第382話 ホールリハーサル一日目 宮崎美香と芹沢瑠々
園香たち五人に気付いた
「
宮崎が振り返り挨拶をする。
「おはようございます。よろしくお願いします」
「遠いところ、ありがとうございます」
真理子と青葉が丁寧に挨拶する。隣にいた小さな
「美香先生よろしくお願いします」
真美が緊張した表情で挨拶すると宮崎が微笑んで頷く。
「真美、頑張ってるみたいやな」
真美も硬い表情で微笑みながら頷く。
「
真美が
「真美ちゃんもな」
と言って
「なんや、大先輩に向かって、その挨拶」
と言ってグータッチをする。
「
「わかってる。真美ちゃん、月曜日から
と
「どっちが先輩や」
と苦笑いする真美の姿を見て、周りの皆に笑顔が広がる。
その後少し真理子と青葉、すみれが宮崎と話をして、真理子が二階席に案内する。
「ここが二階席になります」
「ありがとうございます」
丁寧に礼を言う宮崎。園香が二階席に入る扉を開けると『くるみ割り人形』の曲が聞こえてきた。
舞台では出演者たちが『ねずみと兵隊人形の戦い』の場面を確認していた。
「真美ちゃん、
「そうやな。よく知ってるやん」
「いっぱい、練習してきたからな」
「へえ」
感心した様に
「じゃあ、私たちはここで観させて頂きます」
と宮崎が言う。
「ゆっくり観ていってください」
と言う真理子に、宮崎が微笑みながら、
「今回は私たち、他の出演者の人たちにあまり見られない方がいいみたいやから、リハーサル観させてもろうたら帰りますね。帰るとき、挨拶できんかもしれませんが」
そう言うと、真理子も申し訳なさそうに言葉を返す。
「ごめんなさい。折角、来てくださっているのに、こちらも何もできず」
「明日も、また、朝から来させてもらいます」
ここへ来る前に一度、宮崎にスケジュールを伝えていたが、もう一度、真理子が明日のスケジュールを伝える。
「明日は午前中、一通り最初から通した後、午後から本番通りのリハーサルをします。この時、知里ちゃんという子の幼稚園の皆さんにも観て頂く様にしています」
「明日は午前中から観させて頂きますね」
宮崎が微笑みながら言う。
「それでは私たちは失礼してリハーサルに戻りますね」
と言う真理子に、もう一度、宮崎が丁寧に礼を言った。
園香たちも丁寧に頭を下げ舞台に向かおうとした、その園香や真美たちの背中に宮崎が声を掛けた。
「真美、踊るときは、いつでも本番やで」
「はい」
「何を踊る時でも主役やで」
「はい」
「この世の中に脇役なんておらんねん。みんな自分が主人公の物語を生きてんねん」
「……はい」
真美と一緒にいた園香や、すみれも宮崎から何かを教えられた気がした。
いつか大阪に行ったとき、すみれが言った、宮崎バレエのレッスン生は小さい子どもから大人まで、誰もが想像以上に上手だと……
いつでも本番、何を踊る時でも主役、と言った今の言葉に宮崎バレエの精神的な強さや想像以上の上達に繋がる何かが秘められているような気がした。
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