ネットワークの勃興から先鋭化、衰退を追う
2024/09/18 16:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
電信技術の先史から電話の誕生までに起きたコミュニケーション革命を追うノンフィクション。カンブリア紀もかくやの如く、高速情報伝達にかけた人々の熱気から生まれた工夫と発明の数々に関心する。一方、電信が発明されるまでの紆余曲折、普及までに立ちはだかった政治的課題・ロビー活動、その有用性が認められてからの先鋭化するダイナミックな経緯がコンパクトにまとめられている。
電信の登場から発展する様は今日のインターネットの発展と酷似している。私たちが先進技術と信奉してやまないインターネットは、その実人類史が経験済みのイベントに過ぎないと指摘する本書のインパクトはすさまじく、同時に先人たちの轍を踏まず、平和への楽観を保ったままこの時代を守って欲しいという願いが湧いてくる。
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『ヴィクトリア朝時代のインターネット』読了。話題の絶版ノンフィクションの復刊。電信という技術が生み出され改良され普及し、社会を変える様が実に生き生きと描かれる。現代の視点から過去を照らすことで結果的に今を相対化する視座を得るというのは歴史を学ぶ意義にして醍醐味であるよな、と。
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電信って言葉は聞いたことあっても具体的にどういうものなのか知らなかったから理解が深まった。
ちょうどこの辺りの時代が舞台の本を読む時、電信とか電報とかよく出てくるけど分からないまま読んでたので今後は少し解像度が高くなるかもしれない。
人間いつの時代も考えることとかやることが同じだな。
現代では冠婚葬祭の時にギリ使うかなというレベルのものになってしまったけど、当時はとんでもない大発明で、その名残は今も色濃く残っている。
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ヴィクトリア朝時代には、インターネットのように全世界を繋ぐ情報ネットワークが既に存在した。電話以前に普及していた文字通信サービス「電信」をインターネットの前身と捉え、その繁栄と衰退を描きだしたノンフィクション。
電信とはモールス信号を使った文字通信のことで、要は今でも結婚式の謎風習として残っているあの電報である。19世紀半ばにアメリカとイギリスでほぼ同時に実用化され、誕生から20年足らずで海底ケーブルが大西洋を横断し、日本にまで電信網が引かれていた。1870年代には2万都市が繋がり、ロンドン-ボンベイ間通信の所要時間は4分!ものすごいオーバーテクノロジーだ。
偉人伝に興味を持たずに育ったため、本書で初めてモールスの経歴を知って今更驚いた。こんな技師でも科学者でもない山師じみたド素人だったなんて、歴史って面白いなぁ。電気が「目に見えない」という理由で心霊と同じ扱いを受けていた時代だから、スポンサーの前で実演してみせても詐欺師や手品師と一緒くたにされるモールスたちがモーセみたいで笑える。降霊術とか神智学会とか千里眼とか盛り上がってたのと完全に同時進行の話だもんなぁ。
電信局のオペレーター周りの話なんかはかなり"インターネット"で、独自に生みだした略語はプログラム言語の先祖のようだし、仕事の合間に上司の目を盗んでチャットしたりオンラインチェスをしたりも今のデスクワークと変わらない。なんとなく女性ばかりのイメージだったけど男女どちらも働いていて(部屋は別)、当時は最先端のイケてる職業だったとか。その後機械化され、猛スピードで信号を読み取る技術職だったオペレーターの地位は下がった。この辺はタイプライターの普及とも関係づけられそう(しかしタイプライターの実用化より電信の普及のほうが早いっていうのも考えてみるとタイムパラドックス感がある)。
情報がスピード勝負の時代になったビジネスマンたちの「通信スピードが上がれば上がるほど楽にならずに仕事が増えるだけじゃねえか!」という叫びはあまりにも21世紀的すぎる。電信誕生以前は新聞屋がニュースを余裕で2日寝かせてた話なんかも面白かった。しかしまもなく電話が発明されると、電信の天下は50年足らずで終わってしまう。
そして時代の中心は電話、ラジオ、テレビへ移り変わる。著者がこれらの音声・映像メディアよりも電信を"インターネット的"だと見做したのは、原書がでた1998年当時はインターネットの大半がまだ文字情報のやりとりだけで成り立っていたからだ。リアルタイムの情報を交換できるようになり、新聞や雑誌などのメディアが力を持ったオンラインテキスト文化。全世界を繋ぐ情報ネットワークが平和をもたらすという無邪気なユートピア幻想。この二つが100年の時を跨いで電信とインターネットを繋ぐ。97年にMITメディアラボ所長が語った「将来子どもはナショナリズムとは何かをわからなくなる」という展望とは真逆の未来にきちゃったけど、それを笑いたくはないなぁ。
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ヴィクトリア朝時代のインターネットを読んだ。電信の発明やその発展が詳しく書かれている。
電信って、「チチキトク、スグカエレ」みたいなメッセージを送る、古い時代のものだとぼんやりイメージしていたけれど、当時は蒸気機関と並んで称賛された技術革命だったそうで、そのイメージが覆った。考えてみれば、電信が出来る前は飛脚や伝書鳩で連絡をとっていたのだから、そりゃそうだ。
発明された当時はペテンや黒魔術の類だと思われて、なかなか社会に受け入れられなかったが、一度電信の有用さが知られると熱烈的に普及していったらしい。そういった全く新しい技術がどのように受け入れられていったのか、当時の空気感が伝わるエピソードがたくさん紹介されていて、面白かった。
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トム・スタンデージ「ヴィクトリア朝時代のインターネット」読了。19世紀のモールス信号が開発された時代がこんなに面白いとは驚いた。絵描きのモールスが世界を変える電信に没頭する様に感動した。また電信の勃興と衰退の歴史から現代のインターネットや生成AIの行く末に共通性を予見させられた 。 ー ・・ー
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現在のインターネットが世界をつなげて狭くし、人々の生活を変容したことは、ここでいうまでもないこと。しかし、同じように世界を変えた技術として、電信、電話があったというお話。
今起こっている変革は全く新しいものではなく、かつて別な技術、サービスの普及によって世界に起こったことが、姿を変えて繰り返されているものであり、それによる功罪の発生も似たような傾向を見えているということに気付かされる。おそらくはそれは今後も繰り返されると思われるが、次に革命をもたらす技術が何だろうと考えてみる。
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もちろん、19世紀に『インターネット」があったわけではない。しかし、『インターネット』に匹敵するものが実用化された。電信(テレグラフ)である。
腕木通信(手旗信号を機械化しリレー方式でつないでいくようなもの)から、やがて電気通信へ。さらに海底ケーブルの伸展による世界規模のネットワーク等々。現代のインターネットと同様のインパクトがあり、その発展と社会的影響は、現在のインターネットと驚くほど酷似していた。仕様の共通化、暗号化通信の導入や、電信を利用した犯罪などは、昔も今も変わらない。
あと、発明王のエジソンが電信で財を成したことにより、電球や蓄音機の開発につながったことなどは興味深い。
そして今では、電信(電報)は慶弔目的以外に目にしたことがない。
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すべてのネットワークの母:電動式・光学式テレグラフ
奇妙に荒れ狂う火:電気式テレグラフ
電気に懐疑的な人々:電動式テレグラフ伝播
電気のスリル:海底ケーブル
世界をつなぐ:大西洋横断ケーブル
蒸気仕掛けのメッセージ:電信は世界平和のための道具
暗号、ハッカー、いかさま:窃盗・嘘・騙しのための新しい方法
回線を通した愛:電気的なテレグラフの回路に言い寄られる
グローバル・ヴィレッジの戦争と平和;地球の全住民が1つの知的な隣人となる
情報過多:エジソン・株価表示器の改良
衰退と転落:テクノロジーの絶え間ない進歩→電信の衰え
電信の遺産:テクノロジーに対する態度を決定的に再定義
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ヴィクトリア朝時代から比べると現代はいろいろなものが大きく様変わりした。
そのなかでも現代において欠かせないものの一つに”インターネット”がある。インターネットの登場で情報へのアクセスの量は飛躍的に増大した。そして人々のコミュニケーションにも影響を与えており、インターネット以前以後でまったく違うものになった。
と、自分は思っていた。だから仮に昔の人が現代にタイムスリップしたらインターネットに最も驚くだろう、と。
しかし、違うのだと本書に記されている。
インターネットの原型であるものがヴィクトリア朝時代には既にあったのだと。
それが”電信”技術である。
腕木通信という腕の形をした木の形で遠くに情報を知らせる技術の誕生から、電気による通信技術の誕生、そしてテレグラフや電報、電話と姿を変えていく。
インターネットの誕生によってテキストメッセージのやり取りが手紙というフィジカルからデータへと変化したが、既に通っていた道だったのかという驚き。
電信オペレーターによる会ったことのない誰かとのやり取りやロマンスもSNSにも通じるようで面白かった。
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やっぱりテクノロジーが人の意識を変容させるのだなあ。電信の実演を見せられてもその価値や可能性にまったく気づくことができない人たち。思えばインターネットの出始めの頃、それがコミュニケーションのあり方を変えるなんて自分も考えなかった
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コンピュータも電球もなかった時代にインターネットがあった。こんなSFのような話が現実の歴史にあったと言うのは実に信じがたかったが、まさに言葉通りだった。インターネットが人々の社会、文化に与えた影響がそのまま伝心の時代にも起こっていたのだ。そしてこれからAIの時代を迎える我々にとっても温故知新として必携の一冊になるだろう。
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電信の誕生と庶民の反応、犯罪への波及、恋愛への影響、戦争の変化、平和利用への期待、情報過多、新たな電話に取って代わられるまで
驚くほどインターネットに類似していて面白い
歴史に学ぶとはこのこと
著者のトム・スタンデージにも注目
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要は電信の誕生から衰退の物語。「ヴィクトリア朝時代のインターネット」とタイトルにあるように、現代のインターネットになぞらえて当時の社会にもたらしたインパクトを論じている。
現代に生きる我々はインターネットやSNSといった新技術に対して唯一無二の革新とみなしがちであるが(クロノセントリシティーっぽい)、電信に対する人々や社会の反応を思い出すことで一歩引いて考えることができるかもしれない。
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【概要】
19世紀はヴィクトリア朝時代。
新しい発明であった「電気」を使って、国中でいや世界中で瞬く間に情報のやり取りが出来る「電信」が生み出された。
電信はビジネスを加速化させ、恋愛を生み出し、悪用しようする人間を生み出した。
まるで現代のインターネットを先駆けたかのような発明が100年以上前に生み出されていた!
【感想】
電信の前段階として塔を立ててパネルを交換することによって光学的に情報を送るテレグラフがフランスで生まれたという所がまず面白い。
それでいて、光学式テレグラフに予算を投資してしまったので、電気式テレグラフ=電信を敷設するのが遅れたという話が世界史あるあるでまた面白い。
この新しい技術がすぐにまた新しい技術に取って代わられる……勿論電信もその例を違えず100年余りで電話に地位を奪われる!……これこそが技術の歴史の面白さだと思う。
そして毎回新しい発明が生まれると、人間は飽きもせずそれによって世界が良い方向に向かうと楽観視する。
電信の完全な民主化がインターネットだという著者の結論が的を射ていると思う。