【ホテルニューグランド（①時を刻むクラシック・ホテル）】（神奈川県横浜市　旧国名：武蔵）

＜横浜の数奇な運命に立ち臨んだクラシック・ホテル　重厚な名建築の中に多くのドラマを生み出しました＞ 全国にクラシック・ホテルは数あれども、横浜山下町の“ホテルニューグランド”ほど、日本の歴史の深淵に立ち臨んだ、数奇な運命を持つ存在は他にありません。ニューグランドは、その始まりからして、歴史の大きなうねりを暗示するホテルでした。開業したのは1927年。4年前の関東大震災で横浜は壊滅的な被害を受けており、幕末の開港以来、全国に先駆けて発展してきた中心市街地は灰燼に帰しました。港に臨む山下町もその例外ではなく、主に外国人を受け入れていたホテルも軒並み倒壊。日本の玄関口たる横浜の、その玄関口である山下町一帯の復興は迅速にしかし綿密に進めることが急務となり、当時の横浜市長を筆頭とした政財界の要人が力を合わせ、新ホテル、ニューグランドの建設計画が押し進められました。ホテルの初代会長に就いた井坂孝（いさか　たかし　1870〜1949）は、古巣である東洋汽船から、国際社会に通じたオープニングスタッフを揃えました。さらにその人脈を通じて、初代支配人アルフォンゾ・デュナンや、初代料理長サリー・ワイルを招聘し、名実ともに当代一流のホテルとして骨格を整えたのです。 横浜が貿易港として急速な復興を遂げると共に、ニューグランドはその玄関として、そしてシンボルとして世界の社交界の舞台へ加わることとなります。1932年にはチャールズ・チャップリン（1889～1977）が、1934年にはベーブ・ルース（1895～1948）がそれぞれ来日した際にニューグランドを訪れ、その思い出が華々しい旅の一幕に加わります。このようにニューグランドを訪れた多くの外国人の一人に、ダグラス・マッカーサー（1880～1964）の姿がありました。マッカーサーは1937年にフィリピンからの帰途で、夫人との新婚旅行を兼ねて来日し、ニューグランドに滞在したのです。しかしそれからわずか8年後、マッカーサーは連合国軍の最高司令官として厚木基地へ到着すると、その足でニューグランドへ向かい、3日のあいだ宿所としました。様変わりした世界情勢と自身の近辺、そして横浜の街の中にあって、マッカーサーが何を思ったかは定かではありませんが、彼が滞在した“315号室”は“マッカーサーズ・スイート”の異名で現存しています。 マッカーサーズ・スイートをはじめとする客室には、宿泊客あるいは特定の時日にしか入ることができないものの、宿泊客以外でも立ち入ることのできるカフェやBAR、ロビーなどでホテルの歴史を体感することができます。わけても本館の玄関を入ると真っ先に目に飛び込んでくるのが大階段。石造りの基盤にイタリア製のタイルが曲線を描いて組み込まれ、その中央を“ニューグランド・ブルー”と呼ばれる深い色合いのブルーの絨毯が布かれている様は、まさしくニューグランドのシンボル。遠近感を巧みに利用し、徐々にせり上がっていく構造は、一段一段を上るにつれて高揚感を湧き立たせる巧みな演出と見て取ることができ、階段というよりさながら“舞台”のよう。事実、多くの偉人たちがこの階段を踏みしめただけでなく、現今では結婚式用の写真の撮影場所としても高い人気を誇っています。階段を上り詰めた先に掲げられているのがCITIZENの時計。ニューグランドが重ねてきた歴史の重要な刻みが表現されているかのようで、このシンボリックな配置には、銀座の和光ビルを手掛けたことでも知られる、設計者渡辺仁（わたなべ　じん　1887～1973）の手腕が存分に感じられるもの。さらに時計を囲むようにして天女の姿が刺繍で描かれ、和洋折衷様式の絶妙なバランスを発しています。階上のロビーでは、アンティークや石柱がいっそう重厚な雰囲気を醸していながら、窓外の山下公園の灯り、道路を行き交う無数の車列の幽かな音が弾むため、そのコントラストを浮き彫りに。夜、ロビーからゆっくりと、木を透かして氷川丸の舷灯を望むにつけ、このホテルを舞台に催された人間と時代のドラマの奥行きに深遠な時の流れを感じずにはいられませんでした。 ひとり旅おすすめ度：★★★★（人はいるけど少なめ。静かに観光できる！） 探訪日：2月第4週日曜18時ごろ アクセス：元町・中華街駅から徒歩で1分ほど ※この投稿の写真の一部は友人から借用しました #ホテルニューグランド #ニューグランド #元町・中華街 #元町中華街 #山下公園 #横浜旅行 #横浜観光 #横浜市 #神奈川旅行 #神奈川観光 #横浜港 #国内旅行好き #国内旅行好きと繋がりたい #建築好き #建築巡り #建築デザイン #空間デザイン #近代建築 #名建築 #レトロ建築 #洋館 #洋館巡り #洋館好き #建築写真 #建築設計 #建築散歩 #クラシックホテル #歴史好き #ひとり旅 #旅のある暮らし