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2024年9月に希少がんのグリオーマで亡くなった佐々涼子さんのエッセイ集。
人の死や、生きていくということを色々な人を取材し作品にしてきた作者が、あとがきで、自分の人生が間も無く終わることを静かに語った上での以下の言葉が印象的だった。
「いつか私にも、希望の本当の意味がわかる日が来るだろうか。誰かが私を導き、夜明けを照らしてくれるだろうか。もし、それがあるとするなら、『長生きして幸せ』、『短いから不幸せ』、と言った安易な考え方をやめて、寿命の長短を超えた『何か』であってほしい。そう願っている。そして遺された人たちには、その限りある幸せを思う存分、かみしめてほしいのだ。」
ちょうど今観ている韓流ドラマでは、「人生は公平ではない。一生デコボコの人もいるし、必死で走った先に崖が待つ人もいる」という台詞があり、ずっと頭に残っていた。続きを観ていくと、その台詞を言った主人公が、人生を必死に走って崖から落ちた経験を持つ本人だったのだけれど、最後はヒロインに出会って幸せを取り戻すという話だった。
時に崖から落ちても、きっと誰かが導いてくれて夜明けがやってくる、そんな希望を持ちつづけたい。
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2023/11/26リクエスト 12
エンジェルフライトがとても良かったので、それ以来、佐々さんの著書を読んでいる。
今作は
幼い頃に来日し、日本語も母語も年齢相応の言語力に達していない「ダブルリミテッド」
がとても心に残った。
親とも学校でも話せない。
そんなことが、起こるのか…
生と死の見つめ方が、一歩引いて俯瞰でみつめる書き方のため、冷静に読めて好きだった。
まだまだこれからも読みたいと、なんの疑いもなく追いかけるつもりでいた、これからも追いかけたいので、書き続けてほしい。
頑張ってほしい、という言い方は適切ではないかもしれない。
医者の見立てを裏切ってほしいです。
それを心から祈ってます。
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何かで見かけて、これは読まなきゃならないやつ…という気が強く強くして、迷わず買った。その通りだった。
エッセイ部分は、そうだよねーと思ったり、ちょっとフフッと笑ってしまったりしながら読んだ。生について。死について。人生に起きる善いこと悪いことについて。大事なことがたくさん詰まっている。
それにしても、なんと言ってもタイトルがいい。
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著者の作品はすべて読んでいるが、今回はエッセイということであとがきを先に読んでしまった。
驚きで本編を読むのに暫く時間を置いたが、あとがきのせいかどのエッセイも沁々してしまった。
手元に置いておき、これからも屡々読み返すことだろう。
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「紙つなげ!」や「ボーダー」など、印象深くわたしが大好きなノンフィクション作品をたくさん世に問うてくださった佐々涼子さんの過去に発表された文章と近況が書かれた一冊。
日経新聞夕刊の連載「プロムナード」と季刊誌「kotoba」に連載された「ダブルリミテッド」は抜けがあるものの読むようにしていたので、半分ぐらいは読んだことのある内容だったが、他の文章からの情報をあわせてみると、病気で書く仕事が中断した間の状況や気持ちなども答え合わせのようにわかり、そしてこの秋に書かれたあとがきを読み佐々さんの現在を思い胸がいっぱいになる。
まだ読んでない「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」と「エンド・オブ・ライフ」も読むので、もうしばらくこの世で待っていてほしい。
生と死をみつめる取材と執筆を重ねてきて、ある意味そのへんの僧侶よりずっと悟りを開いているといってもいい佐々さんの今この瞬間がすがすがしく満ち足りていることをひたすら祈る。
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ダブルリミテッドの話は、西川美和「スクリーンが待っている」でも同じような話が出てきたのでとても興味深かった。
本当に使える生きた日本語は「どけ」とか「やめろ」とか、命令形であってですます調の丁寧な日本語ではない。
「会えない旅」がとても印象に残った。アポも取らず、会えるともわからないけど会いに来る。こういう行動力があって、多くのノンフィクション作品を生み出したんだろうなとうかがえるエピソードだった。
ご冥福をお祈りします。
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今までどれほど沢山の事を佐々さんの本に教えてもらっただろう。どれだけ救ってもらっただろう。
佐々さんがこれまであちこちに綴ってきたエッセイの中なら厳選された数編が収められている今作。
読めばこれまでの作品の数々がフラッシュバックしてくる。
佐々さんの作品をまだまだたくさん読みたい。
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生と死を見つめたすぐれたノンフィクションを上梓してきた佐々さんが、これまでに発表し書籍化されていなかったエッセイやルポをまとめた本。自身の家族の話、死生観、この国と外国人、そして宗教……。どれも佐々さんらしいテーマだが、意外な一面もある。主な作品はすべて読んだが、エッセイはあまり読んだことがなく新鮮だった。
現在、佐々さんは悪性の脳腫瘍と診断され、手術・入院を繰り返している。残された時間は少ないという。そんな中で届けてくれた貴重な1冊だ。
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とても優しく、とても静かで、とても力強い本でした
特にオウムに関するエッセイは、圧巻でした
今後の人生で何度も読み返すことになると思う
本当に素晴らしいエッセイ本でした
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これまでに読んだ作品にガツンと衝撃や感動をもらった佐々さんのエッセイとルポルタージュ。
家族、病、看とり、移民、宗教などさまざまな著書で綴られていたことの背景にも触れられていました。
『小さき声に寄り添うことで、大きなものが見えてくる』
という表紙見返しの言葉にも頷ける。
さまざまな問題が複雑に絡まりあって、社会に存在していることを感じました。
佐々さんの文章には、どうしてこんなに心を揺さぶられるんだろう…。言葉がダイレクトに届いてくる。
「ダブルリミテッド」という新しい言葉も初めて知った。
新たに知る事実に向き合いながらも、いつの間にか自分と向き合っているような気持ちになるし、これからの社会のあり方についても自然と考えさせられる。
エッセイと言えど実に濃い内容の1冊。
知りたかった佐々さん自身のこと、家族のことなども知れて良かった。
だけど、佐々さんが現在患っている病気のことはとにかくショックでした。
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佐々涼子(1968年~)氏は、早大法学部卒、専業主婦として2児を育てつつ、日本語教師等を経てライターになった、ノンフィクション作家。2012年、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で開高健ノンフィクション賞、2014年、『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』でダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR第1位等、2020年、『エンド・オブ・ライフ』で本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞。
本書は、2013~22年に、日本経済新聞や雑誌各誌に掲載したエッセイ33編と、「集英社クオータリー kotoba」等の雑誌に寄稿したルポルタージュ9編をまとめた作品集である。
私はノンフィクションが好きで、これまで多数のノンフィクション作品を読んできたが、佐々さんも支持するライターのひとりで、『エンジェルフライト』、『紙つなげ!~』も読んでいる。
そして、ひと月前に行きつけの大手書店で本書を見かけたのだが、佐々さんにしては珍しいエッセイ+ルポルタージュ集だなと思いながら、購入はしなかった。が、それから程なく、NHKの朝の番組の特集で、佐々さんが悪性の脳腫瘍に罹患し、余命長くないことを知り、即座に入手し、読み終えた。(尚、佐々さんが悪性脳腫瘍に罹り、残された時間が少ないことは、本書のあとがきで書いている。私は本を見るとき、大抵はあとがきから読むのだが、書店で見かけたときには、なぜかあとがきを読まなかったのだ。。。)
本書に書かれているのは、作品集という性格上、様々な題材ではあるが、通底する大きいテーマはいくつかである。これまで「死」をテーマにした多くの取材をし、作品を書いてきた佐々さんが、そのときどきにどのようなことを感じ、考えていたのか。ライターになる前に日本語教師をしていた経験も踏まえて、国を跨いで生きる子ども達にとって最も大切なことは何で、そのために我々は何をするべきなのか。そして、『紙つなげ!~』を発表した後、10年間闘病した母親を失ったこともあって、スランプに陥り、インド、バングラデシュ、フランス、タイ等の寺院を訪ね歩き、そこでどのようなことに気付いたのか。。。等である。ノンフィクション作家というのは、取り上げるテーマとそれを描くアングルに、作家本人の価値観や人生観が如実に反映されるものだが、佐々さんのそれには大いに共感を覚えるし、また、いくつもの新たな気付きを与えられた。
その中で、最も印象に残ったのは、ノンフィクション作家の使命について書かれた、次の一節である。
「私は震災や、事件、事故について書いている。殺人についても、終末医療についても取材をしている。世の中には、災害があり、テロがあり、戦争がある。子どもの虐待があり、貧困や、病がある。いいことも、悪いことも書くのは、いいことも悪いこともあるから書くのだ。理不尽なことは、この世に存在している。それはただそこにある。だから私は書いているにすぎないのである。しかし、私は、「それでも」世の中は決して捨てたものではないと思っている。世の中は基本的に信じるに足ると思っているし、それがなければ、こんな仕事を誰もしないのではないだろうか。私が書きたいのは、「それでも」のあとにやってくるものなのだ。」
あとがきは次のように締めくくられている。
(こどもホスピスの取材をしたときのことを振り返って)「取材をしていた時には、まだピンとこなかった。だが、その時わからなかったことも、今ならわかる。私たちは、その瞬間を生き、輝き、全力で愉しむのだ。そして満足をして帰っていく。なんと素敵な生き方だろう。私もこうだったらいい。だから、今日は私も次の約束をせず、こう言って別れることにしよう。「ああ、楽しかった」と。」
また佐々さんの書いた文章を読めることを願って。
(2024年1月了)
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ちょうどこの作品を読み始めたとき、佐々涼子さんの特集が組まれている朝のニュースを観ることができ、絶句してしまいました…。だって、そんな悲しい……。私は佐々涼子さんの描くノンフィクションが好きで、「エンジェルフライト」も「紙つなげ」も「エンドオブライフ」も「ボーダー」も読んできました。それぞれ、心に響くものがあって、この作品を読めることを楽しみにしてて読み始めたけれど、序盤ではそこまで深刻だとは思ってもいなかったのに…佐々涼子さん、脳腫瘍の希少がんで闘病中、平均余命13ヶ月との告知を受けたのは昨年の11月って…。
この作品は、そんな佐々涼子さんが今までに綴った短いエッセイとルポをまとめたものになっています。ノンフィクション作家として感じたこと、読み手に伝えたいこと…それは自らの死生観や宗教観であったり、元日本語教師の目線も含め日本で生活する外国の子供達のことであったりとさまざまなな内容となっています。印象的だったのは、外国人技能実習生に関わる内容で日本はこのままでいいのか、問題提起しています。今のままでは、日本に来てくれる外国人はいなくなってしまうと…。
佐々涼子さんの紡ぎ出す文章は、読みやすくてどこか優しいんですよね…!まだまだ、書き続けてほしい思いと、家族との大事な時間を穏やかに過ごせればそれもありなのかとも思ったりもして…。今を愉しむ人生、「ああ、楽しかった」と言える人生を、私も送ることができたら幸せだと感じました。
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恐らく彼女のこの先対象に寄り添った様な新しいノンフィクションを読む事は出来ないかも知れないと思うと今までの作品が宝物の様に思えて来る。
同世代で同じ様な経験をし同じ様なモノを見聞きして来た仲間の様に勝手に思っていた人が今静かに先に進もうとしている。
どうか「楽しかった」と終えれます様に。
まだまだ早目の「ありがとう」に変えて。
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ノンフィクションはあまり読まなかったが、著者の本をきっかけにジャンルが広がった。
今回もエッセイというけれど、やはり一つ一つが渾身のノンフィクション、ルポルタージュだ。襟を正して、読まないと心が負ける。
なにも出来ないけれど、Xでフォロー、皆さんの応援を拝見している。
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佐々涼子さん。すごいです。10年書きためてきたエッセイとルポルタージュから厳選された作品集。重い現実に真正面から向き合って、伝えてくれるこの本に出会えてよかったと思いました。
初めの〈「死」がおしえてくれること〉から、一気に自分が体験したことに引き戻されました。いざ親の死と向き合ったときに、オロオロして、自分の無力さを感じたこと。「親は死してまで大切なことを教えてくれる」というのは、私もそのときに感じたことでした。
次の〈夜明けのタクシー〉も、親になって、ワンオペで心細かったときに、ふとした言葉に救われたことを思い出しました。
〈体は全部知っている〉では、「人は死に方を知っているし、家族は送り方を知っている」という言葉で、見送ったときのことを思い出しました。「命のことは体に委ね、任せればいいのではないだろうか」という言葉では、佐々さんの強さを感じました。
死、技能実習生のこと、外国人の日本語教育のこと、宗教のことと、私たちが普段見ないように過ごしていることに、きちんと向き合い伝えてくれている本でした。
あとがきでは、本当に驚かされました。重い病になったからこそ見えるものがあり、それを伝えてくださったことに感謝の思いでいっぱいになりました。「遺された人たちには、その限りある幸せを思う存分、かみしめてほしいのだ。」というのは、見送った両親も思っているような気がして、救われました。
読後、佐々涼子さん、ありがとう、という気持ちでいっぱいになりました。