連(連合国軍)に大敗したにも関わらず、世界から戦争は無くならないのか。この事実から、本当の悪は滅んではいなかった事が証明される。本当の悪は誰なのか、何なのか。
本書では、リッツキドーニ文書、ヴェノナ文書、米国共産党調書という資料を基に、その悪が何かを見事にあぶりだした。持論として大東亜戦争(アジア・太平洋戦争)の発生から、経緯、結果までをも日本の好戦的な姿勢と結論付けている方には、定説を覆されたくはないと思う。しかし、今、世界が歴史認識においてどのように変化しているのか。その時流に対処したいと思われる方には必読の書。
人物評価や歴史認識は、利害得失の関係者が死滅しなければ真実は浮上してこない。これからさらに、深く掘り下げることで、また新たな新事実が発見されることだろう。「アジア・太平洋戦争」という言葉を生み出した世代が登場した現代、従来の歴史解釈では世界に通用しない事を如実に知るだろう。
知りませんでした。
2021/12/11 14:20
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投稿者:中村 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソ連のスパイが、米国に入りこんで、戦争終結に影響及ぼしているとは?
過去から未来に向けて
2022/03/16 12:15
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
虐殺から言論の自由の弾圧まで、今なお世界各地で続いていることを痛感します。過ちを繰り返さないためにも、これまでの歴史観を見直す局面なのかもしれません。
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現在、第二次世界大戦を含む近現代史は、公開された「ヴェノナ文書」などを元にして見直しが進んでおり、日本の歴史教育も根本から見直し、認識を新たにすべきときになっていること・・・・わかりやすく解説されている日本人の必読書です。
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この本に限らず、江崎先生の本は、日本人必読。
かの大戦を挟んで一体何があったのか、今何が起きているのか。
米国ですら歴史の見直しが行われようとしてるのに、全否定が当事者の我が国と、面倒臭い隣国ばかりって、おかしくないか。
江崎先生の本にしては、表面なぞった感じだが、初めてこの歴史観に触れる人向けなんだと思う。
露国の非道と謀略は、まさに今のウクライナにつながる。
次はうちだよ。
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『#日本人が知らない近現代史の虚妄』
ほぼ日書評 Day515
昨日アップの『戦争を始めるのは誰か)に続き、カテゴリとしては「歴史修正主義」系の一冊。
ただ、その主張するところは大きく異なる。本作の主張をひとことで言えば「インテリジェンスの重要性」だ。
もちろん、FDR(フランクリン・ルーズベルト)政権に入り込んだソ連スパイの暗躍や、その背後にいるスターリンによる陰湿な「日本虐め」の列挙はなされているが、それはむしろ本書のテーマを支える目的で取り上げられている。
本書における「インテリジェンス」の重要性に戻るが、これは無論「インテリ」等とカタカナ書きされる際の、ややネガティブなニュアンスを持つものではない。
ひとつには本来的な意味での「知性」、そしてもうひとつは「なんらかの意義を持つ情報」という意味合いだ(アメリカの中央情報局CIAの真ん中の "I" はまさにこの意味)。
FDR政権がコミュニストに食い物にされていること、米国の日本観にも様々(強い日本と弱い日本のいずれを希求するか等)あることを知りつつも、そのインテリジェンスを活用することができず、目先のFDR政権に感情論で反発し、戦争の泥沼に入り込んで行った戦前の軍部や指導者層。
一方で、然るべき国際法理論にといったインテリジェンスに基づき、すんでのところでGHQによる軍政(ひいては日本が独立国でなくなる事態)を食い止めた重光葵らの奮闘。
後者については本書で初めて得た知見だが、玉石混淆な情報溢れる現代だからこそ、真に意味のあるインテリジェンスを見極め、使いこなせるようになりたいという意を新たにさせられた。
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今まで読んできた本のおさらい的な要素が強かった。
ケロッグ・ブリアン条約なんか改めて勉強すると、東京裁判はいかに結論ありきのひどいものだったかわかる。だが、この東京裁判への見方が変わってきているのが事実なので、日本側もせめて足並みをそろえたいところ。実務レベルではやってるとは思うが。
ちょうどロシアがウクライナに侵略したタイミングで読んだため、戦後の東欧諸国におけるソ連の支配についての記載は胸に響いた。
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復習的な本だけど、最初のソ連に対する東欧の反応などは、今のロシアとウクライナの情勢に通じるものがあると思いました。俯瞰して物事を見れるようになれればいいなと改めて思いました。
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p211 アリゾナ記念館 いまや日本が一方的に戦争を仕掛けたという議論はなくなり、様々な背景があって戦争になったわけであり、日本を一方的に批判するような展示は変えるべきだというのがアメリカ国立公園局、歴史学者たち、アメリカ軍、そしてハワイ州政府の四者協議の総意であったのです
p220 アメリカ外交団を仕切ったアルジャー・ヒス(ベェノア文書の公開でソ連の工作員とわかった)
p222 ヤルタ密約はルーズベルトとスターリンの間で、アメリカ国務省を介さず、ハリマン大使が往復するのみの密室外交で結ばれました。その実態は、文案作成をソ連に任せ、事前協議もなく、一方的にソ連に有利な語句の挿入を許し、語句解釈に関する議論も一切行わないというものでした。アメリア側の完敗です。
このような文面をアメリカ連邦議会上院に送れば、なぜそこまでソ連に譲歩するのかという話になり、大変な議論となるとは必死でした
p234 日本政府はなぜもっと早く降伏しなかったのかと批判される場合が多いが、実際はソ連側が「無条件降伏しか認めない」とする強固な対日和平方針をアメリカ側に維持させ、日本が降伏を躊躇するように仕向けていた
p242 国際法を熟知した重光らの奮闘で、日本は直接統治を守ることができた
p246 モーゲンソー計画とは1944/9 イギリスのチャーチル首相に対してルーズベルト大統領と財務長官のヘンリーモーゲンソーが提案したプラン。この計画は極めて報復的で、厳しい占領政策でした。工業を解体して純農業国にする。経済復興は許さない、フランスを始めとしとする交戦したヨーロッパ諸国よりもドイツの生活水準を低く保つ、など懲罰的な意味が強い計画です。
p249 弱い日本派の政策が、敗戦後の日本におしつけられた
p254 頼りになる同盟国になれば近現代史の評価もかわってくる
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正直、期待していなかっただけに、収穫が有ったことは嬉しい。「虚妄」の語が持つ複雑性を知りたくて借りた。
内容的には今日の国際問題の原点ともいうべき示唆が有り、今後の国際問題を切り開いていくキーワード・・インテリジェンスを知ることが出来た。
歴史を学んだ大学二年まで、私は育った時代は【現代史】が欠けていた・・と言うか、近代史も今思うと欠陥が有ったように思われる。
今回特に面白かったのはWWⅡの敗戦処理前夜から朝鮮動乱にかけて。
アメリカの民主党・共和党の本質~20世紀の始まりからの対外処理~ウィルソン施政~ルーズヴェルトの正体~マッカーシィー上院議員問題とその後への影響~そして通じて蝕みを広げて行ったソ連スパイの所業
民主主義国家ランキング・・なんて今でこそ語られているが若いころ観てきたそれは霞が掛っていたように思える。
ジェンダーランキングは有名になったけれど、国家機密文書の膨大な存在と公文書公開制度が出来ていないわが国・・民主主義国家への歩みは初期レベルで凍っているような状況
全て真実と思って読まない、考えないようになった私でも大きくうなづける中身、しかも平易な語り口、よかった。
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ルーズヴェルトがソ連工作員とズブズブなのは知ってたけど、ヴェノナ文書に基づく詳細な話が知れて非常に興味深かった。ソ連(現ロシア)や共産主義がいかに恐ろしいものか再認識したし、これを教科書にして欲しいくらいだが、日本の教科書選定委員や日教組は極左集団やから無理か(笑)。
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近現代史において、いかに日本が当時の刷り込められた認識を未だに脱することが出来ていないかということを改めて骨身に染みた。
歴史における認識を新たにするのは、機密文書の公開を受け、やはり第一資料に当たることが大事である。
未だに日本は近現代史において自身で総括すらも出来ていないのではなかろうかと考えさせられるのは、当時の考えをしっかりと把握せず、最も重要な歴史問題においてもどこか他人行儀だからであろう。
目に見えなくても明らかに日本を侵蝕していることがある今日において、最低限でも近現代史を学ばないことには同じ轍を踏むことになろう。
本書は通説と見直しという体裁を取りつつ、あまりに知識不足な日本人に、近現代史における歴史をアップデートしてくれる一助となるものである。
それにしても今にしてウクライナ侵攻をしているロシアは、まさに当時のソ連の恐ろしさ、狡猾さを踏襲していることは間違いないと思わされる。
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近現代史において、ソ連が如何に暗躍し、世界を引っ掻き回してきたか理解でき目から鱗が落ちた思いがする。アメリカで公開されてるヴェノナ文書の存在も、そこに書かれている内容も公になっているにも拘らず日本では殆ど知られていないのではないか。
それにしても、ソ連指導者はレーニンの頃から、欧米よりも何枚も上手だったことに驚く。ソ連のスパイ工作が阻止されていたり、アメリカや日本国内、中国にソ連の謀略に反発する勢力に世の中を動かす力があったら、歴史は変わっていたのかもしれない。
アメリカ民主政権の「弱い日本」共和政権の「強い日本」考え方の相違がありアメリカも一枚岩でないこともよくわかった。
歴史の動いた節目節目に工作活動があることがわかり、大変わかりやすくスリリングで面白かった。結局第二次世界大戦後の世界が、如何にソ連の影響下に置かれ、蹂躙されてきたかだけでも冷静に見たら、ソ連が正義とは言えないし、正義たる戦勝国側にソ連がいた背景もよく知らないといけない。
今おきているウクライナ侵攻もロシアからすれば「開戦事由」を具備した「自衛戦争」ということだろう。ロシアがソ連の流れを組んでいることを思えば、今回の戦争も一筋縄ではいかないのは間違いない。