内海の漁師
著者 アーシュラ・K・ル・グィン(著) , 小尾芙佐(訳) , 佐藤高子(訳)
アナレスのシェヴェックにより開発されたアンシブルは、人類に計り知れぬ恩恵を与えた。その唯一の欠点は、瞬間移動が可能なのが非物体に限られることである。もし、物体にも瞬間移動...
内海の漁師
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商品説明
アナレスのシェヴェックにより開発されたアンシブルは、人類に計り知れぬ恩恵を与えた。その唯一の欠点は、瞬間移動が可能なのが非物体に限られることである。もし、物体にも瞬間移動が可能になったとしたら、人類は宇宙を思いのままにできる・・・・・・画期的なチャーテン理論をめぐる表題作「内海の漁師」、ユーモアあふれる「ゴルゴン人との第一接近遭遇」、寓話的色彩の「物事を変えた石」など、全8篇を収録する傑作短篇集。
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ひさびさにル・グィンのSF
2002/02/06 06:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
「SF界に女王が帰ってきた!」とこの本の帯にはあります。まあこれは売り文句なのかもしれませんが、しかし書店でこの本を見つけた時には、——何の予備知識もなかったこともあって—— まさしくそのように思ったものです。
この本は、ル・グィンが90年代に発表したものを中心に、8篇のSF短篇を収めた短篇集です。寓話的な物語やユーモラスな落とし噺——そして、なつかしい〈ハイニッシュ・ユニバース〉に属する中短篇が3篇。この3篇は、どれも超光速飛行を可能にするチャーテン理論を巡って、認識の問題や、タイムトラベルの問題を考察したメタ・フィクション。いずれも、クラクラと眩暈がするような、あるいはソワソワと不安になってしまうような、不思議な読後感を残す作品です。
ル・グィンのSFは本当にひさびさです。なんとなくもうSFから遠ざかっていたと思い込んでいた人も多いのではないでしょうか。しかし本書の解説によると、90年代に入ってから、〈ハイニッシュ・ユニバース〉のシリーズのものを中心に、旺盛に作品を発表しているとのこと。SF短篇集もすでにもう1冊あるようで、今後の紹介が楽しみです。
余談ですが、「内海の漁師」(ないかいのすなどり)というこの題名は、わたしたち日本人にはなじみの深い、ある漁師の物語から取られています。それは必然とも云ってよい理由によるものなのですが、ちょっと意外で、ちょっとうれしく思いました。