明治・大正・昭和 日米架空戦記集成
著者 長山靖生 編
第二次大戦までに発表された作品から「空中戦」「新兵器」「諜報戦」「銃後」をテーマに、幻の大勝利のなかでリアルな危機感が迫る珠玉の11短篇を収録。
明治・大正・昭和 日米架空戦記集成
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やすらぎよ、ひかりよ、とくかえれかし
2003/07/30 13:50
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投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
海野十三や横溝正史の作品も交えて、明治から昭和初期までに発表された架空戦記を詰め込んだ短編集。タイトルに「日米」とついているのはなぜだろう? アメリカの作家も混じっているのかと思ったら、単純に「アメリカと戦う」話がほとんどであったため。このあたりの扱いの差に現在の架空戦記・シミュレーション小説と呼ばれている作品の多くとの違いが出ているのですね。
今の作品の主流は、たとえアメリカと戦う話であったとしても、それは“過去”の話。「何らかの理由で、過去の戦いの流れが変わる」ものであり、その原因と過程と結果を描写するものです。それが近未来の話だった場合でも「過去の歴史は変わっている」のが前提です。
ところが、この作品集に収録されている作品のほとんどは“近未来”が舞台、つまり“すぐ先の話”です。それも今、自分たちが住んでいる世界の。「もうすぐ始まるかもしれない、次の戦争」の物語です。もちろん収録されている作品には単純な戦記物もあれば天才科学者の新発明が活躍するものもあり、卑怯な敵(もっぱらアメリカかそれを思わせる国)をやっつけろという戦意高揚的な話もあれば科学技術の発展に対する不信感を顕したものもあります。ただ、どれにも「戦争は間近に迫った、自分自身のもの」という共通認識が感じられるのです。そのあたりを、解説の作者紹介や時代背景への言及を参考にしつつ読み解くのも面白いでしょう。
個人的には最後に収録された、兵士の帰郷をテーマにした作品がいちばん好きでした。これを「架空戦記」と呼んでいいのか解りませんし、はっきり言って反則技に近いと思いますが、読みやすく、ひねりが効いていて、面白かったです。この収録順だから良かったのかもしれません。
今風の架空戦記を期待して読むと期待はずれかもしれませんが、当時の科学小説や探偵小説の書き手による作品群として一読の価値はあると思います。