バフチンの宛先という概念が思い浮ぶ
2024/10/13 07:26
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投稿者:Bakhitin - この投稿者のレビュー一覧を見る
内田樹師匠の最新刊『だからあれほど言ったのに』(マガジンハウス)をご恵投いただきました。このタイトルを見て、ロシアの哲学者のミハイルバフチン(Mikhail Bakhtin)の「宛名性(addressivity)」という概念についていろいろ考えさせられる。バフチンが「宛名性」に関心を持つのは、「どんな発話も言語コミュニケーションの連鎖の一環なのである」という一般的な観察が背景にあり、この観察を基にして彼はさらに「発話同士はいかに無関心ではありえず、どれも己れに満足しておらず、たがいに知り合い、たがいに映し出す」という主張を導きだしているのである。ということは、
「だからあれほど言ったのに」という「発話」(Utterance)は実にさまざまな「宛名」に向かって発せられていると思う。その宛先は、時には「日本の政府」だったり、時には「学者」だったり、時には「読者」だったり、さらに時には「編集者」だったりする。ということは、発話はそれを生み出す「声」ばかりではなく、その発話の宛先の声も反映している。発話を作り上げていく場合、声は先行する発話に対するなんらかの応答なのであり、また、その後に続いて出てくる他人の反応をも予想している。発話が理解されるときには、そのことを聞いている一の「対抗のことば」に出会うことになるのである。
発話がある聞き手に向けたものである、ということをBakhtinは「宛名性(addressivity)」と呼んでいます。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
内田樹さんの本、またもキャッチイなタイトル。今回はどのようにタイトルを決定したのか、まえがきに記述があります。日本論、教育論、武道論など多岐にわたる内容ですが、相変わらず読みやすく、かつ深い内容です。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
内田樹さんらしい日本人論で、面白く読むことができました。不自由な国に向かっている警告として、わかりやすかったです。
新自由主義って?
2024/08/22 16:42
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新自由主義って、結局、なんなんだろう、竹中平蔵さん(私は大嫌いだが)が頑張っていた規制緩和のことなんだろうか、新自由主義からの脱却を訴える政治家もいるが具体的に何をしたいのかも不明。やっぱりわからない
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投稿者:タタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読んでから日本の現状や「将来について、いろいろと不安な気持ちになってきました。考えさせられます。
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様々な媒体に発表した文章を集めたコンピレーション・アルバムのような本でした。極めて多作な内田センセー、相変わらずの切れ味ですね。子どもを傷つけず、無垢な大人に育て上げる・・・ ネオリベ全盛の現代では難しいでしょうね。現役時代は仕事柄登校拒否の子どもに係わることもあったのですが、今どきの子どもたちの受けるプレッシャーは半端ないようです。彼らが安心できる「アジール」を見つけることができればいいのですが・・
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貧乏と貧乏臭いの違いは耳が痛い話。
日本が貧乏臭いのは多分我々氷河期世代のせい。
言い訳かもしれないが、戦後と比較して絶対的貧乏ではなくても、相対的に貧乏と感じるだけで、人は貧乏臭くなるのではないか?と、実際に世代間格差で底辺に追いやられた我々世代からすると思ってしまう。
上を見ても下を見ても、右を見ても左を見ても、自分より幸せそうな人しかいない時に、人間はそんなに簡単に毎日を笑顔で生きられるのかな?と思いました。
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単著は久しぶりかも。でもいつもの内田節。共著はちょくちょく読んでいるから、それほど久しぶりな感じもせず。安定感抜群の読み心地。本題とは外れるけど、前書きでタイトル決定について触れられていて、”本の雑誌”の特集がそれだったこともあり、なかなかに興味深かった。あと、これも前に読んで大きく首肯した部分だったけど改めて、子どもは愛するより傷つけないのが大事、と。この考え方には、今のタイミングでもう一度触れられてよかった。
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改めて本を読んで視野を広げることの楽しさを感じました。人生には、即決できないことの方が多いような気がするので、周りに多大な迷惑をかけない程度に大いに悩んで喚いたりしながら、考えていこうと思います。
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紐解き始めると頁を繰る手が停められなくなり、素早く読了に至った。読後に、本書で話題にしていた様々な事項に関して頭の中に浮かんで巡っているかのような感じがする。余韻が深い内容だと思う。
本書は、著者が様々な形で発表した文章、或いは講演活動を盛んにしているようなので、その講演記録という場合も交じるようだが、出自が異なる色々なモノを集めて生まれた一冊であるようだ。とは言っても、一冊に纏めるに際しての加筆等々の作業は入念に行っているらしい。そういうことなので、何処かで「色々な形で発表された文章を集めた?」と感じながらも、「幅広い話題に関して綴った一冊のエッセイ集」というようにも感じられた。
本書で取上げられている話題は「社会と個人」、「個人の人生」、「現在を生きる世代と未来を担う世代」というような事柄に収斂されるように個人的には思った。そして“主流”となっているらしいような観方、傾向への異議や疑問を申し立てながら「こういうものなのではないか?」を説いてみようとしているような感を覚えた。
「第1部」は「社会」ということに対しての観方、考え方という要素が強く、「第2部」はもっと「個人」に関する考え方という要素が強いように見受けられた。結局「一個人」は「社会」を見渡しながら「個人」の内側を見詰めて考えるものなのだということかもしれない。
より大きな声で聞こえて来るような主張、論調というモノが在って、そういうのが所謂“主流”だ。そして何かの様子を観ていて、「最近はこういうような様子に?」と見えるモノが在って、そういうのが“傾向”だ。多くの場合、“主流”や“傾向”の中に然程の疑問も抱かずに入り込んで流されているのかもしれない。が、“主流”や“傾向”に関して「本当に正しいのか?」と各々が独自に考えてみることが大切で、そういうところからより幸福な何かが見出され、それを掴み得るというのが著者の伝えようとしている事柄なのかもしれない。
豊富な話題が供される本書であるが、「貧乏」と「貧乏くささ」との差異という論、「境界線」という論、「愛しようとすること」に対する「傷つけないようにしようとすること」という論など、幾つも強めに記憶に残る話題が在った。
殊に「境界線」という論である。考え方の明らかな違い、立場の違いで「境界線」を明確化するばかりでも、何かが如何なるのでもない。寧ろ「境界線」の逆側に在る人達が、線を越えて向かってくるというような可能性を排除しないべきだというような論だった。色々な事柄で「言い得て妙」なのではないかと思った。
色々な形で、著者は「もう少しこうなのではないか?」という論を世の中に向かって問いかけ続けて来た。それでも何やら「閉塞感」のようなモノに包まれているような気分が拭えない。そういう中で「だからあれほど言ったのに…」という句が漏れ、それを本書の題名としてみたのであろう。
何か、漫然と考えていて形が定かでも無かった事柄について、本書を読んでみて論客が与えられたというような感じで、読後の満ち足りた感じも少し大きい。
自由に考え、自由に想像を試みる人達が見受けられる穏やかな社会に、無限の可能性を否定されない子ども達が徐々に入って行くというような様子を、著者は善いと考えているのかもしれない。全くそのとおりだと思う。本書のような材料も得ながら、人は自由に色々な事を考えるべきだ。御奨めしたい一冊との出逢いに満足している。
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「だからあれほど言ったのに」
うまい題名だこと!
5音7音で題名を考えるという種明かしをしていたけど、確かにそれはいい考えだと思う。
キャッチーで、尚且つ、何度も胸に響く。
しかも今回のこの本は一つずつが短く読みやすいので、読み終わるたびに、「だからあれほど言ったのに」という内田樹の声が聞こえてきそう笑
この人はホントやばいくらい魅力的なおじ様ですね。近くにいたらクラクラしたと思う笑
「今の日本の『ダメな組織』はこの『督戦隊が多すぎて、戦う兵士が手薄になった軍隊』によく似ている」
督戦隊とは「前線で戦況が不利になった時に逃げ出してくる兵士たちに銃を向けて『前線に戻って戦い続けろ、さもないと撃ち殺す』と脅すのが仕事だ」
あー胸がすく!
日本の国力は低下したとはいえ、気を取り直して余力をうまく利用して伝統芸能や観光資源を大切に使い延ばしで豊かで暮らしやすい国として存続させることはできそうなのに、
「しかしまことに不思議なことだが、そういう穏やかな未来図を描くひとは政官財にはいない」「見かけるのは目を血走らせて『起死回生の大博打』を狙っている人たちばかりである」
「大博打」笑。確かに!
目の前のモヤモヤを霧が晴れたようにスッキリ整理してくれる気持ちよさ。
もちろん何でも二項対立で単純化しようなんしてるわけではなく、複雑なものは複雑なままで受け取れる知性の大切さをきちんと述べる。
そういった整理の仕方を私たちに提示してくれる貴重な存在だと思う。
学ぶことに関しても
「無知というのは、単に知識が欠けているということではない。そうではなくて、無知の知識が頭に詰まっているせいで、新しい情報入力ができない状態のことを無知と呼ぶのである」
なるほどなるほど。
5月下旬には複数の本が出版されるようだ。全部買ってしまうだろうなぁ。
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七五調のタイトルにつられた。
仮題の「不思議の国ニッポン」のままだったら読んでいないと思う。
難しい印象が強い内田樹さんの本だが、これはすごく読みやすかった。
日本社会の問題の本質を考えるのにいい本だと思う。
普段考えが及ばない視点を幾つも示してくれている。
・日本の組織の問題
日本社会では「管理」したがる人の前にキャリアパスが開かれている。
統治機構の上層に上り詰めれば、政策決定に関与することができる。
「創造」に熱中している人は「管理」や「出世」に興味がないので、政策決定に関与することはほぼない。
「管理」が大好きな人の関心はもっぱら「上下」関係にある。
その結果、「管理」者は相手によって態度を変える言行不一致な人になり易い。
業務が上手くいかないと「管理が足りない」と考え「管理を強化する」ことしか思いつかない。
「ダメな組織」は「創造的なプロセス」を理解できない「管理」者が作っている。
・人口問題
世界レベルでは人口増、先進国では人口減と問題の向きが違う。
そもそも「適正な人口」について聞いたことが無いし、国民的合意を得た人口数もない。
何を基準に人口問題を語っているのか?
「適正な人口」は、食料供給が可能な人口が一つの基準値。
動物は食料に見合った数しか生きられない。
日本の人口減少対策は、「都市集中」「地方消滅」が自民党の政策方針で、これは資本主義の考え方。
国土の大半を無住地にして、国民に帰るべき田園がなくなる未来が見える。
韓国がまさにソウル近辺に国の半数以上を人口集中させ、地方をないがしろにしているので日本の近未来だ。
「都市集中」型の国家を作ってうまくいった史実はない。
人口減の問題は、年金制度や社会保険が立ち行かなくなるといった財政面の話ではない。
人口が減るのは確実なのに、そうなった時の日本社会のあるべき姿をだれも考えないことが問題。
・憲法問題
憲法はその国がどうあるべきかというビジョンを明文化したもの。
実態に合わなくなってきたら変えるというものではない。
国家権力の暴走を抑えるためにある。
自衛隊を強化し、アメリカから武器を大量に買い、戦争できる態勢を整えたから憲法9条を変えるなんてもってのほか。
自衛隊の存在が戦争放棄を謳う憲法に違反しているという人がいるが、国民の総意は「憲法違反ではない」である。
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「加速主義」というアメリカで発生したポスト資本主義を望見する思想。シリコンバレーの若手ビジネスマン達の間では支配的なイデオロギー。人類はポスト資本主義の時代に備えなければならない。だが、「民主主義」や「人権」や「政治的正しさ」のような時代遅れのイデオロギーがブレーキになって、資本主義の矛盾を隠蔽し、その終焉をむしろ遅らせている。そのブレーキを解除して、資本主義をその限界まで暴走させて、その死を早め、資本主義の「外」へ抜け出そうというのが加速主義。
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一発目の「大人」が消えている、という話から度肝を抜かれました。
内田さんの本は初めて読みましたが、様々なところへ掲載されたものを集めた形でさくさくと読み進められました。
特に社会問題を語る章では、ところどころ耳が痛いような、お叱りを受けているような感じがしましたが、これも本の良いところですね。
世の中には自分の想像もつかないようなことまで考え、感じている人々がいる。本を読むことでそれを再認識できる。
検索フォームに入れればなんでも無料で「それっぽいこと」を知ることができる時代に、お金を出して本を買って、なんだかちょっと叱られている気持ちになるのは、わたしはわりと、嫌いじゃないなと思います。
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いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。
内田樹さんの著作は今までも何冊も読んでいますが、こんなふうに視野にはいるとちょっと手を伸ばしたくなります。
「帯」には “ウチダ流「日本人論」” と大きく書かれいますが、必ずしも “日本人論を声高に説いている” わけではありません。とはいえ、いつもながら語られるところは、なかなか興味深い内容でした。