秤のごとき男の伝記
2003/12/08 21:51
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投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
実在が確認できている、中国最古の王朝、商(殷)。この商王朝を開いた湯(とう)王を補佐し、その絶妙の政治バランスから阿衡(あこう:秤のような人の意)と尊称された男、伊尹(いいん)の数奇な生涯と、王朝の交代という革命・激動の時代の政治状況、そこに生きた人々を、史料をもとに描いた歴史小説です。
作者の小説の例のもれず、本作にも普段は使わないどころか見たことすらない漢字が多数使われていますが、すぐに慣れて、それほど気にならずに読んでいくことができます。
伊尹の人物像はもちろんのこと、対する側、暴君で有名な夏(か:王朝名)の桀(けつ)王が、ただの悪逆非道なだけの男としてだけではなく、戦略眼や統率力など、評価するべきところは評価して書かれているのに好感が持てました。
それにしても、湯王が滅ぼした夏王朝の最後の王である桀と、湯王が開いた商王朝の最後の王の紂(ちゅう)、虐政暴君の代表として二人並んで今に名が伝わるというのも、皮肉というか因果応報というか、歴史のおもしろさですね。
すばらしいイマジネーション!
2001/10/10 15:17
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投稿者:TGW - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台になるのは歴史学者の中でもまだ実在の有無が論議される夏王朝の末期。そんな伝説上の人々の生活を、昨日見てきたように書く、そのイマジネーションがすばらしい。『重子』以来春秋期の特定人物に関する長編を手がけるようになった、宮城谷氏の原点とも言える作品だ。
伝説に近い伊尹の話
2023/06/24 10:20
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投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
(上下巻)
夏王朝は伝説の域を出ないとも言いますが、現在は発掘調査が進み、その時代の遺跡らしきものが現れ始めていると息きます。
その夏王朝時代に活躍した伊尹を幻想的に描いている部分もありますが、興味深く読めました。
奇跡の孤児の懸命な姿に心打たれます。
2015/12/17 19:54
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
商の湯王を輔け、夏王朝から商王朝への革命を成功にみちびいた稀代の名宰相伊尹の生涯。大洪水にみまわれ桑の大木に一命をすくわれた奇蹟の孤児・摯。料理人となり権力者に翻弄されながらも懸命に生きる姿が描かれています。
宮城谷さんはとても漢字を大切にしてらると思う。普段使わない熟語が多くて辞書引きながら読みましたが、とても勉強になります。
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古代中国、商の名宰相「伊尹」を書いた作品なり。
湯王を輔け商王朝の建国の一翼を担った人物で古代中国の名臣の一人といえますなり。
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上下巻。中国最古の王朝・夏が滅び、殷へと変わる時代。殷の湯王を補佐した名宰相・伊尹の物語。阿衡、という言葉で知っている方も多いかもしれません。天下の民が彼の政治によって公平を得る様を、是非。
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宮城谷さんの作品で一番最初に読んだのがコレ。夏王朝から商王朝への革命を成功にみちびいた稀代の名宰相伊尹(いいん)の生涯なんですが、成長モノあり、冒険あり、友情あり、恋愛あり、オカルトあり、陰謀あり…と、小説としての読み応え満点。冒頭の洪水のシーンの描写も恐ろしくも美しくて、ハートをガッチリ鷲掴みにされました。主人公・伊尹の友人(?)となる“顎どの(名前は語られない)”は、『孟嘗君』『晏子』にも通じる“快男児”のルーツ的存在だと思う。
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商(殷)の開祖、湯の名補佐である伊尹が主人公。なんといっても話の舞台は、もはや伝説上にしか見られないような古代だというのが驚きだ。にもかかわらずあたかもその目でその時代を見てきたかのように活写する宮城谷氏の力量には驚嘆する。甲骨文字から当時の習慣を読み取るなど、単なる史料も彼の手にかかれば、その価値が何倍にも増幅されてしまうようだ。
現在、中国の歴史モノを書かせれば、この人が日本一だろう。
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古代中国の雰囲気、こんなんだったんだろうな、と思わせられる。おおらかな時代といった空気が漂う。伊尹がその考え方と行動によってのぼっていくさまが楽しい。彼が若いころに草庵にこもって生活するシーンがとても爽やかに印象に残ってる、そこがすごく好きなんだ。でも、エピソードはやはり、仕える主君への愛情を感じるものが心に残る。
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桑の木に助けられて未曾有の大洪水を生き延びた嬰児の生涯を描く。かつては伝説だと思われていた古代中国夏王朝の末期が舞台。感想は下巻にまとめる。
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宮城谷 昌光さんの作品の中で上位に好きな作品です。
上巻では子供の頃の伊尹が主で
生まれてまもなく聖なる桑の木に隠されたまま他の国へ流され
神童“日”の生まれ変わりと呼ばれながら
料理人の養父母に育てられる。
ひょんなことから 王宮へ入ることになり
王子に疎まれ 何度も殺されそうになった 子供時代。
大きくなり度重なる不運を乗り越えていきます。
歴史の中でも一番古い時代?
文字もまだ出来ていない位の時代です。
最初は中国独自の考え方や 登場人物の多さ
名前 国名など少し抵抗を感じるかもしれませんが
比較的に読みやすく 伊尹の考えや気持ちが
ぐいぐい引っ張ってくれるように思います。
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商王朝の名宰相伊尹の生涯。宮城谷さんのは主役が脇に食われることも多いけど、これはそうでもなかったので一安心。
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下巻のレビューを先に書いてしもうた…。
生きることにあまり面白さを見出せてない、覇気のなさそうな主人公に好感を抱くかまたは反発するかは気分次第。
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10年以上前に読んだことがあったけど、また読みたくなって再読。
夏王朝を妥当し、商(殷)王朝を樹立した功臣、伊尹のお話。
ようやく実在が明らかになってきた夏王朝を舞台に据えた日本の小説は、おそらく本書が最初じゃあるまいか。
史料も少なかったろうに、よくぞここまで物語を構築できたなあ、と脱帽。
史実なんぞわかりっこないのだから、あくまで読み物として楽しむべきなのだけど、はるかな古代の生活観に触れた気になれるという点で、貴重な本なんじゃないかなあと思う。
あらすじは割愛するけど、語られる素朴な生活観・倫理観が非常に力強い。
「政治とはどうあるべきか」的な為政者の観点だけじゃないところから描かれている点が、よくある歴史小説とはちょっと違う点。
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宮城谷はすべて読んでいるが、最初に読んだこの小説のインパクトをこえるものはなかった。伝説の時代の殷を書いてくれたことだけでも感激なのに話の進め方も素晴らしい。日本の中国歴史の伝道者。