求道半さんのレビュー一覧
投稿者:求道半
初恋ゾンビ 1 (少年サンデーコミックス)
2016/03/30 17:27
色気のあるゾンビ
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
第一話を読んだだけで気に入る人は恐らく少なく、第七話までを収録する本巻の結末まで読み終えた時、微かに仮初の道標と収斂する地点を予感する事が出来れば、俄然、興味が湧き、輻輳した重層的なラブコメディーを楽しむ資格が得られるのだ。
恋愛に無関心な主人公の初恋がらみの難問を解決するには、他人の色恋沙汰の解決、すなわちキューピッドとしての役割を演じる必要があり、何組ものカップルの話があたかもオムニバス形式で展開され、その都度、新たな疑問が生じ、物語の方向性が中々、掴めない。
これのどこが複雑な話かと思われるかもしれないが、男子の守護霊のような「初恋ゾンビ」が現実に干渉し、実在する各ゾンビのモデルの少女と主人公との関係が、これまた恋愛と無縁であるはずがなく、予期せぬ誤解や思い込みで、話が錯綜する。
決してそれぞれのエピソードがつまらない訳ではないのだが、先述した本巻の末尾で明かされる重要な事実に比べれば、読み進めるのに必要な作中への没入度には雲泥の差があり、途中で投げ出さない覚悟が必要だ。
その間、ふんだんに用意された、浮ついた女子の幻想を楽しめれば、難なく試練は乗り越えられ、女子の身体的な特徴が映える絶妙な構図の各コマを目に焼き付けたい。
i・ショウジョ+ 1 (ジャンプコミックス)
2015/09/19 13:00
スキンシップはハプニング
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
週刊少年ジャンプでの連載終了後、移籍先で巻数を重ねる、実質的に「i・ショウジョ」の第四巻に当たる本作は、表現規制が緩和されたとは言え、青年誌掲載作品とは趣を異にする、初々しい少年少女の恋物語である点に変わりはなく、前作を楽しめた読者であれば、続刊の購入をお勧めしたい。
初めて本作に興味を抱いた読者には、純粋なラブコメディーではなく、謎のアプリを介在した、男の子向けの、女の子の胸やお尻や足の裏に焦点を当てた性的な表現があり、実質的な打ち切りを招いた若干、強引な展開と意味が明確に読者に伝わらない科白が散見される点を考慮に入れた上で、キャラクターデザインが気に入ったのであれば、読んでみる価値はあると伝えたい。
連作オムニバス形式の、回によって話数の異なる、主人公が毎回変わる構成に物足りなさや統一感のなさを覚える向きもあろうが、魔法のアプリという核は決して崩れず、それに対抗する別の秘密のアプリの存在や、連作ならではの過去の登場人物の再登場や脇役の抜擢など、連載が進めば進むほど物語に奥行きが生まれ、ワンパターンではないお色気シーンと斬新な語り口は進化の途上である。
どの単行本にも毎回、一話毎に本編を補足し、読者の期待を上回る、時には空振りもする、だいたい欲望を解き放つおまけが書き下ろされており、好みのキャラクターのあられもない姿が見られるのも愛読者には周知の事だが、直接的な性交渉の描写はないにもかかわらず、公開停止や部分修正を強いられた本作が、今後は再度、連載時の規制が強化されたと知れば、読者の支持こそが命綱であり、一人でも多くの方の力添えが求められる。
モンスターバンケット 1 饕餮饗餐 (月刊少年シリウス)
2018/06/10 16:34
邪な政道
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
清朝の暗部を中華料理と化け物との関わりを通して、ユーモラス且つグロテスクに描く本作は、科挙になぞらえた謎の官吏登用試験に、運命的に、半ば強制的に参加させられた主人公の青年ケンちゃんの奇行と受難の数々を見て楽しむものである。
紫禁城内の某所では血飛沫が食品の着色料として利用され、ケンちゃんがそこから逃れる手立ては、それらを全て平らげる事しか残されてはおらず、ケンちゃんは絶体絶命である。
ケンちゃんをそこへ招き入れた謎の女は、政権の中枢との繋がりが作中で示され、科挙に一度、失敗しただけの若造を彼らが政治的にどのように利用するつもりであるのか、現段階では全く不明だ。
本作は清代におけるバロックの表象である。
作中ではコラム風に数点の料理が解説され、少しは為になるが、中華料理の知識の獲得を主眼として本作を手に取るのは、他の文献を渉猟し尽くしてからでも遅くはない。
副題の漢字四文字の意味を調べた上で、まだ読みたいと思える方は、ゲテモノ食いに興味を示す好奇心が旺盛な人であろう。
作中の至る所に書かれた漢字の羅列を読み解くのも、本作の醍醐味である。
小さな恋のやおよろず 1 (アフタヌーン)
2017/12/02 23:07
桜の恩返し
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
八百万の神様の、ほんの一握りの神様の、人間社会での多少、傍迷惑な言動を四コマではない形式で描いた本作は、時系列に沿った短編群であり、数話置きに挟まれるおまけの効用もあってか、単行本で纏めて読むと、読み応えがある。
作中では、読者を慄かせる、流血の惨事や男の股間への不意打ち等の痛々しくも笑える場面が見られ、各登場人物が受ける精神的な打撃の数々も、読者にとっては他人事であり、笑い飛ばせるに違いない。
ある理由により、季節外れの桜の花びらが、常時、舞い散るのであるが、その掃除については気にせずに、桜の女神である八重の気持ちの昂ぶりを、暖かく見守るのが、読者の責務であろう。
主人公の高校生、岩山虎之助は、据え膳を食える立場にある。
それを引っくり返そうと奮闘する、複数の勢力が、校内や校外で、虎之助に迫る。
押しかけ女房と対峙する両親も、息子を追い詰める。
神様の言動は人知を超える。
夢喰い探偵 3 宇都宮アイリの帰還 (月刊少年マガジン)
2016/12/05 17:59
探偵になる前に
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
病弱な少女に恋した本屋の孫の進路は、その娘と探偵になるか、それとも店を継ぐかで定まらず、二足のわらじと言う選択肢も有り得るが、本編で結論が描かれる事はなく、全三巻で自称探偵の女子高校生の物語は幕を下ろす。
高校生活の一時期に起きた、器物損壊、木の伐採反対運動、新刊書籍への書き込み、校内ポスターの異変、お化け屋敷の探検、文化祭の妨害、失踪者の遺体発見、商店街での架空発注の多発、そして窃盗などの事件を解決した少女は、病の再発に備えて、再手術を受けねばならない。
対立組織から命を狙われる訳でもなく、いつでも話を切り上げられる筋であるからして、どのような結末を迎えたとしても違和感は生じないが、全三巻での完結と最終話での新たな冒険の成り行きを考えると、病が完治していない少女が失神時に見る走馬灯で事件の真相を暴く設定が、そもそも必要であったのか疑問が残る。
最終巻には、町の地図や二人の簡単なプロフィールが幕間に挟まれ、作者のあとがきから今後の構想も練られていたと推察するが、読みやすさの裏返しの平板な画面構成や間延びした事件の経緯と推理の展開が、多数の読者を獲得出来なかった理由の一つであろう。病床でのパジャマ姿からの着替えに代表される性的な描写も中途半端で、ソックスの柄の黒への固定化も魅力を減ずる一因となった。
それでも次回作の発表を待ち望む出来栄えであるのは間違いない。
怪獣の飼育委員 2 (MANGA TIME KR COMICS)
2016/02/21 17:23
お友達になれたかな
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
生き物係が水槽や花壇の手入れをし、飼育委員がうさぎの世話をするのと同じ感覚で、少女が学校の裏に住み着いた怪獣と触れ合う、その最中に体験するおっかなびっくりの記録の刊行があっさりと終了した。
前巻とは、やや、趣が異なり、怪獣出現時の混乱とそれに纏わるエピソードや原因不明の難病の話、怪獣の心理や発生メニズムの神秘など、次巻以降で解明すべき本作の特色である興味深い問題の数々が、未解決のまま、少女の学園生活におけるちょっとしたハプニング程度に扱われ、結果として不満の残る内容である。
前巻で頻りに取り上げられた、怪獣の対処法、女声の重要度が、本巻では薄まり、女声と怪獣の行動との因果関係の説明が不十分で分かりづらい描写が複数あり、少女の素質や才能の開花、人知れぬ努力など、怪獣が苦手な少女の成長物語として読むのは難しく、主人公が能動的に行動する場面が少ないのが最大の欠点だ。
女子校を舞台にし、男っ気が作中にほとんどない弊害であろう、あえて男の趣味の領域に女子を登場させた長所が、極端に言えば、絵柄の可愛らしさ以外にはなく、老人や年配の男性の表情は、乙女の笑顔に比べて見劣りし、作画に雲泥の差がある。
怪獣に興味を抱き、憧れ、畏怖し、研究者として、役人として、関わりを持ち続ける道を夢見る男の子が登場しない寂しさ、怪獣に寄せる男ならではの情熱の欠如が、いやが上にも意識され、ほぼ女の子だけの世界の不毛さを感じてしまうのは、欲張りであろうか。
欲張りなのかもしれない。
冒頭と番外編で披露される飼育委員長の水着姿の肉付きの良さは予想外で、着痩せするタイプであった事に、驚き、妙な親近感を抱く読者も多いのではないか。最後には懐古趣味的乙女の世界に案内してくれる新たな飼育委員が、怪獣との共存共栄が紆余曲折を経ながらも着実に進みつつある世代の一員として登場するのも見逃せない。
怪獣図鑑と銘打つにしては収載数が少なすぎるが、怪獣の生態が完全に解明されていない世界における、部外者に閲覧が許された報告書の一部として、割り切って読むのが妥当である。
深海少女 1 (月刊少年マガジン)
2016/02/09 23:02
潮の滴る娘の体
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何の前触れもなく、深海に棲息する生き物に因んだ特殊能力を発動する女の子に振り回される、その子に思いを寄せる男の子の初恋は、成就するのか予断を許さないが、当の本人はその状況を楽しみ、浮かれて、目も当てられない。
冒頭の数話は説明的で繰り返しが目立つが、後半は話が進み、登場人物も急増し、恋の鞘当てが展開される。その都度、深海生物の豆知識と特技や特徴の解説が挿まれる構成は、差し当たって、目新しいとは言い難く、取り上げられる生物もマスコミで頻繁に見聞きするものばかりで、能力を発動した少女のデフォルメされた姿と行動が全て大笑いできるものとは限らないのが、評価を下げる要因である。
一話当たりの分量と収録話数、総ページ数が少ないのも、物足りなさを招く一因だが、決して読みにくい画面ではなく、恋愛一辺倒ではない中身と、変わった女の子の生態に寛容な読者は、変態する女子高生の不器用な物腰を楽しんでもらいたい。
幼馴染の家での入浴やお風呂上りの二人だけの一時を過ごす、などと書くと、甘美な官能的な展開が脳裏に浮かぶが、本作ではギャグが大半を占め、中々、二人の恋は進展しないが、それなりに良い雰囲気が醸し出され、読後感は悪くはない。
人類に残された地球上の未知の領域、最後のフロンティア、謎の多い深海ならではの登場人物と設定が、二人の将来に暗い影を落とし、身も心も変質した分類不可能の存在に愛を告げられるのか、その存在を受け入れられるのか、相手も自分を受け入れてくれるのか、思春期の少年の悩みは尽きず、成り行きを温かく見守りたい。
ジモトがジャパン 6 (ジャンプコミックス)
2020/05/26 17:38
清正の大事業
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日ノ本ジャパンは風変わりな拳法の修行者である。彼は、断じて、アマチュアの観光ガイドではない。ある戦いにおける彼の勇姿が、それを証明する。敵が繰り出す凶器を、必死に、避け続け、反撃の機会を窺う彼は、紛れもなく、武芸者だ。
この戦いにおいては、津々浦中学の都道府拳部の他の部員も、異郷で、事切れそうだ。
日ノ本ジャパンに師匠はいるのか。
この疑問の答えは、最終巻で明かされる。
これ以外の日ノ本ジャパンの謎についても、本巻で、解き明かされる。
本編の内容を端折り、番外編や四コマ漫画で補完した部分があるとは言え、全四十七都道府県の話題に言及した本作は、曲がりなりにも、第六巻で完結する。
湯瀬こまちとの別れを、読者は、過度に、悲しむべきではない。
テラちゃんに、また、会える。
ヒデと名乗る狂人とも、親しくなれる。
山口県の事にも詳しくなれる。
そして、和菓子の中毒性についても、理解を深められる。
ジモトがジャパン 5 (ジャンプコミックス)
2020/02/10 23:50
梅雨のココア
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掲載誌の変更に伴い、単行本の収録内容にも若干の変化が生じ、「ジモトがジャパン」の本編だけではなく、多くの四コマや番外編、作者のデビュー作等が、幕の内弁当の中身の様に、区分けされた状態で、一冊の単行本の中に詰め込まれている。
そして、第一巻から併録されていた「地球人間テラちゃん」は本巻で最終回を迎える。
ジャパンの名声は日本全土に広まった。
他校との交流の機会が増えた事により、日ノ本ジャパンのライバルが増えたので、津々浦中学校の都道府拳部の部員は、ジャパンだけでは太刀打ち出来ない相手とも、死に物狂いで、関わらなくてはならない。
津々浦中学校の教師や関係者には常軌を逸した者が多い。
偏狭な彼らから薫陶を受けた秋田美人の湯瀬こまちは、本人の資質に負う所が多分にあるとは言え、他人から見ると既に常人とは認めがたく、ジャパンの為であれば、彼女は日陰者になりかねない手段を講じる事を躊躇しない。
日和見主義者と見分けが付かないヒデは、他の部員とは別行動する事が間々あり、安全な場所から、事態の推移を見守り、逐一、状況を解説する。
地方の出身者を、田舎者だ、と馬鹿にするシティーボーイの益荒男は、都道府拳部の部員ではないものの、ジャパン等と行動を共にする事が多々あり、津々浦中学校の都道府拳部のオブザーバーの役割を担っている、と言っても過言ではない。
こまちに恋して失恋した益荒男が、旅先で出会う、別の美少女の存在が、梅雨の晴れ間の到来を左右する。
ジモトがジャパン 4 (ジャンプコミックス)
2019/10/06 22:38
まほろばの巡検
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修学旅行で関西方面に旅立った日ノ本ジャパンは、京都で全国各地の修学旅行生に絡まれ、多勢に無勢の状況下で、都道府拳の奥義を用いて、我孫子時生と共に喧嘩に勝った後、その日の宿泊先のある奈良へ移動した。
最終日は大阪の観光である。
第四巻では、西日本の名所や名産、祭、地場産品などが多く、採り上げられるので、東日本の各地の情報が不足しているが、それを補って余りあるのが、東日本の各団体や企業による充実したPR広告である。
更に、山形県の出身者である時生の妹も本編に登場し、宮城県のあれこれが取り沙汰されるので、東日本に在住する日本国民の意向が蔑ろにされている訳ではない。ジャパンに惚れている湯瀬こまちも秋田の出身だ。
こまちは都道府拳の才能の持ち主だが、都道府拳部の部員ではない。
都道府拳部は変人の集まりだ。
部長のジャパンも、部員の時生も、ヒデも、中学二年生となった。
類は友を呼ぶのか、都道府拳部に関わる人間は、変質者が大半である。
単行本には、おまけとして、各キャラクターのプロフィールが載せられているが、そこには不審者についての情報も詳しく記されており、本編では描かれなかった各人物の未来についても読者は知る事が出来る。
都道府拳部に入部する新入生はいるのだろうか。
月色のインベーダー 1 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
2019/07/28 10:28
手作りのマドレーヌ
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観光以外の目的で地球を訪れる生命体が、少なからず、存在する。寄生虫のように人体内に潜り込める危険な種族の宿主となった人間の身体には数々の変化が認められるものの、宿主にもメリットがあるので、後先を考えずに、それを駆除すべきではない。
高校生の辰ヶ谷朔馬は、海辺で、この種の生命体と出会い、秘かに、それと交流し、地球での生活をサポートする。
朔馬は、他の地球外の生命体とも、顔見知り程度の間柄ではあるが、相手の弱点を把握しているので、自身の生命が危険に曝される事は無い。
夏休みが終わると、クラスメイトの水望月呼の髪の色が変わり、その言動は様変わりする。
朔馬は月呼のことが好きだが、まだ告白してはいない。
朔馬も月呼も天文部員である。
朔馬の幼馴染の日南は、学校で起こる怪奇現象に興味を抱き、朔馬と一緒に調査を開始する。
日南は高飛車で、朔馬を意のままに操るが、朔馬の事を嫌っている訳ではない。
朔馬には、暴力的で高慢な姉がいる。
どうやら、朔馬の顔には女難の相が出ているようだ。
その災いに見合うとは言えないが、女の子に振り回されて、朔馬は、多少、良い目にも遭っている。
ジモトがジャパン 3 (ジャンプコミックス)
2019/06/08 17:08
新生内国博覧会
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シティーボーイの益荒男が地方の在住者に対して暴虐の限りを尽くすので、日ノ本ジャパンが率いる都道府拳部の部員は、休む暇がない。
益荒男以外にもジャパンに楯突く輩がいて、津々浦中学校の修学旅行先の京都では、清水寺の舞台の下で、腕に覚えのある者同士よる大乱闘が発生する。
ジャパンの右腕となった時生は、多勢に無勢の状況下で、満身創痍の状態で、荒くれ者と戦う。
ヒデは実況及び解説を自任して、高みの見物である。
ジャパンは戦地で仲間を置き去りするような男ではなく、都道府拳部の部長の務めを果たすべく、京都の地の利を活かした戦術を駆使して、勝機を探る。
京都におけるジャパンの戦い方は、都道府拳部の活動の成果の一部を反映したものだが、戦いに明け暮れるのが都道府拳の使い手の本分ではない。
悩める民を救う事も出来るのが、他の拳法に勝る都道府拳の利点である。
故に、ジャパンに惚れる者が現れたとしても、不思議ではない。
秋田の美少女である湯瀬こまちは、バレンタインデーに、手作りのチョコレートをジャパンに渡したいのだが、謎の寒波の到来によって、チョコレートを完成させられない。
悩める少女を救うのは、ジャパンではなく、長野県出身のパティシエールだ。
こまちはジャパンにチョコレートを渡せたのだろうか。
ジモトがジャパン 2 (ジャンプコミックス)
2019/04/07 15:41
日本男児の心意気
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
湯瀬こまちがいなければ、本作の連載は早々に打ち切られていたかもしれない。
彼女は秋田県の出身者である。
不良やシティーボーイを魅了する、その美貌と佇まいが見られなければ、ご当地ネタに関心のある読者でも、痺れを切らした筈である。
主人公の日ノ本ジャパンは粗野な男ではないものの、作中にはヤンキーが多く登場し、人物や背景が荒いタッチで描かれているので、読者がジャパンの事を誤解している可能性が高いが、本作はギャグ漫画であり、ジャパンは好人物だ。
ジャパンの周囲では超常現象が頻発し、神様も恐竜も出現するが、彼の力によって、事態は丸く収まる。
事件が完全に解決しない時もあるが、何とかなる。
本作は、読者の数だけ、見所が挙げられる、懐の深い作品だ。
第二巻では、前巻よりも登場人物が増えて、マスコットキャラクターも定着したので、ストーリー性が増し、作中で採り上げられる各地の名産や欄外の広告の質も安定し、たとえ読書中に一度も笑えなくても、読み応えのある内容であり、面白くなくても雑談のネタが見付かるので、単行本を購入した読者の損得勘定の収支はプラスとなる。
また、写真でしか登場しない、転校生の時生の妹も可愛らしく、同時収録された話のヒロインのテラちゃんもそこそこの器量の持ち主だ。
幕間には、ラフスケッチや各地の投稿者から齎された耳寄りな情報が載せられており、それらには作者や編集者のコメントが付されている。
小さな恋のやおよろず 2 (アフタヌーン)
2018/12/29 13:42
遠山の八重さん
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第一巻に登場した神々は、主に植物に由来する存在であったが、第二巻で新たに登場する神々の本性は、その多くが動物である。本作に登場する神々は、いずれも人間的であり、人間を恋敵とみなして敵視したり、街中で騒動を惹き起こして器物を損壊する。
しかし、最終話までの各話の展開は、波乱万丈とは言えず、刺激的な内容でもなく、一話当たり八頁という頁数に見合う程度に読み流せる作品であるので、全二巻で完結しても、多数の読者に惜しまれつつ、とは考えにくいが、そうであってほしい。
それでも、エピローグは秀逸だ。
人間の虎之助と桜の神の八重との同居生活が、どのように推移したかについて、最後に事細かく描かれているわけではないものの、二人の暮らしは劇的であった、と思わせられる。
エピローグの主役は、虎之助ではない。
それは桜吹雪の発生源についての考察である。
遊んで!まんがのお兄さん 1 (電撃コミックスNEXT)
2016/06/08 17:15
お兄さんの特権
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漫画家の男子高校生が仕事中に小学生の妹とその友達二人のお絵かきに付き合わされる話で、三人の少女が喧しく、仕事が手につかない男の子の、贅沢な日常の記録である。
妹の上着が破れたり、ブルマを貰ったり、水着姿の少女をデッサンしたり、毎回、ちょっとしたハプニングが起こるが、大した事はなく、三人の高学年の少女が、足繁く、お兄さんの仕事場に通う。
そこは仕事柄、いかがわしい品々が資料として所狭しと放置された、おませな女の子の性的な好奇心を刺激する悪所である。
お世辞にも、一流漫画家の卵とは言えないお兄さんの焦り、葛藤を見透かした上で、結果的に仕事の邪魔をして怒られる少女が受けるお仕置きは、当然の事ながら、悪所に相応しく、服の上から分かる足の付け根や襟首から胸元が見える程度の女子児童の色気の描写も含めて、そこはかとなく淫靡な雰囲気が漂うのだ。
或る作中人物はこのように評している、「天国は実在した。」と。