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リリー・フランキー、60歳の苦言「ルールを押し付けられるとおじさん・おばさんは苦しい」

ルールを押し付けられると、みんな苦しい

リリー・フランキーさん――そういう心境とは意外でした。 リリー:そうですか(笑)。でも、前からそんなに、なんですよね。社交的に見られがちなんでしょうね。 最近雑誌やテレビを観ると、社会の規範やルールをメディアごと押し付けて来るということがあるじゃないですか。みんなが独特の息苦しさを感じている気がします。若い時よりも歳取った今のほうが息苦しく感じるから、もっと自由にやりましょうと思う。 人のルールを押し付けられると、おじさんやおばさんは、みんな苦しいんじゃないかと思うんですよ。そうなってくるとできることと言えば、もう社会と一線を引くことくらいなのかなと。 でも、ケアハウスにそうそうに入った人が上手くいかなくて出てきちゃうという話もある。孤独と社会性の問題の折り合いは、誰も最後までつかないのかなとも思いますね。これはもう僕だけじゃなくて、みんな社会と折り合いをつけることが難しいのかなと。 ――リリーさんご自身は、この先、この社会でどう生きていこうと思いますか? リリー:そうですね。やっぱりどんどん世界、世間を狭くはしていきたいです。こういうふうに海外のスタッフとセッションしたり、そういう機会が最近増えましたけれど、そういう時はどこかいい世界の広がり方をしている気がしているんです。「あ、こういう考え方があるんだな」っていうことを知ったり、反対にみんな同じことで悩んでいるんだなということも知れたり。 そういうことを知れることは、息苦しさを解消するひとつの術かなっていうか、視線をよそに向けるっていうんですかね。内側ばっかり見ていると息苦しくなるけれど。

初めて生まれた「雪深い温泉宿に行きたい」という発想

『コットンテール』――今回の映画の主人公である兼三郎も、そう体現していけば幸せになれそうな感じがしますよね。 リリー:そうなんですよね。兼三郎が抱えているうつうつとした感じは、みんな多かれ少なかれ同じだろうなって。みんなそんなに家族や社会と折り合いがついてないでしょうと。 ――ちなみにどんどん世界、世間を狭くしていこうと思われているなか、成し遂げたいことや夢はありますか? リリー:仕事に関してはないですね。出かけない仕事を少し増やして、またもう一回元に戻していくのもいいかなとは思っているんですけれど。いや本当にコロナ禍の時に自分で気づいたのですが、自分が怠け者だったってことを思い出したんですよね。家にずっといなきゃっていうことがあったと思いますが、あれ全然苦じゃなかったんですよ。 ――となると、仕事以外ではある? リリー:最近、やっぱこれ、歳取ったんだなって思うことがあって、若い時に一回も思ったことないことを、この間ちょっと思いましたね。 雪深い温泉宿に行きたいとか、若い時なんか発想としてはなかったけれど、しんしんと雪の積もっているところの温泉とか行きたいなと思ったんですよ。それでいろいろと調べたら、温泉は一年中行けるけれど、雪深いときって一瞬じゃないですか。そして今、暖冬でけっこうしゃびしゃびらしくて(笑)。あ、歳を取ると、こういうことを思うようになるんだなっていうことなんでしょうけれどね。 <取材・文/トキタタカシ>
トキタタカシ
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
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