山村まひろさんのレビュー一覧
投稿者:山村まひろ
やまんば山のモッコたち 改定版
2001/09/04 00:55
あこがれの山姥お母さん。
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背高のっぽの山姥のお母さんと、一人娘のまゆ。そして、河童、天狗、雪女、鬼、名も知れぬモッコたち。まゆが生まれて、1歳の誕生日を迎えるまでの一年を、描いた物語。
この本は20年前、まだ大学生だった富安さんが、月刊誌に連載し、その後、初めての単行本として刊行された、同タイトルの本の改訂版です。
初版時の原稿を加筆訂正した上、今回、あらたに書き下ろしを加えた、全8編。挿絵の降矢奈々さんも、絵を数点、書き直されたそうです。
「自分自身がお母さんになってしまった今の私には、こういうカッコいい母親像は、ちょっと描けないだろうと思う」と、後書きに書かれている、この山姥のお母さんが、ホントにカッコ良くて、ほれぼれ〜とします。
確かに現実は、こんなお母さんはいないかもしれないけど…だからこそ、お話の中で、ひときわ輝いて見えると思うのです。
それに…このお母さんの作る料理がどれもおいしそうで…、特に、まゆの誕生会に作られる料理の数々には、思わずヨダレが…ううう。
一緒に、誕生会に遊びに行きましょう!
よろずお直し業
2001/09/01 23:05
ほどけた絆を、つなぎとめることができますか?
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サバロは一日に一度、自分の命のねじを巻く。今日一日を生きながらえて、商売を続けるために。五年ほど前に戦場で命に関わる傷を負い、記憶を失ったサバロは、旅を続けながら商売を続ける。
他の人間には見えない「命のねじ」を巻き戻し、壊れたものを復元するという不思議な力を持つサバロの、旅から旅への物語。
愛を込めて夫が彫り上げたという像の亀裂を修復する「砕けた石」、真っ二つに裂けてしまった友好の証しの覚書の布を命がけでつなぎとめようとする「裂けた布」、人真似の疑いをかけられ失意のうちに亡くなった、木彫り細工職人の真実のため、水を氷の彫刻へ戻そうと試みる「融けた氷」など、全6編収録。
命のねじを巻き戻し、修復したものも、時が流れればまた壊れてしまう。再び壊されるために直し、直した代価を受け取る。サバロは自分のしている行為に疑問を持ち続けながらも旅をつづける。
そして、ついに「これで最後だ」と決めたサバロの前に「灰になった手紙をもと通りに」と願う女が現れ、サバロは…という「燃えた手紙」のラストは、胸に迫ってきて、思わず涙うるうる。
人と人とのつながりを描く、ファンタジックな物語。
初出
うたたね通信社
ガセネッタ&シモネッタ
2003/10/02 02:29
人と人とをつなぐ通訳者、その裏と表!?
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このエッセイ集によると、同時通訳者は、通訳のときに言葉遊びや、掛詞、駄洒落を訳すのに四苦八苦し、苦しめられているクセに、なぜか駄洒落好きが多いのだだとか。
名通訳者の中には駄洒落の達人が多い、ということで、シモネッタ・ドッジ、ガセネッタ・ダジャーレで漫才コンビを組んで、一儲けできないものか…というようなあたりから、この本のタイトルがついたのでした。
通訳者ならでは、という駄洒落がたくさん登場し、思わず笑ってしまうようなエッセイが次々に登場します。
もともと、タイトルと、拾い読みした内容が面白かったので読み始めたこのエッセイ集ですが、読み終わってみると、印象に残っているのは「通訳者ならではの視点から眺めた日本語」「世界の中の日本」について、などでした。
米原さんご自身、小・中学校時代をプラハのソビエト学校で学ばれたそうで、日本に戻った時に、漢字を覚えるのに苦労されたとか。
世界のさまざまな国の、さまざまな言葉の中でも、日本語は文字の多さでは群を抜いていて「なぜ、こんなにたくさんの文字を覚えなければいけないのか」という疑問を持たれたことや、また反対に、日本語の文章は漢字が意味を持っているおかげで、一度覚えてしまえば断然早く読める、というようなことも、書かれています。
その国にしか存在しない言葉というのは、普段の生活の中ではあまり意識しないものですが、そういう日本語ならではの単語やことわざは、日本ならではの考え方や、日本人ならではの感じ方と通じているのだなあ…と、読みながらしみじみと感じました。
また、言葉は通じてこそ花、というか…どんなに美しく、正しい言葉も、相手の心に届かなければ意味を成さないのだ、ということ。
ある意味あたりまえなんだけれど、原点ですよね。
小・中学校時代を外国で暮らし「人間は、他者との意思疎通を求めてやまない動物なのだ」ということを身をもって体験された米原さん。
「両者の意思疎通は、わたしがいて初めて成立している」という誇りを持って、これからも人と人との掛け橋として、世界をつないで行って下さいね。
初出『うたたね日記』
綱渡りの男
2006/05/07 21:24
今はない、ツインタワーに思いを馳せて・・・・
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1974年8月7日ニューヨーク、世界貿易センター。
完成間近のツインタワーの間に綱を張ったフランス人大道芸人フィリップ・プティは、地上400メートルの綱の上を渡り、綱の上で踊った。
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実際にあった出来事をもとに、今はないツインタワーへ思いを込めて作られた絵本。
絵本は「昔、ふたつのタワーがならんで立っていました」で始まります。
綱渡りが大好きな若き大道芸人は、双子のようにならんだタワーを見上げて思いました。
「ロープを張るには絶好の場所だ」
彼は、慎重に計画を進め、友人たちの協力のもと、本当にタワーの間に綱を張り、1時間もの間、空中散歩を楽しみました。
空中散歩中の絵は見開きを大きく取って描かれ、工夫されており、とても迫力があります。
シンボルタワーとして存在していたツインタワーは、もうこの世に存在しませんが、ページを繰りながら、さまざまな思いが巡ります。
平和であればこそ、できた綱渡り。
親子で読んで欲しい絵本だと思います。
17歳 新装版
2007/08/18 22:55
みんな、どんなおとなになったのかな?
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1988年に刊行された写真集の新装版で、17歳の男女の写真をまとめたもの。
写真だけでなく、それぞれに簡単なインタビューを付記。
1980年代ということで、高校生だけでなく、働いている子も多く、職業も時代を感じさせる。
学生にしても「高校生」というだけでなく「定時制高校生で昼間は紡績工場勤務」「窯業高校生で昼間は製陶工場勤務」「競馬学校2年生」などの他、「盲学校2年生」なども。
働いている子はもっと多岐に渡っており「調理師」「板前見習い」「魚市場勤務」「鮮魚店店員」「漁師」「板金職人」「左官職人」などから「少年自衛官」「相撲力士」「行司」「タレントの付き人」「メイクアップスクールアシスタント」「舞妓」「喫茶店勤務」などなどさまざま。
中には「旅の途中」や出産を控えた「主婦」も。
また、女優の工藤夕貴や、宝塚歌劇団花組所属の姿月あさとの姿もある。
初版が出たころとは時代も変わったので、ヘアスタイル、ファッションなど、そのころを知っている人間からするとどこか懐かしい気がする。
彼あるいは彼女たちが、今はどんなおとなになっているのか、ちょっと想像をめぐらしてみるのも面白いかもしれない。
荒野のマーくん その試練
2006/05/09 01:43
危険度パワーアップ!マーくん、マジでヤバイよ!
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『荒野のマーくん その受難』で、マーくん一家に爆弾を投下したおねーさんと思われる女子高生が、やっと見つかった!
コンビニでアルバイトする女子高生タキザワ。
クリスマス前に現れたときは地味な学生風だったのに、タキザワは濃いメイクのギャル系で、イマイチ同一人物かどうか確信が持てないマーくん。
コンビニでアルバイトが終わるのを待ちうけ、タキザワの尾行開始!
ところが、タキザワは待ち合わせた下品なオッサンと一緒に、どんどんあやしげな裏通りの入り込んで行き、ビルの中に消えてしまった。
あきらめて帰ろうかどうしようかと悩むマーくんの前に、タキザワが飛び出してきて、マーくんのママチャリの荷台に乗るなり「走れ!」と叫んで・・・・。
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いやいや、もうマーくん、本当に人が良いというか、マヌケというか。
どんどんタキザワのペースにハマって、泥沼へ引きずり込まれてしまってます。
『受難』でもかなりヤバかったですが『試練』はさらにグレードアップして、危険度もパワーアップ!
マジ、ヤバイ!
がんばれ、マーくん!!!
荒野のマーくん その受難
2006/05/09 01:35
生活能力ゼロのパパと一緒に残されたマーくん、絶体絶命!
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ブリブリなかっこで趣味がハーブとピアノというママと、「ドラゴンボール」がめちゃくちゃ好きで子どもみたいなパパ。
そんな両親と一緒に、お気楽に暮らしていた小学6年生のマーくん。
でも、なごやかなはずのクリスマスシーズンのある夜、爆弾は突然落ちてきた!
ピンポーンとチャイムを鳴らして現れたびしょぬれのおねーさんが、パパに向かってこう告げた。
「あたし、あなたの娘です。」
言うことだけ言って走り去った謎の女子高生。
そして、次の日。
ママは1週間分の食料とおこづかいを残して、実家に帰ってしまった。
頼りないだけでなく、全然大人になってもいないパパと2人残されたマーくんの受難の日々が始まった!?
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女の子が誰なのか、本当にパパの娘なのか、当のパパにも否定しきれないようす。
ママは実家に帰ったまま1週間を過ぎ、2週間を過ぎ・・・。
預金通帳はママが管理しているから、手持ちのお金も底をつき、せっぱつまったマーくんは大事なゲームを友だちに売ったり、パン屋でパンの耳をもらってきたり・・・。
生活能力ゼロのパパは、食事のことも含めて家のことは一切できないだけでなく、この大変なときに会社まで辞めちゃって、わずかながらも手に入れた退職金さえ使い込み・・・。
いや、もうこのオッサン(パパだ、パパ)なんとかしろよ! って感じですね。
マーくん、人が良すぎる。
こんなオトン(何がパパだ!)どっかへ捨ててしまえばいいのに、と思いながら読みました。
が、ここまでヒドクないにしても、けっこういるんだろうな、こういう生活能力のない父ちゃん。
どこの誰ともわからないお姉さんを探し出し、マーくんは、パパとママを仲直りさせることができるのでしょうか????
アナ=ラウラのタンゴ パパの謎を追って
2005/02/25 02:19
ラウラの成長と、サスペンスフルな展開が魅力
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この物語は「あれは明日から夏休みという日だった__死んだはずのパパがタクシーに乗っているのを見たのは」
という一文からはじまります。
二年前に死んだはずの父親に、顔ばかりでなくしぐさまでそっくりな男性を乗せたタクシーが、アナの乗ったバスのとなりを通り過ぎて行きました。
必死で覚えたタクシーのナンバーを手がかりにして、アナはママの恋人の息子であるオリバーとともに、その男性を探し始めることに。
二年前、誰かに会うために泊まっていたアルゼンチンのホテルで、火事のため焼け死んだパパ。
ひどいありさまだったという遺体は、本当はパパではなかったのだろうか?
そして、結局は現れなかったという謎の人物の正体は?
ママも、パパの母親であるおばあちゃんも、そして、パパの会社のアーマンさんも、何かをかくしている気配。
いったい、パパに何が起きたのでしょう?
パパは本当に死んでしまったの? それとも、どこかで生きているのでしょうか?
ミステリー仕立ての児童文学。
ただし、フェアなミステリーを期待すると、肩透かし。
ラウラの成長と、サスペンスフルな展開が魅力。
そして、パパの謎は、おばあちゃんの抱えてきた謎であり、ドイツと言う国の抱えてきた重い過去だったのですが……。
詳しくは、ぜひ、本編を自分でお読みください。
坂崎幸之助のJ−POPスクール
2003/03/01 16:38
いかにして坂崎幸之助はできあがったか!?
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The ALFEEの坂崎幸之助さんがFM局『NACK5』のラジオ番組『K'Sトランスミッション』で『坂崎幸之助のJ−POP SCHOOL』というコーナーを続けて来て、その内容を本にまとめたもの。
客観的なJ-POP史ではなくて、あくまでも坂崎さんの視点から描かれていて、自分史というか「いかにして坂崎はできあがったか」みたいな内容になっています。
中学時代、高校時代の音楽との関わり方。桜井さんとの出会いについて。さらには、プロデビューと、売れない暗黒時代。そして、大学除籍から現在に至り…。
第三次ザ・フォーク・クルセダーズの活動についてもちょこっと。
坂崎さんの自分史と、J−POP(フォークソングと呼ぶほうが私にはしっくりくるのですが)の歴史が、熱く語られていて、とても面白かったです。
ますます坂崎さんのこと、好きになっちゃったよ♪
子どもだけの町
2005/01/17 03:43
子どもたちの一員になって、ティンペティルの町を駆け抜けてください
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14歳の「血まみれオスカル」は「海賊団」の「団長」だった。
ティンペティル町の住民をさわがせる、あらっぽい子どもたちの集団「海賊団」の仲間は、一日ごとにふえてゆく。
おそろしくいじわるなウィリが、ある日、ねこのペーターにいたずらをしかけたせいで、町はとんでもない大騒動になり、おとなたちはついに「ある決意」をすることに……。
それは、子どもたちだけを残し、おとなは全員、町から逃げ出して見せる、という作戦。
店も工場も閉めて「もう帰ってこない」という内容のポスターまで用意して、町を出て行ったおとなたち。
朝、起きてみると、親たちの姿はなく、水も出ないし、電気もつかない、という仕打ちを受けた子どもたちは、一時はびっくりしてとまどいますが、やがて「多分、親たちはすぐに戻ってくるはずだ」「こんなことで懲らしめたつもりだなんて、大人はバカだ」という子どもたちがあらわれ、店のシャッターはこじあけられ、おもちゃや食べ物は引っ張り出され、町はますますむちゃくちゃに……。
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そうです。親たちは確かに、ほんの一日、町を留守にすれば、子どもたちは懲りて、反省する、と思っていました。
だから、本当はすぐに帰ってくるつもりだったのです。
が……思いもかけないことから、おとなたちは町へ戻ることができなくなり、子どもたちは本当に、水も電気もない暮らしを送るハメになってしまうのです。
大暴れする海賊団に対して、少数派ながら、おとなたちが戻ってくるまでに、事態をなんとか落ち着かせようと考える少年たちが、この物語の主人公。
正義感が強くて、スポーツも万能の親友のトーマス・ワンクは、もちろんリーダー的な存在だけど、語り手の「教授」の知識がなければ、作戦はけっしてうまくいかなかったことでしょう。
数と力では完全に負けている状態から、一人、二人と仲間をふやし、やがて、大作戦が繰り広げられます。
わくわくして、ドキドキして、最後にすっきりする、そんな物語。
あなたも、ぜひ、子どもたちの一員になって、ティンペティルの町を駆け抜けてください。
うたたね通信社
チビ竜と魔法の実
2004/12/26 21:13
災難をのりこえていくことは、人生のたのしみの一つ!?
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人間のパパと、キツネのママと、キツネの血を受けついだ3人の子どもたち(ユイ、タクミ、モエ)、という信田家に、次々にやっかいごとが!?
ママのお父さん、お兄さん、そして叔母さん……ママの家族はお騒がせなキツネの一族。
そんなキツネの一族にふりまわされてばかりの信田家のお風呂場に、今回はなんと「竜」が棲みついてしまって……。
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鬼丸おじいちゃん(ママのお父さん)が連れ込んでしまったチビ竜が、マンションの風呂場に棲みついちゃったから、さあ大変!
おまけに、夜叉丸おじさん(ママのお兄さん)が、これまたやっかいな「モノ」を持ち込んでしまったことから、さらなる大騒ぎが!
さて、この騒ぎ、どうやって解決するの!?
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去年、一度読んでいるのですが、今年9月に続編が出まして、そちらを読む前に再読、となりました。
時代劇が好きな鬼丸おじいちゃんに、いつもとんでもないことをしでかす夜叉丸おじさん、化け術の名人でママの妹のスーちゃん、というキツネの一族も楽しいですが、やっぱり、ママとパパが、とってもいい味を出しています。
家族の中ではただ一人の「人間」で、植物学者でもあるお父さんは、のんきで、ちょぴりピントがズレてるけれど、ママのことが大好き。
そして、へんてこな一族の中で育ったママは、キツネ一族に手を焼きながらも、いつも前向きで、元気いっぱい!
なかなかこんなお母さんにはなれないけれど、ちょっとアコガレちゃうなあ。
信田家は、また一つ災難をのりこえて、さらに、楽しく、仲良く、暮らしていくんですよね。
ってことで、続編 『樹のことばと石の封印』 にも期待、大!!
偽悪天使 幻想浪漫小説
2004/10/03 23:58
冒険だ、冒険の旅に出よう♪
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井上雅彦:編「異形コレクション」のために書かれた『偽悪天使』と『百万弗の人魚』と、同じく井之上雅比古博士を主人公にして書き下ろされた『熱夢〜熱帯密林冒険篇〜』を1冊にまとめた幻想浪漫小説集。
海洋が専門の老嬢・小藤祥乃博士に誘いを受けた井之上雅比古博士は、祭りを見るために、遥か南洋の孤島・アーカムへの旅に出ることに。
数十年に一度しか見られない大潮の祭りに、奇跡が起きる!?
妖しく楽しく胸踊る、怪奇冒険小説。
これは、井上雅彦の存在と、高橋葉介の挿絵なしには、語れない1冊でしょうねぇ。
最初は、ちょっとノスタルジックな雰囲気の、慣れない文体にとまどってしまったのですが、読み終わると 「この物語には、この文体だよね!」という気持ちになってしまいました。
ぜひ、また、井之上雅比古博士の新しい冒険をお願いします。
初出今日の1冊
ちゃれんじ?
2004/07/14 23:52
がんばれ、おっさんスノーボーダー!
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『レイクサイド』の出版をきっかけに、同じ出版社の雑誌『スノーボーダー』の編集長と知り合った著者が、スノーボードにのめりこんで行く様が綴られたエッセイ集。
M編集長、T女史とともに向かったガーラ湯沢での発転びを第一歩に、仕事そっちのけでのスノーボード生活がスタート。
自らを「おっさんスノーボーダー」と名乗り、がんがんすべり、がんがん転ぶ様子が、熱く語られております。
オフシーズンにもスポーツを…ということで、ゴルフについて語ってみたり、カーリングに挑戦して負傷した顛末を綴ったり…。
スノーボードもスキーもやらない、およそスポーツには縁のない私が、こんなエッセイを読んでもなあ…と思いつつ読み始めたのですが、これがけっこう面白くて、東野さんの、小説とは違う一面が見えて楽しかったのでした。
『おっさんスノーボーダー殺人事件』を含めて、小説も数編収録されてます。
気軽に読めて、オススメです。
うたたね通信社 にも遊びに来てね。
首つりツリーのなぞ ぼくらの心霊スポット
2004/06/17 01:39
みんなにも、こんな友達がいてくれたら、いいのにね!
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「ぼくらの心霊スポット」続編。
有麗村村立の有麗小学校の6年生の「ぼく(ヒロ)」「かっちゃん」「マッキー」の3人は幼稚園のころからの仲良し。
三日月池のほとりの桜の大樹は「首つりツリー」と呼ばれて、誰も近寄らない。その首つりツリーにぶらさがり、ゆれる足を見てしまい、変な夢を見るようになってしまった、というかっちゃん。
3人は首つり桜へ行ってみることに…。けれど、それが、数年前の自殺事件の真相や、もっと大昔、ヒロのばあちゃんの悲しい想い出までも掘り起こすことになる、恐ろしい事件の始まりだった!?
クールで泣き言なんか一度も言わないマッキー。
無口だけど、やさしくて力持ちのかっちゃん。
「人にはない不思議な力」を持つヒロ。
前作でもそうでしたが、性格の違う3人が、それぞれの良いところをうらやましがったり、尊敬しあったりしている様子が、丁寧に描かれているところが、私は気に入っています。
「とりあえず仲良し」というのではなくて、ちゃんと認め合ってるというのがわかるし、だからこそ、とてもうらやましくも感じるのです。
こんな友達がいてくれたら、ツライことも乗り越えて行けるよね。
わが家
2004/05/15 01:33
さまざまな糸が行き交う織物。人生は織物の表と裏…。
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お父さんが自殺してから2年。
これから始まる長い長い夏休み、過干渉のお母さんとの生活に息苦しさを覚える中学生の真美子のもとに、アルバイトの依頼。
お父さんと2人でよく泊まりに行った、丹後半島・網野にある民宿『わが家』のおじさん、おばさんが、真美子を心配して呼び寄せてくれたのでした。
会社を辞めたものの不況で新しい仕事を見つからず、悩んでいたお父さん。
でも、お父さんが自死を選んだのは、お父さんに無関心なお母さんの言動であり、自分や兄の思いやりのない行動だったのではないか、という思いに苦しむ真美子。
『わが家』のおじさん、おばさんそしてアルバイトのお姉さん・薫さんや、薫さんを見守り、応援するおばあちゃん・須見さんとの出会いが、真美子の心にじわじわと沁みわたってゆく様子が、丁寧に描かれていきます。
「織物は裏を見ながら織るの。いろんな糸が行き交って、裏だけ見ているとなんの模様だかさっぱりわからない」。でも「手抜きせずに一段一段正確に織っていけば、ちゃんと一枚の絵が仕上が」る。人生も同じなのではないか…と言う薫の言葉は、自分自身も悲しい過去を生きたからこそ。
さまざまな人の、さまざまな想いを知り、真美子はお母さんと向き合う覚悟をし、やがて本当の「わが家」に帰ってゆきます。
がんばれ、真美子。
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