母がマルチ商法で買ったサプリを姉がこっそり捨てたら引っぱたいた…「うちはおかしいのかも」マルチ2世の苦悩とは
―連載「沼の話を聞いてみた」―
「毎日の食事に、おちょこのような小さな容器が添えてあるんです。中身は3~4種類のサプリメント。
服用を拒否することができない、無言のプレッシャーのようなものがありました。手をつけずにいると、『ちゃんと飲んでね』と念押しされる。
一度、姉が反抗して、母の目を盗んで捨てたことがあるのですが、見つかってひっぱたかれていました」
マルチ商法の健康食品(主にサプリとプロテイン)で、家族の健康管理に血道を上げる母と暮らした朝比ライオさん(以下、ライオさん)の話である。
母はライオさんが小学生くらいのときに、マルチ商法にハマった。
「小学生時代は『サプリとプロテインを渡される』くらいの感覚でしたが、6年生くらいになると、『うちはおかしいのかも』と思うようになりましたね」
ライオさんは、2022年3月に任意団体「マルチ被害をなくす会」を立ち上げた。親がマルチ商法会社の会員だったことから「マルチ2世」を名乗り、同じような立場の人たちの悩みをまとめ、メディアやSNSを通じて課題提起を行なっている。
マルチ商法にどっぷりハマっている母とは、さまざまな経緯をへて距離を置き、現在は企業で働く2児の父である。
特定商取引法で「連鎖販売取引」と定義されている、マルチ商法。「ネットワークビジネス」「マルチレベルマーケティング(MLM)」と呼ばれることもある。
組織に加入して商品を販売し、勧誘して会員を増やすと紹介料やマージン等の利益を得ることができるので、連鎖的に拡大していくのが特徴だ。
この商法の商材は多岐にわたり、昨今では情報商材などの「ものなしマルチ」も存在するが、ライオさん母は、もっともスタンダードだといえる健康商品を扱う、超大手マルチ会社の会員だ。
マルチ商法がニュースに上るのは一般的に、次のようなものが多いと思われる。“勧誘方法が法にひっかかり、行政処分が下された”“誇大広告の禁止に触れた”。
最近では、SNSでの内部告発が増え、パワハラの実態や、煽りの手口、健康&金銭トラブルにまつわる体験談などが知られるようになってきている。
しかしそれらは「わかりやすい被害」の一部だろう。「家族がマルチにハマった」という当事者たちからは「話も心も通じない家族」に振り回される虚しさや、常に家族を警戒しなくてはいけない生活の心労を聞く。
マルチが家族を壊した
家族を信じられない虚しさ
自分が身内が友人が沼ったご体験談を募集中です。当連載における沼とは、科学的根拠のない健康法やマルチ商法、過激なフェムケアや自然派思想など、主に健康問題に関わるものにハマることを示します。
「女子SPA!」のお問い合わせフォームより、題名に「沼の話」と入れて、ぜひお気軽にご連絡ください(お返事に時間を頂戴する場合もあります)。
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