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  3. 清高さんのレビュー一覧

清高さんのレビュー一覧

投稿者:清高

156 件中 1 件~ 15 件を表示
客観性の落とし穴

客観性の落とし穴

2024/03/17 22:53

客観性で 生きにくくなり 経験もっと 重視しよう

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1.内容
 科学の進化などによって、「自然も社会も心も客観化され」(p.149)るようになった。数値が力を持ち「人々が競争に追いやられる」(同)ようになった。一方で、「個別の経験の生々しさが忘れられがちになった」(p.150)。その結果、人は生きづらくなった(村上靖彦の見解)。もちろん客観性を全否定するわけではないが、生きづらくなっては行き過ぎである。そこで本書は、「個別の経験の生々しさ」を取り戻し、より生きやすい社会を作るために何をすべきかについて、「現象学」等のキーワードを用いて説明するものである。

2.評価
(1)参考文献に、小田中直樹.歴史学のトリセツ:歴史の見方が変わる時.がある(p.190)。思考の流れが、小田中の本の流れに似ており、面白かった。すなわち、小田中の本を読めばわかるが、歴史学は、客観性を重視したランケ派が今も主流であるが、オーラルヒストリーといった、「個別の経験の生々しさ」を取り上げた方法も用いられるようになった。本書のように、客観自体を否定はしないが、その問題点を克服するために「個別の経験の生々しさ」に焦点を当てるのは、大げさに言えば現代社会の流れに乗っている。

(2)内容面でも、客観性を全否定せず、「個別の経験の生々しさ」に焦点を当てようとする問題意識は、筆者はなるほどと思ったし、他の読者も読めばそう思うだろうと勝手に推測する。筆者は第8章の「アウトリーチ」をした・された経験がなく、読む限りではどちらもしんどそうに感じるが、筆者の経験不足が原因と思われるので点数は減らさない。

(3)以上の通りであるから、5点。

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射精道

射精道

2023/12/12 21:49

射精につき 使える方法 満載だ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1.内容
 陰茎のある男性が、成長すれば行うであろう「射精」をきっかけとして、いかに性生活を営むべきかを記した本。思春期から中高年まで、射精障害が生じた時など、男性が経験するかもしれないことを、コンパクトな新書版でまとめている。

2.評価
(1)まず筆者が評価しないところ。

ア.武士道の強調。「『(ノーブレス・オブリージュ)』」(p.4)というのはわかるが。

イ.女性については第9章にさらっと書いてあるだけ。
 
 しかし、本書にとって重大なところではないので、点数を減らさない。

(2)実践的な方法が満載なので、5点。以下、何点か。

ア.p.45「思春期における『射精道』」から面白かった。第9条は意識しなかったし、第14条や第15条も意識したことはなかった。恥ずかしながら「官能小説」(p.68)が使えるとは知らなかった。

イ.p.105「資料7」とp.112「資料9」は熟読が必要。筆者は、令和5年の刑法改正に不安を持っていた。「不同意」(ポケット六法令和6年版.有斐閣.の、刑法第176条、第177条の見出しにある)はどう判断するのだろうかと思ったが、「資料7」と「資料9」はいいヒントになると思った。

 その他にも役に立つと思われる知識が満載なので、ぜひ。

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基礎からわかる論文の書き方

基礎からわかる論文の書き方

2023/12/01 23:21

科学とは 何かについて 共感す

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1.内容
 論文とは何か、というところから説く、論文の書き方の本といったところか。小熊英二は、東京大学農学部卒で、出版社勤務を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了している(プロフィール参照)ので、文系のみならず、理系の視点も取り入れ、豊富な例えを踏まえて説明している。

2.評価
(1)筆者は、現時点では、本書のような論文を書く予定はないので、書き方について特に見解はない。

(2)筆者が本書で感心したのは、第2章と、前述の「豊富な例え」である。豊富な例えの方は本書を読んでもらうとして、第2章の「科学と論文」について。科学は「お互いが共有する公理を前提にする」(p.65)ものであり、そのうえで「公開が原則で、誰でも疑っていいし、お互いに批判や対話をしながら進歩でき」(p.76)るものだという。科学に対する考えとして筆者の知る限りで一番わかりやすかった。理系の学部を卒業した賜物だろうか。

(3)特に(2)を長所とするので、5点。

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英語教育論争史

英語教育論争史

2023/10/28 23:28

大半の 論争過去の 蒸し返し

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1.内容
 現在でも英語教育に関する論争はあるが(記憶に新しいところでは、大学入学共通テストにおける民間試験の活用。p.222参照)、それらの論争の大半は、過去にすでになされている。しかし、過去の論争に決着をつけなかったので、何度でも蒸し返される。そこで本書は、日本が近代化した明治時代から、英語教育についてどんな論争があったかを示すものである。

2.評価

(1)筆者は、大学受験を経験し、個人的に英語教育に関心を持っているので、本書の論争は全て興味深かった。大まかに書くが、とりわけ英語教育の目的が教養か実用かという論点が興味深かった(第3章や第5章が中心)。

(2)気になる点もある。本書でも示されているが、論争に決着がつかないのは、客観的なエビデンスに基づかないところが大きい側面があるから、調査を求めるか、蒸し返し自体を咎めないことのどちらかの方がよかったと思う。また、第5章の論争は評価しているのに、第6章の論争の評価が曖昧な理由がよく分からない。

(3)しかし、(2)に関わらず、英語教育のみならず語学全般について考えさせられた本なので、5点とする。

3.筆者のメモ(素人考え)
 本書のニュアンスよりも、現在は英語のヘゲモニーが強いので、英語は全員が学ぶべきである。会話も大事だろうが、読めないと話にならないわけで(インターネットや学術論文を英語で読むことの重要性が増していると認識)、教養寄りの方法論、すなわち文法重視に意味があると考えている。ただ、アメリカの外交官が日本語を学ぶのに2200時間かかるのに(「『英語母語話者には極めて難しい言語』」(p.259)だから)、日本の中等教育の英語の授業は840時間しかなく(pp.259-260参照)、マスターするのは容易ではないから、工夫が必要だろう。

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近代民主主義とその展望

近代民主主義とその展望

2023/08/07 21:42

民主主義の 歴史と理念と 現状と

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1.内容
 本書刊行時の1977年においては、世界中のあらゆる国で民主主義が制度化されているが(本書を読めばわかるが、当時のソ連流の共産主義も民主主義と無関係ではない)、それがどのように成り立ち、今後どうなるかを記した本。ギリシアのポリスや、イギリスの立憲主義は、元々民主主義的なものではなかったが(どちらも有権者になるには制限があったから)、それら古の制度や理念をも取り込んで近代民主主義が完成した。

2.評価
(1)近代の民主主義が、民主主義的なものではないものを用いて成り立っているという内容が興味深かった。日本国憲法第43条第1項には「全国民を代表する」とあるが、この表現が実は民主主義的でないことがわかり、目からうろこが落ちた。

(2)民主主義の歴史のみならず、民主主義の何たるかがわかるところがある。特に第2章2b「多数決の原理」のところ。多数決は擬制であり、「少数者の権利(略)の尊重と組み合わされてはじめて機能する」(p.142)ものであることは肝に銘じた方がいい。

(3)アメリカやヨーロッパの民主主義のみならず、共産主義や旧植民地における民主主義を検討していることが、とりわけ現在から見たら新鮮であった。

(4)以上の通りであるから5点とする。

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人種主義の歴史

人種主義の歴史

2023/05/15 21:39

西洋の 歴史から学ぶ 差別かな

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1.内容
 「大航海時代から今日まで」の、主に西洋社会における人種主義(それは人種差別につながる)について概観したものである。いろいろな思想家が人種主義について述べており、その中には差別に反対の見解もあるが、その時代における主流の考えの影響を免れず、人種主義を肯定する記述も散見される。また、差別される側は、されている差別には抵抗しても、差別自体を悪としているわけでなない場合もある。このように、人種主義や差別にまつわる歴史は複雑なものである。

2.評価
 著者の専門(プロフィールによると「フランス植民地史」が専攻)の範囲内で書かれていることは評価が分かれるかもしれない。すなわち、日本に関する記述が少ないと判断されるかもしれない。しかし、西洋社会における人種主義の歴史から翻って日本の歴史を思い返せばいいと思うので点数を減らさない。人種主義の歴史や歴史に複雑さを学べるいい本なので、5点とする。

3.追記
 本書はジェンダー差別についても言及されている。重要と思われるのであえて特記した。

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台湾 四百年の歴史と展望

台湾 四百年の歴史と展望

2023/05/01 20:02

歴史修正主義的な 本でない

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1.内容
 タイトルの通り、台湾の歴史を叙述した本である。本書p.235によると、「台湾は、オランダ(スペイン)、鄭氏政権、清国、日本(大日本帝国含め。筆者補足)、そして国民党政権という、いずれも『外来政権』に支配されてきた」(p.235。もちろん、レビュー当時は民進党政権であるが、本書初版は1993年だから書かれていない)様を叙述したものである。明国は台湾に価値を認めなかったが、清国は認めた。日本の植民地支配は苛烈であったが、その下で台湾は近代化し、日本の植民地運営は中華民国も肯定的に評価した(pp.237-238参照)。日本の敗戦などで中華民国になったが、国民党は「疑似『レーニン式の政党』をめざし」(p.170)ており、強権政治であった。しかし、共産主義に対峙するアメリカから民主化を求められ、台湾は民主化に向かっている。

2.評価
(1)本書の場合、筆者は「あとがき」から読んだが、「それゆえ私は、日本の台湾統治における『植民地化の近代化』を強調するのである」(p.237)とあり、日本を善とする、いわゆる歴史修正主義的な本と勝手に思ったが、当然そうではなく、筆者の見立てが浅はかだったということである。

(2)台湾の歴史の複雑さが理解できる本である。台湾の原住民、本省人、外省人の対立がわかり、台湾独立の意味がわかる本である(だから、最近は民進党でも「独立」を主張しなくなった)。もちろん、李登輝以前の国民党の強権体制をも理解できる。

(3)取り留めなく書いたが、以上の通りであるから5点とする。

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いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経

いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経

2023/03/12 22:19

現代語訳でいいし 気付きも もらえる本

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1.内容
 お経の現代語訳、それに関連すると思われるエッセイ、そして、著者が朗読するお経の現代語訳がセットになっている。

2.評価
 本書を読むまでは、(正直、お経を、現代の日本語に訳して何になるんだ?)と思った。しかし、「もともとサンスクリット語やパーリ語だったのが中国語に翻訳され、その中国語をそのまま、日本風のなまり切った発音で、意味のことなんか考えずに唱えている」(本書p.11)のであれば、現代の日本語に訳してそれを朗読するのもありだな、と思った。そしてCDの朗読がなかなか迫力があった。

 また、お経や古典文学について気付きをもらえる本である。例えば、お経は語りであったり(p.12、p.27)、「日本古典文学は(『古事記』等は除いて)ことごとく皆な仏教文学である」(p.265)だったり。

 以上の通りであるから、5点とする。

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家父長制の打破と 多様性が大事

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読み方と評価
 普通の読み方でいい。プロローグ、第1部(○○部の部分の数字の原文はローマ数字)、第2部、エピローグ、といった具合に。

 とりわけ、第1部の各章に各国の「婚姻と姓」と「子どもの姓」が書かれている。そこだけ読んでも、各国のやり方はいろいろで、日本のような、婚姻の効力を生じさせるために夫婦が同姓であることが必要(そもそもは夫婦別姓だったが、欧米に倣って夫婦同姓になった旨も書いてある。そして欧米は夫婦同姓を強制することがなくなったことも)であるとは言えないことが分かり、有益である。

 キリスト教の影響が強い国は正式な婚姻に同姓であることが必要だったり、女性は「男性の夫人」、みたいに呼ばれたり、中国や韓国は男尊女卑ゆえの夫婦別姓だったのが意味合いが変わったりと、本書で取り上げた国は社会の進展に応じて変化しているのも分かり、有益である。

 本書の裏テーマというべきは、家父長制の打破と性的少数者の権利も認める多様性だと筆者は受け取った。夫婦同姓であれ中国や韓国のような夫婦別姓であれ、女性は男性の所有物という哲学も含まれるが、同姓が求められなくなり、別姓のところでは子の姓を母の姓にすることも認めるようになり、家父長制の打破が進みつつある。性的少数者の権利を認めることによって、正式な婚姻制度と別の制度の発展も人々がどの姓を名乗るかを選べる土壌になっているのがわかるだろう。

 もちろん、夫婦別姓を認めると、子の姓をどうするかという問題が生じるが、台湾におけるくじ引き等、いろいろな方法が模索されているので、問題は理解しつつも、日本の場合は、選択的夫婦別姓を認めるべきであることが理解できる。

 以上の通りであるから5点とする。

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「21世紀病」 防ぐには どうすれば

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1.内容
 いわゆる先進国において、自閉症、過敏性腸症候群、うつ病、肥満と、「21世紀病」と言えるような心身の異常が生じている。これらの心身の異常は、いわゆる発展途上国には少ないが、なぜだろうか。コリン,アランナが、疫学的な方法で調べたところ、抗生物質が関わっているようだ。抗生物質そのものは悪くない。細菌性の病気を治すのに多大な貢献をしている。しかし、それによって腸内微生物の割合が崩れると別の心身の異常が起こるようである。また、抗生物質は人間にのみならず、家畜にも用いられている(抗生物質を用いると成長が著しくなる。人間も同じ。だから肥満の人が増える)。このような抗生物質の過剰使用の弊害をなくすにはどうすればいいかも考察しており、抗生物質の過剰投与は控え(ウイルスが原因の病気には効かないうえ、耐性菌ができるから)、赤ちゃんは可能な限り母乳で育て(WHOの勧告も書いてある。6か月は母乳で育てるべきだそうだ)、植物を現在より多く摂取して食物繊維をとるようにすべきであることなどが書かれている。

2.評価
 筆者は、既にテレビで、糞便移植だとか、食物繊維を多く摂取せよといった内容を観ているが、その根拠が詳しく書かれている本だと言える。腸内微生物の割合を正すためには健全な割合の人の腸内微生物を移植するのと献血との比較もあり、筆者は感心した。食物繊維を摂取することで短鎖脂肪酸を増やすことの理由も書かれており、テレビで得た知識がさらに深まった。筆者の現在においては食物繊維の摂取を増やすために植物を食べるくらいしか役に立ちそうな知識はないが、出産についてどうすべきかも書かれており、個人や社会が考えるべきことも分かり(おそらく、女性の育休は長くないとまずい。母乳で育てられないと「21世紀病」のリスクが高まるから)、それも良かった。以上の通りであるから、5点とする。

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休養学

2024/12/07 22:08

眠ってりゃ 休養になる わけじゃない

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1.内容
 「健康づくりの三大要素は『栄養・運動・休養』」(p.4)だが、休養だけが体系化されていない印象である。そこで、日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹が、あるべき休養を探求した本。休養はたくさん寝れば取れるものではなく(睡眠は必要だが)、「『活力』」(p.104)を加えないといい休養にはならず、従って充電されない。休息タイプのような休養もあるが(睡眠も含まれる)、それ以外の6つの「休養モデル」(p.115)も組み合わせて充電を目指すべきである。

2.評価
(1)レビュー筆者は、休養といえば寝ることがメインだと思っていたので、本書の着眼点は気が付かず、いい着眼点だと思った。もちろん、積極的休養として軽い運動をすればいいというのは知っていたが(「アクティブレスト」で検索)、それのみならず人と会ったり趣味を楽しむのも休養になるというのは考えなかった(気分転換にはなるが、休養になると思っていなかったので)。

(2)ハウツーも充実している。「先に休みを確保しておく」(p.190-191)だとか、「手帳を『土曜日』に開く」(p.194にある見出しの表現)だとか、筆者が考えなかった方法が多かった。

(3)以上、休養について興味深い内容の本だったので、5点。

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ルポ 大学崩壊

2024/11/25 22:02

教職員 学生無視で 暴力が

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1.内容
 「2004年の国立大学法人化と、私立学校法の改正」(p.10)、ならびに「2014年の学校教育法改正と国立大学法人法改正」(p.11)により、大学においては、学長や理事長の権限が強化され、教職員の意見が通りにくくなった。そこで起こったのは、学長や理事長の独裁であったり、ハラスメントの横行であったり、雇い止めであったり、文部科学省官僚(総合職、一般職不問)の天下りだったりする。政府はパワハラをでっちあげられた北海道大学学長に関しては速やかに解任したが、他の事例には然るべき監督をせず独裁等が改まらない。そして大学の不祥事は日本各地で起こっている。

2.評価
 戦慄のルポルタージュであった。軍事研究に消極的な大学の学長を解任するというのは、日本学術会議問題に連なる。専門家かつ当事者である教職員や、学生の意見を封じるというのは、主に自由民主党政権の学問軽視の姿勢(歴史修正主義や人文系の軽視、軍事研究の強制など)と合致している。本書を読めば、違尊重されていない日本の危機を感じることができるだろう。従って5点。

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裏テーマ 実は生活 保護だった

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1.内容
 橋本健二.格差の戦後史.と異なり、「一貫した指標によって、貧困の増減を描か」(p.313)ず、「貧困の『かたち』」(p.313)から、第2次世界大戦敗戦後の貧困を明らかにした本である。食べるものがない時代から、スラム、寄せ場、生活保護、ホームレス、「ネットカフェ難民」(p.266)といった事象を取り上げている。

2.評価
(1)筆者の場合、正直、自分が生きている時代の貧困の「かたち」に特に興味があったので、第4章と第5章が興味深い一方、第1章から第3章は少々退屈した。読者には全文読んでほしいが、もしかしたら、興味のあるところから読んで、遡るのもありかもしれない。

(2)勝手ながら、筆者の解釈では、本書の裏テーマは「生活保護」である。生活保護がどのように活用されているかが書かれている。不当なレッテル貼りもあるが、概ね貧困対策に役立っている様が描かれている。また、貧困の責任を個人に帰することや、自立支援の問題点を指摘しているのは参考になった。

(3)以上、(1)はそれほどの欠点ではなく(順番を変えてでも全部読めばいいと思ったから)、貧困の「かたち」が参考になり、生活保護について考えることができる書物なので、5点とする。

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無茶苦茶な うえに独立も 形式的

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1.内容
 大東亜共栄圏がいかなるものかを記した本。欧米に比べてそもそも脆弱な経済状況の大日本帝国は、そもそも英米と協調しないと生きていけなかったはずだが、英米と対立して共栄圏に命運を託した。しかし、英米と貿易していた時より豊かになったわけではなく、経済的に苦境に陥った。大日本帝国は、形式的には独立を認めていたが、実際は大日本帝国が支配していた。現在は行政権は内閣の属するものとされるが(憲法第65条)、当時の実際においては内閣と軍部に分立しており、方針が定まらず、それが苦戦の原因にもなり、共栄圏の経営の苦しさにもつながった。

2.評価
 途中のデータが豊富な部分は、通読の際に眠気を誘うものであるが(もちろん、データの信憑性を疑っているわけではないので、データも熟読すべきである)、全体としては、大東亜共栄圏は、一部の見解のような、アジア諸国の独立を促したものではなく(例えば、フィリピンはアメリカから、1946年に独立を約束されていた。その前に形式上フィリピンは独立したが、改めて1946年に独立した)、無茶苦茶なプロジェクトで、誇れるものではないことがわかるので、5点。

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進化は進歩とかぎらぬと 意識について詳述す

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1.内容
 2部構成通りの本。第1部は、ヒトや類似した動物がどのように進化したのか、そしてそれは進歩を意味するのか、を主に論じている。第2部は第1部で得た問題意識を元に意識について考える。意識があるほうが本当にいいのか、意識が存在しない「哲学的ゾンビ」が成り立つのか、などを論じている。

2.評価
(1)第1部と第2部でトーンがガラッと変わる。第1部は進化一般で、進化は進歩とは限らないということが印象に残った。第2部は意識の話になるが、無意識の動作の方がうまくいく場合もあるというところから、第1部で得た知見の1つ、進化は進歩とは限らないということの一例になっているように思われ、なるほどと思った。

(2)(1)で書いたことに限らず、人類の進化について興味深いことが書かれているので、5点とする。

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