86―エイティシックス― みんなのレビュー
- 安里アサト(著者), しらび(イラスト), I-IV(メカニックデザイン)
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2019/05/06 07:50
私には合いませんでした
9人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:匿名 - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に人気があるラノベと聞いて読んでみましたが私には合いませんでした。電撃大賞の受賞作なのでこの作家のデビュー作になると思いますが、とにかくあまりにも稚拙な表現が目立ちすぎて読むのが本当に苦痛でした。
一つ例を挙げると、「十六歳の少女らしい白雪の美貌は硝子細工の繊細さで、良家の出を如実に語る優雅な身ごなし」 非常に読みにくい文章ですが、その原因は一つの文章で容貌と身のこなしという二つのことを描写しているにも関わらずなぜか体言止めを使っていることです。体言止めの効果は文章を簡潔にし全体にリズムを与える点にあります。こんなにリズムの悪い文章で使ってもあまり意味はありません。読点でつなげたりせずに文章を二つに分けるだけでずいぶん読みやすくリズムもよくなります。この直前の文章と合わせると次のようになります。「紺青の詰襟の共和国軍女性士官軍服。十六歳の少女らしい白雪の美貌は硝子細工の繊細さ。良家の出を如実に語る優雅な身ごなし」これでもまだまだ稚拙ではありますがまだ我慢できるレベルではないかと思います。
また、語彙力があまりないようで同じ表現を短い間隔で繰り返し使ったりします。「双眸」を何度も何度も使っているのが特に目立ちました。できれば別の表現を使ってもらいたいです。
このような稚拙な表現がたまにある程度ならそれほど気にならないのですが、いたるところに出現するので本当に読むのが辛くなります。
86−エイティシックス− Ep.1
2020/02/14 17:50
残酷な現実+ご都合主義+安易なドラマで感動させようとする作品。……本当にそれで満足するような読者で良いの?
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Caris - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説の構成としては非常に綺麗にまとまってましたが、作品としての良し悪しはどうかと問われると、疑問に思わざるを得ません。
まず、全体を通してリアリティがないんです。設定的な矛盾ではなく、空気的な問題です。酷く惨い環境なのに、なんでそんなにお前ら楽しそうなの?という。どう考えてもおかしい。平和ボケした人から見た「戦争ってこんなもんでしょー(棒)」みたいな内容なんです。アニメで良く見るような、戦争や兵器をカッコよく描きたいが為の世界観に感じてしまいます。
主人公レーナも、完全な偽善者です。学校の教科書に書かれているような“模範的な態度”を取っているだけ。ただ嘆いて善人ぶっているだけでなくて、何か行動をして欲しい。それでも世界は主人公の彼女に都合良く展開していく訳で……。特にラストシーンが完全なご都合主義で納得いきませんね。感動するだろドヤァみたいな作りが鼻に付きます。
作品って、何かを訴えかけるものであるべきだと思います。そうでないのなら、徹底的に楽しませて欲しい。この作品の何が良くないのかと言うと、そのどっち付かずな所です。差別や戦争という難しい問題を取り上げておいて、それに対する考えは出さずに、ただ残酷さや兵器のカッコ良さを描いているだけ。そして取って付けたようなありがちなドラマ……。酷い。
今も世界の何処かでは死人の出る争いが繰り広げられています。平和な社会で生きる私たちでは到底理解出来ない程に悲惨だと思います。そういう方たちの事を考えると、こんなただカッコ良いという理由だけで戦争を描いている作品なんて、楽しめる訳がないじゃないですか。悲惨な戦争を取り上げるからには、何かを伝えたいメッセージがあって欲しい。そうでなければ、安易に取り上げるのは失礼だと思います。私が当事者ならイラつきます。
端的に言って、私は不愉快でした。レーナの「難しい問題だからどうにも出来ないよね、仕方ないよね」という受け身な態度もそうですし、作品全体の雰囲気もそうです。現在の平和ボケした日本人そのものの精神が如実に反映されているのもそうです。そういう思考停止した人間であって良い訳はないと思いますが……どうでしょうか?……まあ、この作品だけに限った事ではないんですけどね。
総評としては……
残酷な現実を取り上げるだけ取り上げて心を痛め付け、それらの解決策は出さずに放っておいて、安易なドラマで心を救済して、満足感を得させる。
それがこの作品の正体だと私は思いました。
小説としてそれなりにレベルが高いのは事実ですが、果たしてこんな内容で満足するような人間で良いのでしょうか?
エンターテイメント作品の質としても、人としても。
願わくは、これを読んだ人がしっかりと戦争の現実に向き合ってくれることを祈ります。間違ってもこの作品のように投げやりな思考で満足してはいけない。
もしもこの作品を読むのなら、それだけは肝に命じておいて欲しいです。
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