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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
数十年にも及ぶ母と娘の呪縛の連鎖を、この物語は多層的に表現する。娘は、自分の人生に対して支配的に振る舞う母の呪縛に苦しむ。しかし、自分が母になると、今度は自分の娘世代に同じような呪縛を強いる。母と娘の周囲に現れる男たちは、救いになるどころか、呪縛に火をくべる。抗うことを諦め、自分の人生に妥協してしまう。途轍もないものを読まされている気がしたのだ。それを乗り越えるには、外科手術に似た一気にメスを振るうことが必要なのだ。自分の人生を誰かのせいにせず、生きるために、呪縛の連鎖を断つために、母を捨てたのだろう。
「八月の母」というタイトルに思いを馳せて
2022/12/12 17:15
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
瀬戸内の穏やかな景色・気候、みかんといった長閑なイメージのある愛媛県を舞台に、実際に起きた凄惨な事件をベースにした物語。断ち切れない鎖のような苦々しさと、子どもたちのイノセントさの対比が印象的でした。読み終えて改めて「八月の母」というタイトルに意味に思いを馳せました。
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
実話から着想を得た出口の見えない負のスパイラル。恵まれない環境で必死にもがく母娘の歪な絆は、束縛と共依存になって纏わり付き離れない。夢見る事すら諦め、楽な方へ流れていく集団心理を救いようがないほど残酷に描いた作品
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
女同士だからこそのライバル関係、葛藤や争い……醜くもあるけど、血のつながりが余計に……。読んでいて苦しくなりました。母子関係って難しい……
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読み進めるごとに救われない展開。
でも、読むのをやめられないという。
どうしたらよかったんだろう。
どうしたら普通に生きられたんだろう。
読み終えた今も言葉にならない。
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イヤミスではないのに、読み進めるのが辛い本だった。
こうはなりたくないと思いながらも、結局母と同じになってしまう繰り返し。
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大きなひっかかりは覚えたけれど、ラストに込められた希望以外は読んでいて楽しい話では全くありませんでした。
でも、小説としては完成度が高いので星5をつけました。
以下完全にネタバレで書いていますので、これから読まれる方はお気をつけください。
越智エリカは越智美智子の娘として、愛媛県に生まれました。美智子は三人の男性と一緒になった末、飲み屋を経営してエリカと二人で暮らします。
エリカもまた、複数の男性の子どもを三人産み、一人で育てようとしますが失敗します。
エリカは一番下の陽向のみを可愛がりますが、上の二人の子どもと子どもたちの遊び友達のたまり場に自分の住んでいた団地を提供してそれを生きがいにします。
そこで毎日のように起きた乱痴気騒ぎの末に起きた凄惨な事件。
エリカを「ママ」と慕っていた17歳の紘子がリンチに遭い殺されます。
紘子は一人だけいつも年少の陽向を少年たちの暴力からかばっていた子でした。
団地にたまっていた娘の一人が言った「不気味さの正体。あの人たちの共通点って、自分たちがガキのまま母親になったことだと思うよ」という言葉が的を得ているのではないかと思いました。
紘子は陽向に言いました。
「人生は誰かのためにあるわけではない。あなたの人生はあなただけのもの」。
陽向は27歳の時、愛媛を出て東京で結婚し母親になっています。
そして、出所してきた陽向に縋ろうとする母のエリカに言い放ちます。
「私は螺旋階段から抜けるよ。あの家族のスパイラルを私が断ち切る」。
なんて痛ましい話だろうかと思いましたが、繋がりを断つことができた陽向とエリカには希望が見える気がしました。
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不穏な恐怖の中で祈るように夢中で読了。
感情の波に飲まれて、息も絶え絶え言葉も出ず。
感想を吐き出すには至れない時間がしばらく続く。
元となった実際の事件を調べては、胸中の渦がより一層深まり再び言葉を失う。
「負の連鎖」という鎖に絡まれた、蟻地獄。
逃れたい一心で、もがけばもがくほど堕ちていく。
生まれながらにして悪の人間なんていないと思うけれど、育った環境から受ける影響は、そう簡単に逃れられるものではない。
蟻地獄の砂の斜面で踏ん張るのは至難の業だ。
せめて頼れる太枝でもあれば。
差し出せるものがあれば。
どこにも繋がりを見いだせない狭い海ではなくて、
どこか遠い場所へと続いている海が目の前に広がっていたのなら。
そう願わずにはいられない。
どんなに辛い状況下に置かれて育とうが、許されないものは許されない。
ただ、こんなふうに、丁寧に一人の人間に積み重なったものの一つ一つを、剥ぐようにめくっていくと、凄惨なニュースの犯人が、本当は可哀想な被害者のような顔をしだして、責める言葉を失ってしまう。
もし自分に全く同じようなことが降りかかってきた人生だったら、自分はそうならないと言い切れるのか。
わからない。それが怖い。
同じ人間であるということが。
どのくらいの可能性があるのだろうということが。
それでも、自分の人生を何かのせいにしたりせずに、自分で選んで、掴み取って、突き進んでいける強さを持っていたい。
様々な観点から深く考え、見えてきた視点を、同じ人間として大切にしたい。
作品の最後に香る希望が、きっとその力になってくれる。そう信じたい。
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自分はあの人のようになるまいとする強すぎる想いが自分に対する強烈な呪いになる。とても恐ろしくて、途中で何度もずっしりと心に重りが乗っかってるような感覚になるくらい、外形的にはとても残酷なストーリーですが、だからこそ早見さんが伝えたい「救い」の部分が強烈に伝わってくる作品でした。
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予想した方向に落ちてゆくスパイラルな悲劇、狂気。何が正解なのか、どうすれば救えるのか。
「人生は誰かのためにあるわけやない。生きることを絶対に誰かのせいにせんといて。あなたの人生はあなただけのものやから。それだけは誰にも、ママにも触れさせんといて」
きっとこれは普段のことでも言えることなんだ。
195冊目読了。
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読む前にあらすじも早見さんからのメッセージも何も情報なしで読み始めたのだけど、これはもう辛くて苦しくて夜眠れなくなってしまうほど。
母性の強要、父性の不在、地方格差、女の自立、貧困、いろんな問題が積み重なってて、でも結局刃は自分に向かっていて。
これはまさに壮大なる自傷小説。
私の中で海は遠い世界につながる可能性に溢れた場所で。その海を「せまく閉じられている」と思う場所があるということも驚き。
実際の事件をモチーフにしてそこから早見さんが描き出そうとしたもの。そこにあるあまりにも浅はかで短絡的で享楽的で児戯じみた共存関係に読後しばし茫然。
なぜ、そんな世界から逃げ出さないのか。
何度もチャンスはあったのに。でもその度に縋り付きしがみつき縛り付けようとしたのは、いつも母親。
何人もの母親が描かれているけれど、どの母親も子どもに依存し共存を強いる。
だれも自分の足で立とうとしない。そしてそこに父親はいない。
ここにいるのはすべて愚かな雄。
でも、と思う。
でも、彼ら、彼女らが、もし「母親」的なものを求めていなかったとしたら、と。
そして母親たちに子どもへの「愛情(のようなもの)」がなかったとしたら。
この悲劇的な結末はなかっただろう。
親を、子どもを簡単に見捨てていたら、見捨てることができていたら、別の世界へ一歩踏み出すことができただろうに。と。
愛情とはなんだろう。一元的ではない愛情の形を、その美しくも尊くもない歪んだ愛情を、これでもかこれでもかと突きつけてくる。
お前はどうだ、と刃が光る。
『イノセント・デイズ』を読んだとき心のどこかにしこりのようなものが残っていた。見たくないしこりが『八月の母』でまた増えた。いつか消えるのだろうか、消せるのだろうか、と問い続けることになるのだろう、このしこりを抱えて。
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あの人みたいにはなりたくない
早くこの町を出たい
と否定し、憎み
もがけばもがくほど
強くなってしまう母と娘の関係。
読み進めるごとにどんどん
血縁というものの濃さに
胸が苦しくなってくる。
一度底辺に落ちてしまったら
何かに頼り、甘え、言い訳し
二度と抜け出せなくなってしまう
人の弱さを見せつけられる。
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2022/04/10リクエスト 21
愛媛県伊予市で実際に起こった話だと知った。
越智エリカがキーパーソンとなり、エリカの借りている市営住宅が事件現場になった。
エリカは幼かった頃から閉塞感のある街に馴染めず、この街を必ず出ていきたい、と強く思っていた。ところがチャンスが来るたび、実母の美智子が邪魔をする。すがりついてくる。
そんな中、エリカは娘を授かる。
自分が一人っ子であり、母親からの濃密な関係に耐えられず、反面教師として、たくさん人の集まる家を作りたい、そう願い、実際に常にドアを開けっ放しの市営住宅を持つ。自分の子と、よその子を分け隔てなく愛情を注ぐ、それは、実の娘にとっては辛いことなのだろう。母親が実子である自分を差置き、よその子である紘子と、実子の一番下の子である陽向を可愛がる。
みんなを同じラインで可愛く思うわけではなく、同じライン上に立たせた上で、順をつける。
まさかの実子(上の二人の子、姉の愛華と弟の麗央)が下の方にいる…
それにより、愛華は紘子に憎しみを募らせていき、それが集団でのリンチになり、事件は起きる。
紘子は、いくら陽向に慕われていたとはいえ、なぜこの団地を出ていかなかったのか。
エリカは急に紘子に対して、冷たくなったのか。
(ネットで事件を読んだところ、薬物中毒になり、と書かれていて、それなら納得)
現在の主人公である、陽向の夫と5歳の息子が妙に物分りが良すぎるのは、腑に落ちないが、ここは重要な場面ではないからなのか…
ラストで愛媛に戻った陽向。
私は螺旋階段からぬける。あの家族のスパイラルを私が断ち切る。
もう何もお母さんのせいにはしない。
私はこれからも言い訳せず私の人生を生きる。お母さんも自分の人生と精一杯向き合って下さい。
たくさんの、母と子、父と子が出てくる。読んでいて、辛くなる。
なのに、惹かれてしまい、2度読んだ。
でも、もう読みたくない。
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虐待は連鎖すると言うけれども、親に恵まれなくとも人生の中で一人でも信じられる大人が認めてくれることでその後の人生が変わると言われている。
代々続く女の子の苦しくて悲しくてあがいてもあがいても逃れられない負の連鎖をどこで断ち切れるのか。実際の事件をモチーフにしたと言うことでより一層心に重くのしかかりしばらく立ち直れなかった。
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後半、エンディングに向かって引きずり込まれ涙しながら一気に読み終えた。
イノセント·デイズを超える作品を書く~~と語った作家さん。
間違いなく、超えていました。