本日12月11日は、山本富士子の生誕93周年です。
それを記念して山本富士子の作品を紹介しています。
『夜の河』(1956)
監督 吉村公三郎
撮影 宮川一夫
共演 上原謙、小野道子、阿井美千子、市川和子、川崎敬三、東野英治郎
【あらすじ】
京都堀川の東一帯に京染の店が立ち並んでいる。
丸由と名乗る舟木由次郎の店もそこにあった。
年老いた由次郎に代わり、長女のきわが一家の中心となり、ろうけつ染に心血を注いでいた。
ある日、きわは唐招提寺を訪れた際、桜を見に訪れていた阪大の教授・竹村幸夫と知り合う。
二人は惹かれ合い、やがて恋に落ちるのだが、竹村には病気の妻がいた……。
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大ヒットになった作品でもあり、山本富士子の出演作品のなかで、人気の高い作品です。
京染の店が舞台となり、山本富士子が着物の反物を染める女主人の役を務めていることもあり、色彩が重要な役割を果たす物語で当時としてはまだまだ少なかったカラー映画で撮られており、大映としても意欲的に取り組んだ作品のようです。
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撮影監督は、日本を代表する撮影監督の1人の宮川一夫です。
彼自身も、前年に『新・平家物語』で初めてカラーを手掛けたばかりです。
その撮影監督が大映のトップスターへ上がる直前の山本富士子をキャメラに収めるわけですが、カラーならでは陰翳のある作品となっております。
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冒頭から、寒色を中心に柔らかい色調で撮られるのですが、夏のある夜上原謙に呼び出れ、夜に密会をするシーンで、色調が大胆に転換されます。
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驟雨に遭った2人は、鴨川に面した茶屋で雨宿りすることになります。
宿屋の灯に照らされた2人が、シルエットで浮かびあがります。
部屋に通されると、そこには蛾が入り込み、宿屋のおかみは、部屋の照明を消してしまいます。
すると、宿屋の外にある提灯の灯だけとなり、その灯が山本富士子と上原謙を包むのです。
それまでの、寒色を中心とした色使いから、急に、黄金色と黒とがまざりあった、極めて審美主義的な画調となり、この映画最大の見せ場となります。
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山本富士子は、ビールを上原謙に進め、2人で乾いた喉を潤します。
ほとんど画面のつなぎの無い長廻しのショットで、静かにキャメラが山本富士子に寄っていきます。
山本富士子の顔はほぼシルエットだけとなり、額と鼻と頬骨だけとなります。
そこで、山本富士子は、地方大学へ転勤になる上原謙に「なんでそんな遠いところに...」と自らの思いを告げ、上原謙と静かに顔を重ねあわせるのです。
そこで、ようやく、山本富士子の美しい瞳と唇が、浮かび上がります。
その繊細な美しさたるやどうでしょう。
この上質な画面だけで、この映画は十分かもしれません。
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なお、もう1つの見どころは、山本富士子が、自らの作業場で、着物を肩まで下ろして、前傾姿勢で髪を洗っているシーンです。
黒く豊かな髪に櫛を通したあとで、上半身を上げると、黒髪が前方から後方へと移動します。
山本富士子の美しいデコルテの白さが目に入り、その髪の黒さとともに、鮮烈なコントラストを生みます。
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このように、美しい細部に満ちた作品です。
『ツィゴイネルワイゼン』以降の鈴木清順の作品にも似た、和製のファンタジーですが、個人的には、こちらのような、お約束のメロドラマの方に惹かれてしまいます。
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