kitoさんのレビュー一覧
投稿者:kito
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彼女は存在しない
2013/10/06 00:25
なかなか面白い
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初めて読んだ浦賀和宏さんの小説。なかなか面白かった。ミステリとしてよく出来てる。
いわゆる叙述トリックで、2度読み必須の驚きの真相が最後に明かされる。これは騙される。上手い。
物語は主に二人の主人公の視点で進み、一方のサイドと他方のサイドで、ある一つの“真相”に向かって進んでいく。
この2つのサイドの物語がその“真相”によりひとつに収束した時、帯にも書かれていたように悲痛な終幕を迎える。驚きと切なさで何とも言えない読後感。
読み返してみるとけっこう強引に誘導されている所もあるけれど、普通に読んでいると不自然感はないので、見破れた人は多分少ない。
この手のトリッキーな真相が明かされる小説は、多くの場合は「読み返して下さい」と真相のみを書き、そのままぶん投げられて終わらせてしまうことが多いのだけれど、この小説は親切にも振り返ってくれているので有り難い。
物語に隠されている内容がけっこう凄惨で、かつ、一方のサイドの主人公・根本の彼女である恵に科せられた結末があまりに残酷で胸が痛くなる。それまで(というか、もう一人の主人公である香奈子)の物語は青春小説風でライトだっただけに、ここの鬱さは半端ない。そこだけは注意が必要かも。
愛のひだりがわ
2013/10/27 19:44
愛のひだりがわ
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行方不明の父を探す旅に出た小学六年生の少女の成長を描いたジュブナイル。
小説の最初から最後までで3年ちょっとの月日が流れるので、そこそこの期間を描いた成長物語。(途中で一気に年月が飛びますが)
各章立ては、主人公の少女・愛の旅の転機となる人物を章題にして描いている。
第一章 デン
第二章 ご隠居さん
第三章 悟
…のような感じ。
読みやすく、読み進めることには苦にならない。荒廃した近未来というやや暗めの舞台背景で、かつ、主人公もそれほど前向きではないのだけれど、暗さや悲壮感は不思議と少ない。
悟やお母さんの描き方には若干もやもやするところがある。
正直、ご隠居さんがあまり良い人に思えないのは個人的な思い込みなのだろうか。
一番違和感を感じたのは歌子さんであり、確かに生きる為にやむを得ないとは言え、ちょっと柔軟性良すぎないだろうか。変わりすぎじゃないだろうか。受け入れられるものなのだろうか?
ラスト、父親との結末は正直寂しいところがある。感動的なラストをどこか期待していたところに、この現実的で冷ためのラスト。父親に会いに行く道中でものすっごく寄り道している辺りからも愛の気持ちの変化が何となく分かってしまう。
成長するにつれ失っていくものがある。最後の最後でその象徴的なことが描かれる。愛の成長が頼もしくも思えるけれど、同時にやっぱり寂しさが残る。
あまりに唐突な締めに、読み終わった直後は「途中で終わってないか?」と思ったけれど、案外こういうあっさりした物語の締め方は上手いのかもしれない。
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