T40さんのレビュー一覧
投稿者:T40
ふたたびの虹 恋愛ミステリー
2004/07/14 18:15
勤め帰りに毎日通いました
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仕事を終えた帰りの電車の中、乗車片道40分でちょうど一編が読めて(私は読むのが遅い…)おいしい肴で一杯引っ掛けた気分です。
毎日「ばんざい屋」に通いつめて、自分だけ常連の気分です。
だから、読み終えてしまうのが、惜しかったなぁ〜
なじみの店が閉まってしまうようで、
でもまた、どこかでお店を開いてくれるでしょう。
そしたらまた、通わせてもらいます。
昔じゃなくて、今を生きる女将に憧れつつ、
同じく今を一所懸命生きている人たちの愚痴を聞きながら…
オールド・テロリスト
2015/08/10 10:01
題名と装丁に騙されてはいけない
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流行の老人活躍コメディとは全く異なり、リアリティをもって本当にテロを起こす。ある目的の為に無差別に何人も殺す。この国には何でもある、ただ希望だけがない。このくだらない国をリセットするために、戦後70年を生き抜いた老人たちが暗躍する。
マークスの山 上
2003/03/24 15:16
マークスとは何か?
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絶対に面白いです。高村さんの作品にしては読みやすいです。但し、主人公と同じチームの刑事たちについては、それぞれの個性が紹介されているにもかかわらず、具体的なイメージが湧かず、上下関係も結局分からなかったので無視したけど…。
ストーリーは15年前の山の事件からつながって、15日間に及ぶ捜査が山で終わります。そう、実際には15日間の捜査日記です。
登場人物は概ね「哀しい人たち」だと感じました。合田刑事が哀しい。そのまわりの刑事たちも哀しい。殺された人たちも哀しい。そして、吉沢がもっとも哀しい。わたしはどうしても吉沢に同情してしまいます。彼にどんな罪があるというのか? 彼を道連れに心中しようとした両親にこそ罪があるのではないか? 彼を狂気と呼ぶにはあまりに哀しい。
ミステリーかどうかは別として(そんなことはどうでもいいことで)、確かな質感をもった最高のエンタテイメントであることは間違いないと思います。
ラッキーマン
2003/02/28 20:23
地に足をつけて生きることの大切さ
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映画「バックトゥザフィーチャー」は大好きな映画のひとつで、今でもたまにレンタルします。その映画で初めて出会ったマイケル・J・フォックスという俳優も好きになりました。その彼が書いたこの本は、パーキンソン病という理解するにはちょっと時間が掛かる病気との戦いの他に、彼が歩んできたこれまでの人生と俳優としての挫折と栄光について書かれています。
私が感動したのは、病気との戦いよりも、スーパースターになった彼が自分を失わずに誠実に歩いてきた人生の方でした。映画スターとして(我々庶民から見て)華やかな世界に身を置きながら、彼はその世界が虚構の世界(ビックリハウスと呼んでいます)であることにいち早く気づき、その世界の甘い果実と引換えに悪魔に魂を売ることなく、「自分」を保ち続けています。だからこそ、今病気と戦いながらも自分ことを「ラッキーマン」だと言えるのでしょう。
私のように、おだてられるとすぐ木に登ってしまう豚は、しばしば結局はその木から落ちて痛い目を見るものです。そんな自分の過去を反省しつつ、しっかり自分を見つめて、地に足をつけた人生を歩みたいものだと思いました。
買って損の無い本だと思います。
狂い咲き「凶気の桜」の流れ 和への軌跡
2003/01/29 16:30
原作「凶気の桜」について
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原作はとても面白いです。
ネオナチに対抗して「ネオトージョー」と名づけた憂国の結社を作った3人の若者。お揃いの白い特攻服で武装した彼らがやっていることは、渋谷にたむろするアメリカかぶれした同世代の若者に対する「制裁」という名の暴力三昧。有り余るエネルギーが「凶器」となり軟弱な同世代に向けられるとき、徹底した破壊が行なわれるけれども、それは「狂気」ではない。自己都合的ではあるけれども思想があるから。
しかしそんな彼らを飲み込んでいく「侠気」を持たない右翼という名の大人たち。
スピード感のある展開とある種の爽快な風の中を彼らは駈け抜けるが、やがて悲しく暗い闇の世界へ追い込まれる。暗いままで終わったら悲しすぎると思ったけど、ラストの主人公が戦闘服を脱ぐ場面で、微かな光を感じることができて救われた。
壬生義士伝 上
2003/01/16 19:21
それぞれの義を貫いた男たちの物語
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もともと新撰組に対してはあまり良い印象がありませんでした。多感な青春時代を司馬遼太郎さんの「竜馬がゆく」を読んで、彼を崇拝していたからだと思います。だから、新撰組を扱った本すら読んだことがありませんでした。お陰で変な先入観も無く、素直に本書に登場する彼らを受け入れることができたと思います。
読み終わってから気がついたのですが、ほとんど女性の発言が無かったと思います。会話の中にも、口述の中にも、回想の中にも。しかし、だからといって女性が不在だと言うわけではなく、貫一郎の妻しづや娘のみつは主人公に次ぐ、圧倒的な存在感を示していました。貫一郎は結局、いづやみつの事ばかり話していたということでしょうか。
いずれにしても、ここに登場する男たちは、それぞれに信じる己の義のために生き、そして死んでいきます。一見自分勝手のようにも見えますが、とてもそれを責めることはできません。家族を養うには、銭しかなかった。銭をもらうためには己の才能、特技である剣を使うしかなかった。彼の気持ちが痛いほどわかります。斉藤一を恐喝するあたりは、ちょっとやりすぎのような気もしますが…
貫一郎と同じく、妻と子供を持つ身としては、今の自分を見直さなければと、深く反省した次第です。
天切り松闇がたり 第1巻 闇の花道
2003/01/08 11:00
相変わらず切れが良くて泣かせます
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不覚にもまた通勤電車の中で泣いてしまった。
大正時代を生きた伝説の泥棒、天切り松が昭和の刑務所の中で語るお話です。
「闇がたり」とは半径2〜3mにしかその声が届かない泥棒独特の発声術のことらしいです。私はもちろん聞いたことはありませんが、読むうちに雑居房の冷たい床や壁を伝わる彼の声音が染みてくる気がしました。
浅田さんの江戸弁は本当に切れが良くて、地方出身の私には江戸っ子は憧れです。江戸っ子の洒落と啖呵が随所に出てきてテンポがとても良いので読みやすいと思います。
任侠路線では「プリズンホテル」、東京を語るなら「霞町物語」などもお勧めです。
文庫版第2巻も出ていますので必ずそちらも読みたくなります。
その後のシリーズも早く文庫化されないかなぁ〜。
文体とパスの精度
2003/01/07 18:19
こういう友人関係に憧れつつ
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こんな面白い本が出版されていたことに気が付かなかった。まずはそれを後悔しながら、お正月休みに一気に読みました(読むのが極端に遅い私でも3〜4時間で読めました)。
私はお二人とも大のファンなので、できれば仲間にいれて頂きたいけれど無理だよね。だからこの対談集&メール記録を読みながら少し仲間になった気分を味わうことができました。
龍さんに関しては、その価値観について既に過去の著書その他のメディアで知るところだったので、相変わらず鋭いなァ〜という感想です。特に最後方のメールで書いていた、貴乃花が怪我をしながら優勝を決する土俵に上がったことに対する違和感。時の(今もそうだけど)総理大臣が「感動した!」と叫んだあの「事件」についての龍さんのご意見はごもっとも。凡庸な私は皆と同じように感動していたが、どこか冷めていたことを覚えている。その理由がわかったような気がしました。
ヒデさんは、マスメディアでは決して伝わらない、とても素直な彼が出ています。私は彼のホームページもよく見ているので違和感ありませんが、彼をあまり知らない人が読んだら確実に印象が変わると思います。
それにしても、本当に日本のマスメディアの凋落は腹立たしいね。少なくとも何が事実なのかを正確に伝えて欲しいね。インターネットという媒体でそれぞれの本音が読める時代で良かったよ。
この本を読んだら次はぜひ「悪魔のパス、天使のゴール」をお勧めします。こちらも面白いよ〜。なお、村上氏は「竜」ではなく「龍」です(このサイトよく間違ってるよね)。
最後の家族
2001/11/19 13:22
いろいろ考えさせられた
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龍さんの小説はやっぱりおもしろい、というより今回の作品はいろいろ考えされられました。自分自身は父親の立場で読んだけど、読む人のそれぞれの立場でいろいろ考えさせられると思います。
それと同時に、ドメスティックバイオレンスの本質を女性弁護士から語らせるくだりは、「なるほど、そうだったのか」と目からうろこ。ある意味ミステリーの謎解きの瞬間みたいで、気分すっきり。(40才会社員の意見でした)
四日間の奇蹟
2004/07/14 18:04
生きる者が逝く者から得るもの
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ピアニストと少女との出会いからして奇蹟だと思うけど、
そのピアニストが指を失う事件に遭遇するのも奇蹟だ。
本書にはいたる所で奇蹟が起こる。
少女は、逝く両親から奇蹟の能力を残される。(決して事件が能力の引き金では無いけれど)
また、看護士からも眠っていた能力を残される。
ピアニストは、その看護士から生きる勇気と目的を残される。
それぞれが、生きる者へ何かを残すことで、その人生を終えていくのである。それが人生かもしれないし、生きてきた証なのかもしれない。
生きることと死ぬことの意味を考えさせられました。
流沙の塔 上巻
2003/02/13 19:19
裏切りと裏切りの中国と言う国と人種
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船戸さんらしい、大陸をまたにかけた冒険小説です。しかし、舞台が中国大陸であるからか、中国人が登場するからなのか、裏切りの連続です。昔読んだ「ワイルドスワン」や「逃(TAO)」から受けた印象もそうだったけど、中国(あるいは中国人)に対して、いい印象が持てないです。実際は立派な方もたくさんいるでしょうが、天安門事件以来どーも信用できない。本書はあくまで小説ですから、そのイメージで中国(あるいは中国人)を語るのはやめましょう(自省)。
さて、何が面白いかと言えば、誰が味方で誰が本当の敵なのか最後まで分からないところです。理不尽な理由で流沙のごとく流される、日本と中国の二人の青年を軸に物語は進みます。その裏で動く様々な妖怪たち。ふたりを押し流す流沙はやがて、砂漠の塔で交わります。
しかしよく死ぬ。大した理由も無く、80歳を超したじいさんまで殺してしまう。結局ラストで生きていたのはほんの数人だけ。それもやはり実際には何も行動しなかった黒幕の連中だけが生き残る。ちょっと、殺し過ぎかもね。
総括すると、醜いエゴイストたちの裏切りと騙し合いの物語かな?
すべての雲は銀の… 上
2004/06/22 13:50
上下巻まとめての感想です
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何とも癒された気分になります。
そして、日頃感じていた違和感を園主(えんしゅ)の言葉として聞くことで、生きることの方向性を確認できたと思います。
我が家でも、梅雨が始まろうかという6月の初めに「秋刀魚」が食卓に出てきてびっくり! 「おいおい、何も今の時期に秋刀魚を食べなくてもいいだろう。魚なら他に旬の物があるだろうに」と、日頃食事には一切の不満を言わないことにしている(なぜなら自分で作らないから)私も思わず言ってしまったものです。作る側にしてみれば「手に入るんだから、何でもいいじゃない?」という軽い感覚なのだろうが、これが初めてでは無いだけに、どうにも違和感がぬぐえなかった(冬にかぼちゃや枝豆出したりするからなぁ)。
人間(特に日本人)は、その季節に取れる一番おいしい素材を食べるのが一番! 体の造りもそうできているような気がします。
季節感の無い都会の生活にやや疲れ気味の私は、「かむなび」で、心地よい時間を過ごすことができ、良い静養になりました。
みなさんも良かったら訪ねてみて下さい。
M
2003/01/28 18:47
日常に潜む快楽と恐怖
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馳さんの短編集を読んだのは初めてでしたが、迫力ありました。
「不夜城」で、まったく感情移入できない主人公を描きましたが、本編でも同様に「何だこいつ?」的な人々が登場します。しかしながら、実はこう言う人たちやこう言う事件は日常的に存在するのではないかと思いました。ただ、自分が知らないだけで……
過激な性描写もさる事ながら、背筋を震わせる恐怖と、胸を締め付けられる切なさが随所から伝わってきます。他人事のように読みながらも、実はそこに登場しているのは自分自身ではないか?と気が付くかもしれません。馳さんの「力」を感じる一冊です。
青の炎
2002/12/24 18:31
黒の次は青ですか
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「黒い家」は怖かったですね—。その後いろいろ読みましたが、未だに「リング」と「黒い家」はダントツですね。
「黒」に対比させた訳ではないでしょうが、「青い炎」はその色が持つイメージ通りの展開と内容だったと思います。主人公は「青臭い」高校生で、舞台は「青い空」と「青い海」の湘南方面だし、でも「青い炎」は赤いそれより温度が高いんですよね?(多分)
全編をとおして「青臭さ」が漂いましたが、それが以外に懐かしく羨ましかったりしました。かなり頭の良さそうな主人公が、問題解決の手段として殺人を選んでしまったことと、結末に若干の疑問を残しますが、とても楽しめる一冊だと思い推薦します。
科学的な手法や論理の部分は私は読み飛ばしましたが、そういうのがお好きな方はこれも楽しめるかもしれません。但し、やはり完全犯罪はできないそうです(作者あとがきより)。
MOMENT
2002/12/05 11:55
死を目前にしたとき、何を望むだろうか?
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はじめは罪の無い御伽噺かと思って読んでたけど、本当はミステリーだったのね。
読み始めは、一章完結の短編連作集で、主人公の大学生が係わった死を直前にした人たちの物語だと思っていたけど…
ある意味センチメンタルで、でも人間の醜い部分も少し見えて、ショートストーリの結末にはちょっとひねりもあって、なかなか面白いと思いながらずっとこの調子でいろんな人の人生の終末にまつわる物語が(浅田次郎さんみたいに)語られるのかと思いきや…
後半、静かな展開の中にも気が付かなかった事実が明らかになってきて、主人公ともう一人の仕事人と思われる人との対決がクライマックスかな?
私自身は安楽死を肯定していて、本人とその家族の同意があれば実現されるべきだと思ってますけど、いろいろ意見が分けれるところでしょうね(現実の世界でも、女医さんが逮捕されましたけど…)。
多分、私も死を目前にしたとき仕事人に頼むと思います。安らかな最後を…