いほさんのレビュー一覧
投稿者:いほ
資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか
2023/09/21 09:04
人喰い/共喰い/自喰い 資本主義
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
原題 Cannibal Capitalism です。
わかりやすい(刺激=キワモノ感の少ない)邦題にしたのも、新書=低価格設定にしたのも、出版者の好判断だと思います。訳出までの時間も短い(1年経っていない)。
解説で白井さんも書いている通り、包括的で、良い意味で図式的で、きわめてわかりやすいです。
「資本主義」を拒絶し、何に憚ることもなく「社会主義」へ!!
直球ど真ん中の主張が、胸を打ちます。
カササギ殺人事件 上
2018/10/29 16:45
おもしろいです。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
他のレヴュアの方も言ってますが、なるべくいろんな情報を見ないで、読み始めた方がいいです。といっても、私はレヴューしてしまっているし、これ読んでる人は、その時点で、すでに「いろいろな情報を見て」しまっているわけですが。
翻訳で上下二分冊になっているのは、オリジナル英語版とくらべても、「效果」大、です(より楽しめます)。
上巻を(アプリで)立ち読みして、作者名の違う内扉の存在が気になったら、即、上下揃えて、買いです。そういうややこしい構成がみごとにハマった作品です。
田舎
2021/07/16 10:16
フィクションです
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
夢オチも、幽霊オチも、わざわざ否定して(その過程で中○特定もして)、かならず「どくんどくん」で、あとがきに「いろいろ都合よくできてます、現実と混同してはいけません」って、、、「ご都合主義ですが、ナニかモンダイでも?」ははは、ありません、だって「マンガ」だもの!
すがすがしい、自由なフィクションです。
マルクスの経済理論 MEGA版『資本論』の可能性
2023/09/13 18:05
「マルクス」を剔出
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
久留間鮫蔵ー大谷 禎之介直系で、(おそらく自他ともに認めるであろう)大谷先生の秘蔵っ子といった感じの著者(1983生)です。MEGAに基づいて現行版をクリティックし、かつ(最近よくある)資本論第1部出版後の「研究ノート」を過大視することもなく、その名のままに「マルクスの経済理論」を剔出しています。まさに「あまたある、いわゆるマルクス主義」から「マルクス」を剔出した、といった感じです。
個人的には、資本論第2部のいわゆる「再生産表式論」が何のためにあるのかよくわからなかったのが、この本でよくわかって、ありがたかったです。マルクスは「ほら、これで万事快調!」と示したかったのではなく、「これでは絶対うまくいかない」と言いたかった、と。ローザ・ルクセンブルクの「外」や、レーニンの「帝国」に依るまでもなく、「内」で、はなから壊れている、と。うまくいかないのは「利潤率の傾向的低下法則」が貫徹するから、です(←あくまでも個人の読みです)。
もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理
2022/11/17 11:19
新訳
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
フェミニズム/ケアの論理・倫理分野の古典の新訳増補版。
誉褒(正義とは別のケアの倫理をはじめて掬い上げた!)毀貶(本質主義だ!)のある本で、いろんなところで参照文献になっているんですが、日本語現物が手に入らない状態でした。増補は1993年と2022年の日付のある「読者へのお手紙」が含まれています。2022年の「日本の皆さまへ」では、本質主義批判に応じています。なにしろ四十五年前には「女は、、」という書き方以外取れなかった、と。今なら言える「もうひとつの声は人間の声」だ、と。
なによりも、新訳タイトル「もうひとつの声で」の「で」が大事だとおもいます。 原題 ”IN A DIFFERENT VOICE” です。
エクリチュールと差異 改訳版
2022/08/18 10:05
単独訳者による新訳です
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
リアル本屋で購入読了。
前回「新訳」も、とても新鮮な印象を持ちましたが、今回「改訳版」は、実質(普通の意味で)「新訳」=今日の日本語におけるデリダ受容状況への全面依存訳、と言っていいいです(何だか偉そうで恐縮至極です)。新新完訳、そう言えない諸々出版社や訳者間力学??や、何やかやは知りませんが、前回「新鮮さ」を齎した(と、私は思う)訳者による単独全訳です。前回の谷口担当部もさらに改訂されています。
冒頭「力と意味作用」出だし、
2013新訳
「構造主義的氾濫は、いつかそれがわれわれの文明のいくつもの岸辺にその作品群や記号を打ち上げながら退いていくことがあれば、、」
2022改訳版
「もしいつかある日その作品と記号の数々をわれわれの文明の浜辺に残して退いていくことにでもなれば、構造主義の襲来は、、」
単純に、未来完了形(「にでもなれば」)や、複数形の扱い(「の数々」、浜辺については無視)に、こなれた感を覚えます。こういった例は読むとすぐ目につきます。もちろん、「動詞の時制に留意」「この名詞は複数形であることに留意」というような、これまでの訳者たちの「訳注」による読者教育の賜物であることは理解・感謝しつつではありますが、とても読みやすいと感じます。
DJヒロヒト
2024/03/11 13:04
オビにある人名
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
の内でも、濃淡があって、記述が厚いのは
金子文子(作中はフミコ)もう一人のフミコ(あとタイコ←会話内だけですが)と遭遇したり、あるフランス人女性の名前を不正確に呟くところは感動的です。
古山高麗雄(←読めますか?)普通に思いつく大岡昇平や武田泰淳より厚い。
中島敦と城田すず子(仮名)(作中はMY、オビに名前なし)二人を結びつけるのはなかなかの奇想です、中島敦っていろいろカフカっぽい。
名人芸的な固有名の連なりが面白かったです。クマグスとナウシカとか、ユウジンくんとか。
フーコー・ドゥルーズ・デリダ
2023/01/04 20:51
別だん で、はじまります。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
1978年初版(朝日出版社)、1995年文庫(河出文庫)か。。
もちろん(何がもちろんかはともかく)、1978はリアルタイムでは読んでなく、その後、あの妙に薄くてでかい版の、縄で十字に縛ってあるような装丁だった??を手にして読んで、ページレイアウトも含めて、衝撃を受けた世代です。最初の一言が、名高い「とりあえず」ですらなく、「別だん」(←漢字かなが変だろ、後藤明生の「実さい」みたい)なのを確認できました。ありがたい。
郷原さんが解説ですが、だいぶ苦しげです。郷原と松浦寿輝(河出の解説)をニヤニヤ見てる感のハスミ圧勝的な「あとがき」があります。必読です。この人、最後まで圧勝ポジションなんだろうなぁ。
誰だったら、と考えて、フーコー関連は色々いらっしゃるし、ドゥルーズ関連は鹿野堀廣瀬、、がいらっしゃるし(「差異と反復」で鹿野黙っちゃいないだろ的な)、デリダ関連はダレだろ(「戦争」って言ってるヒト、誰だっけ?)、何にせよ、おもしろがれるヒトを選んで、ぶっちゃけ放談的な解説だったら、よりよかったのに。鹿野と堀と廣瀬で、全然ダメっすね!とか言ってるのを妄想します。堀さんは「マゾッホとサド」を、エイっと「ザッヘル=マゾッホ紹介」に(正当に)改めちゃったヒトですし。講談社文芸文庫の初の再改訂とか、ないですかねぇ。
いや、真面目な話?、この文庫1800円は安い、そのうち電子も出るんだろうけど、リアルの本を手に入れることを強くお勧めします。全般に講談社文芸文庫リアルの装丁をリスペクトしています。
オビの“奇書にして比類なき名著”のとおり、この固有名詞三つ並べた類書など、その後では想像すらできません。1978年当時、この3人が絶対的だったというわけでもないし(その後の推移は「絶対的」だったわけですが、という意味で、予言の書でもある、この順番で死んだし)、というか、本書が「日本におけるフランス現代思想の系譜」を決めた気もする、宮川淳「鏡空間イマージュ」とか、とともに。奇書にして名著にして、エポックです。
絵葉書 ソクラテスからフロイトへ、そしてその彼方 1
2022/12/25 18:13
2 がでる(20221225)! この叢書
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ごめんなさい。でます。
この叢書は「忘れた頃に」がよくあるんですが(クラストルとか)、
2 は出るのか?
色々あるんだろうけど。「届かない」って感じですかね。
カウンターセックス宣言
2022/11/14 16:04
ディルド
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ディルドを「アレの代理/紛い物のアレ」と見る方こそ、「ファロス中心主義」だと、、なるほど。たしかに、ディルドは、やっかいなものは出てこないし、アレと違って綺麗で長持ちだし。。D.ハラウェイのサイボーグが肯定できる人は、これもぜひ。C.マラブーのクリトリス論も併読すると、結局シスジェンダー男性(私はそうです)が一番つまらない気がしてきます。ケツの穴使う勇気もないし。。
ちなみに、目次の「バトラーのバイブレータ」にびっくりする人に(わたしはびっくり興味津々でしたが)。これはあの人ではありません、念の為。ネタバレかしら?
性と芸術
2022/08/25 20:41
「犬」には、おっきしない
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サドを読んで、おっきするオトコノヒトはあんまりいないと思いますが(サド本人もおそらくしていないんですが、逆に、なんらか「教育」されてしまったオトコノ/オンナノヒトは今日の日本その他にたくさんいるのでしょうが)、
「犬」を観て、おっきするオトコノヒトもあんまりいなかったと思います。少なくとも会田誠本人はおっきしてなかったし、今もしないでしょう。「犬」は、おっきする/しないとは別方面について、確信犯的に狙いを定めて逆撫でするという、明確な意図を持った作品である、これが30年前の発表当時の共通の理解だったと、わたしは思います。花子も美味ちゃんもジューサーも切腹も、、、大きく見れば同様のコンテクストです。
(なお、本書のなかには、花子はその諸々のコンテクストの凝集度の高さから、もっと多方面で「炎上」してもいいはずなのに、なんで「犬」ばっかし、、と本人は考えている、というような箇所があります(こんな風には書いてませんが)。やはり、むつかしすぎて、多くのヒトには観えないのかもしれません。花子は、あたかも「漫画生原稿」のような(しかもISBN取得済みの出版物で狙い通りに絶版という)アプロプリエーション(盗用)なので読めないヒトも多いし、逆に「犬」のアイコニックな力(一目でナニ描いているかわかるし、なんか本気っぽい)を示す事態でもあると思います。花子はどうみてもクソエロマンガで、本気っぽく無い、に「見えます」。文句なしに芸術ですけど。)
が、なんだか、おっきする・してしかるべきと自動的に考えるヒト(「教育」の賜物ですね)が増えて(批判排斥するヒトも同様におっきしているわけです)、「あーめんどくさい、一回だけ言うとくわ、もぅ二度とせーへんで」と、書かれたのが、本書の1です。「犬」とは、当時大学院生の会田誠が、知的・戦略的・超絶技巧的に、決然と、以降現代美術家として生きていくという自覚を持って描いた、高度にコンセプチュアルでコンテクスチュアルな実質デビュー作である、このことが「啓蒙的(本人は嫌がるであろう形容ですが)」に「解説」されています。美術家による言葉によらないクリティック(絵画作品)を、当の美術家が言葉で「解説」する、これを当の美術家も「悪趣味」であると十分自覚している、この苦々しさのようなものが本書1の特徴だと思います。こんなものを書かせてしまった2022年現在の(視覚)文化の状況に暗いものを感じます(えらそうですいません)。会田誠はもう二度とは書かないだろうし、こちらも期待してはいけないと、強く思います。
続く本書の11は、おっきする/しないをめぐる、一見素朴な告白のように見えますが、この人が素朴なはずはありません。「それでも「犬 その他」は、おっきする/しないをめぐる(かのような)表象・意匠をもたねばならなかったのか?」についての考えが開陳されます。うえの「教育」への自己言及(自己をひとつの同時代のサンプルに見立てる)=「時代の証言」的な性格もあり、表象文化論的?・現代芸術論的?な重要度は、こちらのほうが上かもしれません。会田誠はポルノを全く否定しません(味方する)が、自分の作品はポルノではなく芸術であることも、きっぱりと肯定します。上下はまったくないが、別物である、と。
なんだかすこし腐すような文章になってしまいましたが、本書は内容自体は大変面白く(同時代のヒトには特に)、知的満足度も異常に高く、現代芸術/美術を語る上での必読書となっていることは、間違いないと思います。なにしろ、いわゆる「本人談(書ですが)」ですし(笑)。
カササギ殺人事件 下
2018/10/31 12:03
見事な翻訳
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
少なくとも、6つの違う文体・叙述を訳し分ける必要があるわけです。羅列するとネタバレになるのでしませんが。でっち上げた作者も、訳し分けた翻訳者もすごいと思います。
作中で「駄作」だと断言されている小説草稿の文体・叙述がけっこう面白く、ちょっと「悪魔の詩」とか「族長の秋」とかっぽくて、「駄作」はかわいそうではと、虚構内の小説家に同情してしまいました。実は、出るとこから出れば、ノーベル賞級だったのかも?とか。
大江健三郎論 怪物作家の「本当ノ事」
2024/03/06 21:04
あっちではない大江健三郎
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
Amazo から転載
大江の「こっち側」を救う/掬う論として、愉しい。
ずっと、あっちの大江健三郎って違うくない、って思ってて、結構こっちが当たり前と思ってて、なんか、そうじゃなくなって。。
無責任なセクス、ゲイ、ロリ、キンシンソーカン、アナル、スカトロ、オージー(○P)、痴漢、レイプ、輪姦、獣姦、、など。ケツの穴 と 屁 が好きだよなぁ。著者が「飼育」のあのシーンを絶賛してるのに同意します。
教科書には載せられない、AVのジャンル一覧みたいな、「ノーベル賞作家の小説」。レイン・ツリーのペニーさんは「NTR」だし、猪之口さんは、「痴女」ものでしょうか(の後「鬼畜無惨絶望」系)?
あらゆる差別(表象)への、ある種の嗜好(偏愛)。
黒人(非白人)、チョーセン、ブラク、キョージン、ショーガイ、オキナワ、アイヌ、サンカ、ヒバクシャ、オンナ、シューキョー、イナカモノ、、と 天皇 。
セブンティーンの彼は「純粋天皇の胎水(漢字違う気がする)しぶく」で、「被征服民族の娘の頬に、、」だったっけ。「娘」だもんなぁ。(自選短編集は結構びっくり!いいのか?あれで?「トルコ→ソープ」のレベルぢゃなくて、さぁ)
これを書きながら(タイプしながら)、初めてローマ字漢字カナ変換した単語が多い(一応当たり前、こちとら常識的平凡な日常生活者だし)、蓮實の大江論の出だしを思い出しました。ちなみに、大江手書き原稿校正ゲラなどのとんでもない異常さを写真で見せてくれます。これからいろいろ出てくるだろうけど、まずは必見。
というわけで、だから、 怪物 作家だと。得心です。大江って「読んでることがまわりバレてはいけない作家」だった、でしょう?
追記というか強調として、
だから、大江は、素晴らしい、特異な、「戦後日本「民主主義」という(「フツーの日本的」ではない」突出した作家であり、かろうじて三島が唯一対抗しうる(著者のご意見とは反対かも)、怪物である。と、思っています。なんか、ことごとく「反対」に取られそうなので、蛇足です。
マルクス資本論第3巻
2024/03/01 13:43
なんか感動しちゃった。
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資本論第三巻の最後の章題は「諸収入とその源泉」。。
ふーん、、って感じですが、
佐々木さんの再構成によって、
名高い(宇野弘蔵が激しく嫌った悪名高い)第一巻第二四章第七節をさらにスケールアップした怒涛のグランドフィナーレが姿を表します。
かなりリーダブルな解説に助けられながらも、苦労して読み進めていくと、最後に、感動します。
マルクス解体 プロメテウスの夢とその先
2023/11/15 10:58
内容は五つ星ですが
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註がかなりおかしい、あきらかなペーストミスや誤変換がある。まともな校正をとっていないようです。編集が仕事をしていないなぁ、と感じました。
正誤表が入ってました。失礼しました。全部じゃないようですけど。
内容について追記
1番のポイントは第二部「生産力批判」です。ジェイソン・ムーア(生命の網の中の、、)やブリュノ・ラトゥール(ANT)、ラグジュアリーなひとたちへの批判ですが、ここで「脱成長」の必然性が示されています。キーワードは「協業/資本のもとへの労働の実質的包摂」です。ラグジュアリーなひとたちに対する斉藤さんの「きらいじゃないんだけど感」がちょっとおもしろかったです。