原作はジェシカ・ブルーダー『ノマド:漂流する高齢労働者たち』(2021年)
とされています。
その聞きなれない「ノマド」という言葉は、原義では「遊牧民/放浪者」ほどの
意味になるとのことですが、著者の意図は副題部分「漂流する高齢労働者たち」
に表されています。
では、その「高齢労働者たち」はなぜ「漂流」したのでしょうか。
このような説明になっています。
~200年、アメリカの大手証券会社である「リーマンブラザーズ」の破綻に
端を発する未曽有の経済危機(リーマンショック)が全世界を襲った~
その経済危機の影響は広範囲に及びました。
~現役世代だけではなく、リタイア世代にも容赦なく降りかかり、多くの高齢者が
家を手放すことになった。
家を失った彼ら彼女らは自家用車で寝泊まりし、働く口を求めて全米各地を
動き回った~
そして、その活動は甘いものではなく、
~専門職での経験があったとしても、それを活かせるような職がほとんどなく、
安い時給で過酷な肉体労働に従事するほかなかった。
そんな不安定な状況下でも、彼ら彼女らは自尊心と互助の精神を
保持し続けていた~
そうした彼ら彼女らを「現代のノマド」とでも言うべき存在と捉えたのが本作で、
本作の主人公(彼女)も「現代のノマド」の一人です。
臨時教員をやっていたが、工場の閉鎖で街の経済が大打撃を受け、そのあおりで
家を手放す羽目になった彼女でしたが、自家用車に最低限の家財道具を積み込み、
日雇いの職を求めて全米各地を流浪する旅に出ます。
本作は、そうした行動の中で、同じ境遇の人々と交流を深めていく彼女の姿を
通して、「現代のノマド」の実像を描き出していきます。
無垢な子供の「おばさんはホームレスなの?」との問いに、
「いいえ、ホームレスではないわ・・・ハウスレスかもね」の言葉のやりとりとか、
あるいは、水の流れに全裸の身体を浮かべるシーンは、ノマド自身の
「心の自由さ・解放感」を象徴した名シーンに感じられました。
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「ノマドランド」 2021年 監督:クロエ・ジャオ/
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フランシス・マクドーマンド/
主人公の女性には、フランシス・マクドーマンド/
1996年『ファーゴ』(監督:ジョエル・コーエン/)
2017年『スリービルボード』(監督:マーティン・マクドナー/)
そして本作、延べ三度にわたりAW主演女優賞を獲得した名優です。
2005年『グッドナイト&グッドラック』(監督:ジョージ・クルーニー/)
では、AW主演男優賞にニミネートされたデヴィッド・ストラザーン/
1994年『激流』(監督:カーティス・ハンソン/)
1995年『黙秘』(監督:テイラー・ハックフォード/)
などでも濃い印象を残しています。
そして、この二人を除いては、
~プロの俳優は起用されず、実際に車上生活を送っている人々が起用された~
と紹介されています
監督は本作でAW作品賞と同監督賞を受賞した中国の女性監督クロエ・ジャオ/
が務めましたが、残念ながら他の作品についてはよく知りません。
アンティークな作品が多くて恐縮至極にございます。
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