統計調査量が半端なく多い内容です。
2022/12/03 13:05
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
人が政治を考えるとき、どう荒唐無稽な言説に振り回されるのか。当書は著者ご自身がアンケートを行い、その結果を統計学を駆使して、クールに分析した1冊です。
とにかく、文中に登場する統計調査の量が半端なく多いです。よくぞここまで突き詰めたものだと感心しました。そして、末尾で著者ご自身の結論を説いています。
個人的には、中身の体裁が中公新書らしくなく、別レーベルの新書に近いような感じがしました。
よく理解できてなかったことが分かった
2023/03/13 08:55
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投稿者:フライマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近よく聞く言葉、陰謀論って何とおもってましたが、この本が提供してくれえるy科学的、論理的に説明と、実例の解説でとてもよく理解でき納得できました。
陰謀論は蜜の味、思想的にはっきりする人がはまりやすいのか
2023/02/09 20:29
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は大学生の時にいわゆるネトウヨであったと告白する。それゆえか、陰謀論にはまりやすい人が感覚的にわかるのだろうか。陰謀論と言えば、アメリカのトランプ大統領のプロパガンダやそれを熱狂的に支持する人たちを思い浮かべてしまうが、日本でも決して無縁でないことを教えてくれる。本書では、陰謀論の定義や正規の手続きを踏んだ調査を行い、統計分析を駆使しているため、論拠が明確であり、論文構成の勉強にもなる。目次を見てみると、
まえがき
第1章 「陰謀論」の定義 -検証可能性の視点から
第2章 陰謀論とソーシャルメディア
第3章 「保守」の陰謀論-「普通の日本人」というレトリック
第4章 「リベラル」の陰謀論-政治的少数派がもたらす誤認識
第5章 「政治に詳しい人」と陰謀論-「政治をよく知ること」は防波堤となるか?
終章 民主主義は「陰謀論」に耐えられるか?
あとがき となる。
陰謀論とフェイクニュースの違いは何かというについての考え方や陰謀論にはまる人は多いことなど、参考になることは多い。詐欺に引っかかりやすいとか、私は引っかからないと思い込んでいる人が多いとかによく似ていると感じる。陰謀論に陥りやすいと言っても、保守・右派とリベラル・左派との違いを描き出し、政治に詳しくなれば大丈夫かと言えばそうでもないところや現在の社会はどうかという議論を進める。あくまでも、日本に限定して、現時点から読み取れることでの展開であるが。また、SNSでは陰謀論が飛び交っているイメージがあり、多くのメディアと比較しつつ分析している。ごく少数が陰謀論にはまり込んでいるうちは社会的に問題ではないだろうが(個々人では問題があるかもしれないが)、地方議員、国会議員等が本格的に陰謀論を流しだすと危険であることは間違いない。本書でも指摘しているように、地方議員が公費を使って、根拠がないままワクチンを殺人兵器としたり、国会議員の有力者が、日本学術会議が中国の軍事研究に協力していると発信したりしておれば危機感を持つのは当然であろう。
フェイクニュースに引っかかる人は多いが、陰謀論のように確認しようがいないことを広められると大変なことになると思う。特に差別を差別と思わない状況になると、社会が荒れ、周辺諸国を誹謗し、戦争への道というのも絶対ないと言えなくなる。マスコミ等も、根拠を持って、より正しい情報を流し、多くの信頼を勝ち取ってほしいと思う人は多いと思う。一読してほしい本である。
陰謀論にふりまわされないために
2022/10/31 12:09
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投稿者:はまのなまけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
統計的手法で、「どんな人」が陰謀論を信じているのか、陰謀論を信じさせる要因にはどんなものがあるか、を明らかにしている。
各章の小括だけを、ひろい読みしてもどんな話かは理解できる。
ただ快刀乱麻、すぱっと陰謀論のことがわかるという本ではない。
有益なのは、陰謀論に対して、世でふるまわれている処方箋が、あまり有効ではないかもしれないということが明らかにされていることだろう。
陰謀論につながるコンテクストを踏まえてギャグにしている久米田康治のマンガを読むくらいのほうが、陰謀論のワクチンとしては有効なのかもしれない。
そこそこ、の難しさ
2022/10/30 14:43
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投稿者:じゅんべぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
・政治に関心がある人ほど陰謀論に惹かれやすい。
・誰でも陰謀論に取り込まれる可能性がある。
・正しさを求めすぎない。
・そんな意見もあるのか、と距離を取る
など、限られた題材の中から、現代人のメンタルを守る金言がたくさん。(と、個人的には思います)
最終章から読んでも納得感があるかも。
何より、学部生時代に「ネトウヨ」だったという、著者の変化を追うドキュメンタリーも見てみたいと思いました。ここまで、どんな経過を経て、この文章を書けるようになったのか、もすごく参考になると思います。
※本書のテーマではないですが。
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陰謀論の本というよりは、陰謀論に関する統計調査の解説本という風味で、陰謀論の実体を分析するのには役立っても、陰謀論全体の理論を考察するのには直接役立つことはないかなと思う。
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社会科学の統計的手法を使って定量的に陰謀論の実態を分析した本。因子分析によって導き出された因子を「陰謀論的信念」と仮定し、サーベイ実験(対照実験)によって原因を探る。
そもそも陰謀論はフェイクニュースと異なり反証可能性がない主張であり、陰謀論的信念を持つ層は党派を超えて多く存在する。左右ともに選択的メカニズムにより信念に合う現実観を持つのだ。
SNSが陰謀論の巣窟とされることが多いが、統計的には民放報道とヤフコメ、まとめサイト利用者に陰謀論者が多い。逆にツイッターやNHK、新聞利用者では陰謀論者が少ない。ツイッターを多く利用する若年層では日常的会話が多く、陰謀論の入る余地は少ない。これは、他で指摘されているようにツイッターの中で陰謀論者がエコチェンバーに陥っているからではないかと思った。大多数には影響を与えていないのだろう。また、年齢でいうと高齢者の方がSNSとの関わりで陰謀論に陥りやすい。ではなぜツイッター警鐘論があるからと言うと、他人を見下す第三者効果があると筆者は語る。確かに。実際には自分も他人と変わらない人間のはずなのに。
次に陰謀論に陥りやすい層についての研究。保守層ではネトウヨをリスト実験により本音を引き出して分析する。「普通」を自認する層(全体の半分!)は結局個人の意見を普通だと思い、全体を客観視できていないことが分かった。これは政治的対話の欠如の帰結だそうだ。
またリベラル側では、政権を取れない万年野党としての鬱屈した感情が、正当な政府批判とトンデモ政府批判の混同、さらには選挙制度自体(18歳選挙権等)の感情的信頼の衰退につながっているという。
最後に、実は政治に詳しくなるという行為自体が陰謀論に近づいているということを示す。質問中の属性を変えて潜在意識を探るヴィネット実験では、政治的関心が高く政治的知識を持つ人が奇説に反応してしまうことが分かった。
筆者はそれに対してバランス感覚や政治への一定距離(無関心ではない)、マスメディアへの信頼をあげる。
今作はまさに時流に乗った良作だが、統計的な説明が多いため、数字の分かる層には刺さっても大多数には刺さらなそうである。また統計的説明が主眼であるため、より踏み込んだ議論は少なかった。その考察は読者にゆだねられているのだろう。
よくNHKが左右から共に攻撃されている姿をネットで見かけるが、それが逆説的にNHKが中立的なことの証明になっていることに代表されるように、自分の思想を客観的に把握できない人、現実を受け入れられない人が極端な主張に取り込まれ、バランス感覚を持った人が攻撃される現象が増えると思う。それを防ぐためには政治的対話が必要であり、本当の有権者教育とは「政治に詳しくなる」啓蒙教育ではなく相互の政治交流を可能にする意識変革ではないだろうか。その前提となることはリアルで太い関係性を築いていることに加え各々が寛容と忍耐の意識を持っていることだろうが、個人主義の強い現代でそういったある種快適でない共同体的関係が受け入れられるのかは疑わしいところである。
また世間はお前が思っているほどには馬鹿ではないという意識も大���だろう。そういった秘密が簡単に隠匿できるのであればスキャンダルなど起こるはずもない。
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「誰が、なぜ陰謀論を信じるのか」という問いについて、サーベイ実験というデータ分析の手法を通じて様々な観点から明らかにし、日本社会における陰謀論受容の実態とメカニズムを解説。
陰謀論が跋扈する現状を憂慮する1人として、本書の内容はとても有益で、参考になった。
日本人の2~3割もが陰謀論的思考を有していること、ツイッターの利用頻度の高さはむしろ陰謀論的思考の低さと関連していること、自分自身を「普通」だと考えている人々ほどいわゆるネット右翼がしばしば主張する陰謀論をより強く受容しやすい傾向にあること、左派・リベラル層であっても反政府・反自民党的な陰謀論は受容しがちな傾向にあること、政治的洗練性(政治的関心・政治的知識)の程度が高いほうがむしろ陰謀論を受容しやすい傾向にあることなど、本書で紹介されるサーベイ実験の分析結果は、直感的イメージとは異なるものも多く、非常に興味深かった。
誰もが陰謀論にはまってしまう可能性があるというのが本書の教訓だと思う。ただ、著者は政治的関心や政治的知識もほどほどが一番と結論づけているが、そこには同意できない。政治的関心や政治的知識の程度を高めること自体は否定されるべきことではなく、関心を持ち知識を付けた上で、自分の政治的志向などに自覚的になり、対立する立場の考えにも思いを巡らし、複眼的・相対的に物事を考えるようにすることこそ、陰謀論に陥らないために必要なのではないかと思う。
社会的望ましさバイアス(社会的期待迎合バイアス)を防ぐためのリスト実験やヴィネット実験という手法を知ることができたということなど、最先端の政治科学の研究の紹介という点でも本書は面白かった。
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現代日本における陰謀論の受容について、ちゃんと統計的な研究に基づきつつ自分みたいなアカデミアに所属しない人にも分かりやすく教えてもらえるのでよかった。
Twitterと陰謀論の親和性が低いとか、政治に詳しい人が陰謀論に接近しやすいとか、意外な結論になる論点もある。
日本における保守派が陰謀論に惹かれがちなことは書かれている通りだと思うけど、世界的にみても保守派がわりとチープな陰謀論に接続しがちに見えるのはなんでだろ。保守派が「普通」を自認しがちなのはどこの国でも同じなのかもしれない、そんな想像をした。
リベラル派が陥る構造については左派市民運動にコミットしていた自分の認識と一致する。だから勝たなきゃいけない、きちんと勝ちに行かなきゃいけない、と思うんだけどね。
是非他にも色々と一般書を書いていただきたいなー。
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Twitterは、リア充で主として身近な人とのコミュニケーションツールとして使ってる限り陰謀論が入り込む余地は少ない。反面、中途半端に政治的な関心をもってTwitterで情報を集めだすと、自ら陰謀論を吸い寄せることになる。自分は陰謀論には騙されないけど、他の人たちは信じちゃうから危ないというメンタリティも危険である。特に中年以降の意識高い系リベラルは、ここ数年選挙に負け続けている疎外感から、政府陰謀論に引き寄せられ易くなっているという自覚を持つ必要がある。雑なまとめ方をすると以上のとおりでしょうか。
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民主主義を蝕む陰謀論。誰が信じ、なぜ政治的影響力を持つのか。実証分析から、陰謀論受容のメカニズムを解説する。
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「自分は正しいことを知っている。だから周りは間違っている」。
正しさに固執する怖さがよくわかる本です。
自分は関係ないと思わずに読んでおいた方が良い本です。
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陰謀論の調査である。陰謀論についてあれこれ説明するのではなく、主にインターネットを利用した調査の結果から陰謀論を支持する人を説明している。
内容よりも、webを用いた調査とその基本的な手続きを説明しているので、学部学生の卒論での分析に非常に参考になるであろう。
あとがきが個人的な状況を丁寧に書いてあり、本文より面白い。
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新書大賞でも高評価だったので、積読状態だったものを読んだ。
結論から言うと、どういった人が「陰謀論」を受容(信じるか)するかを、科学的な社会調査の手法を使って分析した本で、「陰謀論」その物を知りたい人にとってはは不満を覚えるかもしれない。
かく言う私も、世間にはどう言う中身の「陰謀論」があって、その「陰謀論」が出来た目的やら広まった過程等が分析されていると思い読み始めたので、少々肩透かしを食らった。
「陰謀論」は単なる社会調査の素材で、社会調査の手法に興味がある人にとっては面白いと思うかもしれない。「陰謀論」の中身や内容に興味のある人にはお勧めできないかな。
もっともこの調査の分析結果は少々以外であるのは面白かったが・・
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タイトルを見ると陰謀論そのものの解説にも思えるが、主に語られているのはどのような層に陰謀論が受容されているのかを統計的に調査したもの。
取り上げる陰謀論や調査の切り口は面白かったし、その分析手法についても学びは多くあった。
SNSの利用と陰謀論の受容の関係の意外性は興味深いものだったように思う。
一方で、文中に登場する調査の母数がクラウドソーシングサイトでの1500〜2000件程度と、今のSNSや社会の状況を抽出するのに適当な量だったかという点にはあまり納得感はないかもしれない。
陰謀論そのものを知りたい場合は、「あなたを陰謀論者にする言葉(雨宮純)」などを手に取るとよさそう。