りらさんのレビュー一覧
投稿者:りら
人新世の「資本論」
2023/03/04 14:37
難しかったけど、現代を生きるのに必読。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
マルクスの膨大なメモなども含めて整理し、著書という形には残っていないものの、最晩年にどういう考えに行きついたのかを丁寧に説明される。
そして、その考えを現代の環境問題解決に活かす拠り所として、議論する。
確かに、特にこの15年ほどの社会変化は速すぎるし、格差も広がるばかりで、各国とも内向き志向になりがちなのも気になっていた。
それらがなぜなのかこの本を読んで理解できた。
全部繋がっているのだな。
うっすらとは感じていたものの、これほどまでに大きなうねりのようになってしまうと、何とか自分たちだけは、という思考になりがちだが、地球全体を考えた時に、それではいけないのだと痛感する。
コモンを自分たちの目の届く範囲で共有・管理し、自分たちの責任で生きられる社会をつくっていくことが大事なのだと読んだ。
前提の話から始まって、なぜ現代の資本主義では将来地球環境が崩壊の危機にあるのかを丁寧に説き、マルクスの晩年の考えを活かせば解決の可能性はあるとつなげる。
それを説明するために、これまで知られているマルクスの思想からの発展形を紹介しする。
この説明にすごく注力したのが伝わってくる熱の入りよう。
そして、脱成長コミュニズムという策を提示する。
すでにこの道を進んでいる例も紹介し、決して無理な話ではないことを示す。
論旨は明確で、一貫した説明には感動した。
難しい内容だけれども、独特の用語は噛み砕いた説明もあり、一般読者向けに工夫されていた。
新書にしては分厚く、内容も濃い。
この本をまとめるにあたって、膨大な資料にあたり、最新の内容になるようチェックもされていたことが註からもうかがえ、すごい人だなと思う。
じっくり時間をかけて味わう本だと思う。
あと、この本に書かれていることを実現するには、教育が欠かせないと思った。
人の倫理観についても考えさせられた。
高校生くらいの必読書にしたらいいと思う。
2024/09/23 11:04
どのことばもしみる
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1ページに一つのテーマでいろいろなことばが書かれている。
同じような言葉もあるが、大事だから何回も表現を変えて書かれているのdろう。
納得できるものばかり。
手元に置いて、時々見れば、自分の中に徐々に入っていってへんかしていったり、落ち着いたりできるのかなと思う。
親への要求ばかりでなく、大変な子育てを頑張る親への労いにあふれていてしみるし、泣ける。
図書館約1年待ちだった。
みんな悩んでいるし、こころを救われたいと思っているんだなと。
そういうひとがいっぱいいるというのは、本当の意味で助け合えていないということんだろう。
人間はたくさんいるのに、寂しいなと思う。
声優、東大に行く 仕事をしながら独学で合格した2年間の勉強術
2024/08/04 13:09
未来の自分を信じない
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興味の赴くままに学び続け、英語を極め、東大法学部を卒業する。
それもきっと通過点でしかないのだろうと思う。
学ぶにあたっては、いろんな資料を集め、読み解き、理解し、関係性を考え、自分なりの推論から結論を見出す形でされているのだろうが、こと試験対策にあたっては、合格するためと割り切って、そのための近道を考え、実践する。
それも、自分なりの考えがあってこそ。
授業を受けてそれなりの成績を上げて、卒業見込みでないと大学受験できない高校生とは違う、社会人ならではの方法もある。
これもまた、知識と経験が結晶化するということだろう。
それに、社会人は自分のお金や時間も自由度が高いし。
親はガチャガチャ言わんし。
受験勉強で使用した本の紹介や勉強法が紹介されている。
特に、試験対策勉強法は他の試験対策にも参考になる。
私も資格試験の勉強を頑張ろうかという気になった。
この本の素敵なところは、これらの過去問などをどのくらいの時間をかけて何回やったかを書いていないところ。
人によって違うのに、それを目安にする人って結構いる。
なんぼほどやったって、いっこも理解せず、覚えてもなければ、合格しませんからね。
知識と経験が結晶化する。
社会人にこそ響く言葉。
私も社会人になってから大学院に行ったので、すごく共感できる。
事情があって後期課程には進まなかったが、事情がなくてもあと3年研究を続けるのは仕事をしながらでは無理だったかもしれない。
それほど過酷だったけれども、得るものは大きかった。
普通に大学出て就職しないで院に上がっていても、そこまでがっつり勉強して今と同じくらいのものが得られたかというとそれはないと思う。
やはり社会人になって組織の中での体験、大学院での社会人同級生からの見聞、先生のご指導、読んだ本から得たもの等があってのひらめき、気づきは確かにあった。
この経験がどこかで活かせたらなと思いつつ、新しい知見も得たい。
博士号を取ろうとまではもう思っていないが、人間、興味のあることは変化していっても、そこへの探究心は治まらんもんですな。
読み物としても、自分を客観視してぶれない考え方が素敵だと思う。
未来の自分を信じないって一瞬え?!って思うけど、よく読めば納得できる。
中学生くらいから読めるかな。
庭
2024/05/06 10:53
三部作の中で一番好き
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いじめを機に不登校になってしまった真奈。
春休み、祖母が暮らすハワイに行く。
そこでの暮らし、人との関わり、庭の世話、花への興味、自然の偉大さと人間の小ささへの気づきなどを通して、自分本来の姿を取り戻すと共に、さらにひとをゆるし、あるがままを受け入れていく強ささえも備えて、成長していく物語。
ステップファミリーが普通に登場するが、この本では断然、日本のお父さんの存在が良い。
家族の絆は血だけではないと希望を持つことができる。
勿論、血縁もそこに登場するいろいろな人たちの物語があってこその自分であるから、重要ではあるが。
この本は各章がさらに細かく6個の節で構成され、メール文や聞き書きの部分等あって、読みやすい構成になっており、それも今の若い人にはさくっと読めるのではないかと思った。
レーエンデ国物語 1
2024/05/05 22:11
御子の誕生
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ユリアは聖母マリアモチーフに描いているのかもしれないと思った。
その産んだこどもを巡って争いが起こり、レーエンデに都が移されることになるのだな。
図書館の予約の関係で先に二作目を読んでいたので、少し物語がつながった。
トリスタン。
シュライヴァ親子娘に出会えて、人生というか人としての在り方そのものが変わったな。
今の自分達ではどうにもできないということがわかっていても、未来を信じて、互いを想って、前に進むのは、それはそれで勇気の要ることではある。
それでも、厳しい現実の中で、確かに生きている。
分厚い本だが、読み始めたら止まらない。
筆力がすごい。
めぐり逢いサンドイッチ
2023/08/14 09:12
人への視線が優しい短編集
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姉妹で営むサンドイッチ店を基点に、過去の出来事からこころの中にもやもやを抱えたひととの出逢い、いくつかの会話を通じてそっと寄り添い、その思いも包んで、サンドイッチにして昇華させていく。
その過程にある、こころの動きを細やかに丁寧に描いている。
そういうことごとを通じて、姉妹それぞれの気持ちも解きほぐされていく。
誰に対しても優しい視点で、いろんなひととの絆を感じさせる。
柔らかい気持ちになる。
この方のお話はひとのこころの動きを独りよがりでなく、とても繊細に、大切に描かれているところが近年特に良いと思う。
古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで
2023/04/23 16:10
とてつもない量の資料をまとめたもの
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豊富な図説と脚注。
ついつい引用元は何なのか巻末を見てしまい、なかなか集中して読み進めないのが難点。(これは私の本の読み方の癖の問題)
堅苦しくない文体で、早朝から深夜までの人々の一日の様子を描写。
小話的なものもあり、面白かった。
人々の話し声、息遣いまでもが聞こえてきそうな、ワクワクする本。
10年を費やして読み込んだ資料を設定したテーマに沿ってまとめ直すのは、いくらパソコンで資料管理が昔に比べて楽になったといえども、膨大な気力とエネルギーを要したと思われ、その仕事に対する熱に感動しかない。
巻末にもあるように、時代や階級などによる違いにまでは及んでいないところもあり、そこが私も読んでいてもやっとしたところであったが、今後そうした部分も精査していかれるよう。
ともあれ、一区切りとしては十分すぎるほど堪能できる読み応えのある本。
僕は、そして僕たちはどう生きるか
2022/07/14 23:18
人が生きていく上で大切なことが得られる
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コペルくんのある一日の出来事を通じて、人が生きていく上で大切な気づきをいくつか得る過程の物語。
人は一人では生きていけないけれど、だからといって、大多数が正しいのかといえばそうではないこともある。
そうとわかっていても、流されたり、のまれたり、あるいは判断するための情報が足りずに巻き込まれたり…。
集団の中にあっても、自分の頭で考え、判断するためには、静かな心を保てる場も大事だ。
そういうことを他人に対しても配慮できることも大事。
ほかにも色々示唆に富む。
今どきの中学生以上の若い人に繰り返し読んでもらいたい本だと思った。
ひと
2022/01/02 22:21
ひととの関わりを考える
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人に譲ることをさほどこだわりなくしてしまえる主人公。でも、いろんな人との関わりの中で、絶対に譲れないものを見出した。その過程が丁寧に描かれている。
それと、人は一人で生きてるわけじゃないってことも。
2024/11/05 22:58
おとなの上質な絵本
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物語自体は小学生でも理解できるだろうが、この質感は寧ろ大人の方がじっくり味わえるように思う。
優しいタッチと色遣いの絵が素敵。
猫好きな人にはたまらんだろうが、そうでない人でも大人の童話として楽しめるのではないか。
猫に優しいだけでなく、人にも優しいひとであってほしい。
2024/11/02 09:47
カッコつけてないエッセイ
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文章のリズム感とか言葉の選び方とかが素敵だ。
あまり勉強は得意ではないと書いているが、文章を読み、考えることはよくされているように感じた。
自分や周囲のことをよく観察し、感じ、考え、覚えている、って普通にできそうに思うけれど、意外とできていないもので、日々の生活に埋没していくものだ。
そういうことを拾い上げ、自分なりの視点や捉え方でみせていく。
誰でも経験してそうなことだから、共感を得やすいし、面白さも共有できる。
それが、歌手や俳優、物書きの活動に生きてくるのだろう。
ぜひともこの視点を失わずに活動を続けて欲しいと思う。
個人的には、漫画にあったネズミの話が笑えて泣けた。
2024/10/16 23:13
生死感のみならずいろんな観点から読める本
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俳優の弟が自殺し、双子の兄はいつも一緒で仲が良く、お互いのことをなんでもわかっていたはずなのに、その事実を受けとめられない。
弟の行きたかったと思しき場所や過去に訪れた場所を訪ね歩き、現地で見たものや景色に思いを馳せ、出会った人たちと交流する。
元カノの女優もまた喪失感を抱えてどう生きていったらいいのかふわふわしている。
彼女と旅をするうちに、彼女も苦しんでいることを知る。
双子なので、一般人の兄も元カノのことは好きだった。
けれども、彼女は兄とは付き合わなかっただろう。
今一緒に旅をしてお互いの気持ちを共有しているが、それは尚斗という存在を挟んでのものであって、それ以上にはならない。
貴斗は尚斗の代わりではない。
双子だからといって、全く同じというわけではないことをお互いが思い知る。
当たり前だけれど、辛い現実。
しかし、貴斗は動けば動くほど喪失感が増し、気持ちのやりばがなくなる感じであったが、辻ちゃんの存在がますます気持ちを掻き乱すことになりつつも、大切な人を失った苦しみをぶつけあえるという点では、救いになったのではないか。
その意味で、尚斗が見たもの、貴斗が尚斗に見せたかったもの、一緒に見たかったもの、それを尚斗とともに味わい、かみしめるために寄り添うのは、凛ではなく辻ちゃんだったのは、当然かと思った。
決して、自死を肯定するわけではない。
残された者の苦しみや混乱を描きたいわけでもないと思う。
ただ、タイトルにあるように、せっかくだから生きている間にできるだけたくさんの、世界中にある美しいものを見て体験して感動し、それを誰かと共有して楽しみつくせたら、というところに救いを求めたい。
この本を読んだ多くの人は、タイトルや人物の設定からある俳優のことを思い浮かべるだろうが、彼のこととは別の物語である。
本の構成が工夫されている。
ネット記事、SNSの投稿、後クレ風のレイアウトなど。
映画の制作現場に詳しいようで、最後まで緊張感を持って読めた。
俳優ではないけれど、自然と言葉が出てきた貴斗表情が浮かぶようだった。
2024/10/13 12:23
食を通じて元気づけられる
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色々な飲食店が舞台になった連作短編集。
ひとは食べることで生きている。
それを生業としているひとたちのそれぞれの思いと何らかの事情のある客との間で双方に生まれていく気づき、それが商売や人生に影響を及ぼしていくさまをやさしい視点で描く。
どの人も人が好きで、自分のできることで人を喜ばせたいという思いに溢れている。
元気になれる話たち。
それこそが食のなすところか。
2024/10/13 12:13
この本自体が教える技術を体現している
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教えるには自分が教える内容を理解している必要がある。
ただ、それをうまく伝えられなければ育たない。
その教える技術を細かくわかりやすく解説している。
読みやすい。
2024/09/27 07:25
四国を巡り各王家を救う
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駕国。
王家の人は数少なく、長く宰相が国の実権を握る。
そこには大きな秘密があった。
薄々宰相には何かあると感じながら入国する飛牙と裏雲。
羽付き二人を救いたい飛牙。
殿下を何としてでも守りたい裏雲。
入れ違いに捕まったり逃れたり…ではらはらする。
そうこうするうちに、駕国初代の天下四国を巻き込む陰謀に気づく。
飛牙はこれを止めるため、干渉になるとわかりながらも那兪を天に向かわせる。
なんとか何を逃れ、駕国の若い王夫妻も救われる。
飛牙の願いである、二人の羽付きが救われるのかはわからないが、猶予は得られた模様。
天下四国の各国で王家を巡る陰謀などに巻き込まれるも、周囲の助けと勇気、行動力で乗り越える。
助けが得られるのも苦しむ人を助け、信用することができるからなんだろうと思う。
生きるために何でもやったと言いつつ、人を救うことを諦めきれないお人好しなんだろう。
それが飛牙の魅力であり、羽付き二人も惹かれてとことんつきあうことになったのだなあと思う。
面白いシリーズだった。