不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


羽田新ルート|従来ルートの運用のみでは常時、御指摘の「1時間当たり最大95回」の運用を行うことは困難(政府答弁)

第216回国会(24年11月28日~12月24日)の衆議院の質問主意書107件のなかに、84番目として、羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。

阿部祐美子 衆議院議員(立憲民主党)が12月17日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

阿部祐美子 衆議院議員(立憲)

阿部祐美子 衆議院議員(立憲)
衆議院 文部科学委員会 24年12月18日 動画より)
阿部祐美子 衆議院議員(1期、立憲民主党、 元新聞記者、岡山大学卒、60歳)

2024年7月29日に国土交通省が提供した同年2月、3月の羽田空港離着陸詳細運用実績の新ルートおよび従来ルートそれぞれの処理実績数(南風運用部分)を見ると、新ルート導入効果がどこまであるのか疑問に思われる。

(下図は筆者が追記)

国土交通省が提供した同年2月、3月の羽田空港離着陸詳細運用実績
国交省が提供した24年2月・3月の羽田空港離着陸詳細運用実績

※詳しくは、「国交省ロジックに綻び!? 従来ルートでも離発着「90回/時」以上の運用あり」参照。

特に新ルート特有の何らかの運用障害に伴って、新ルートの運用時間帯にもかかわらず従来ルートへの運用変更が発生している。またWEBの運航軌跡から、毎日2度行われる新ルートと従来ルート切替え時における時間ロスの可能性も見られる。

そこで以下の事項について質問する。

問1:従来ルートを運用しても十分さばけるのではないか?

南風時の時間ごとの離着陸運用実績を見ると、繁忙時間帯を中心にそれぞれ1時間当たり90回を超える実績がある。冬場のため南風運用自体が少ない中の情報ではあるが、元々従来ルートの時間値(理論的な処理能力)82回では増便が厳しいために時間値90回が実現できる新ルートを始めたはずである。


ところが従来ルートでは1時間当たり最大95回、新ルートでは最大94回の実績が報告されており、この結果は2020年3月から始まった年間3万9000回増のダイヤ計画が従来ルートを運用しても十分さばけるのではないかと推認できる。


従来ルートと新ルートの理論的な時間値の能力差はあるとしても、現在国交省が2030年代までをにらんで計画している羽田の処理能力は現状の能力のまま変更せず、成田は2028年には第3滑走路増設で合わせて年間100万回の処理能力を実現するとある。であれば、都心上空で騒音被害をはじめ多くの問題を引き起こしている新ルートを継続する合理性が薄弱に思えるが、政府の見解を問う

答1:当該従来ルートの運用のみでは常時、御指摘の「1時間当たり最大95回」の運用を行うことは困難

御指摘の「従来ルートを運用しても十分さばける」の意味するところが必ずしも明らかではないが、交通政策審議会航空分科会基本政策部会首都圏空港機能強化技術検討小委員会における検討の結果、平成26年7月8日に「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ」において、御指摘の「従来ルート」で「常時達成可能な時間値は出発41回・到着41回(合計82回)」であって、御指摘の「新ルート」の運用により御指摘の「時間値」を「90回(出発46回、到着44回)」に拡大することができると示されていることから、当該従来ルートの運用のみでは常時、御指摘の「1時間当たり最大95回」の運用を行うことは困難である。


また、御指摘の「年間100万回の処理能力を実現する」ためには、成田国際空港における御指摘の「第3滑走路増設」に加えて、当該新ルートの運用が必要である。当該新ルートについては、将来的な航空需要の拡大を見据え、我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散等の観点から、引き続き運用する必要があると考えている。

問2:過去3年、新ルート運用時間帯にこれを回避して従来ルートで運航した回数?

新ルートの午後の運用は原則午後3時から7時までの4時間のうちの3時間であるが、南風運用実績を分析すると、新ルートの運用時間帯であるにもかかわらず従来ルートで運用しているケースがみられる

天候等による緊急回避的な措置だけでなく、羽田特有の南西の風が強い場合に横風であおられることを避けるために従来ルートに変更しているケースもあると考えられる。


そこで、過去3年間において新ルートの運用時間帯にこれを回避して従来ルートで運航した回数を可能な限り示した上で、その理由の内訳を伺う

答2:悪天候が1日、悪天候及び南西からの強風が2日、・・・

お尋ねの「新ルートの運用時間帯にこれを回避して従来ルートで運航した回数」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和3年度から令和5年度までの過去3年間のうち、御指摘の「新ルートの運用時間帯」に御指摘の「従来ルート」のみで運用を行った日数は28日であり、その理由の内訳は、経路上の悪天候が1日、経路上の悪天候及び南西からの強風が2日、南西からの強風が23日、その他の理由が2日である。

問3:(新ルート/従来ルートの切替え時間帯に)時間ロスの発生の可能性、技術的な課題?

国交省が随時WEB動画で提供している運航軌跡を見ると、午後の南風運用時に従来ルートから新ルートへの切替え、また逆の従来ルートへの戻し時それぞれの運用状況を概観すると、切替え時間帯に羽田に近い離着陸の空域にほとんど飛行機がいない状況が発生している。

安全確保のための技術的に必要な措置と思われるが、結果として切替えをしないシームレスな運用の場合に比べ、時間ロスが発生しているのではないか。さらに、羽田離着陸遅延の常態化の一因となってはいないのか。時間ロスの発生の可能性を、技術的な課題があればそれも含めて、政府の認識を伺う

答3:御指摘の「技術的な課題」はない

御指摘の「時間ロス」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「午後の南風運用時に従来ルートから新ルートへの切替え、また逆の従来ルートへの戻し」は、御指摘の「新ルート」の運用のために必要であり、当該新ルートの運用により、1(問1)で御指摘の「時間値」を90回とすることを可能としている。


御指摘の「切替え」及び「戻し」の実施に当たっては、安全確保のための措置を含め一定の時間を要するが、その際に行う措置は、風向の変化に伴う滑走路の運用方法の変更と同様であり、御指摘の「技術的な課題」はない


また、御指摘の「羽田離着陸遅延の常態化」の意味するところが必ずしも明らかではないが航空機の運航の遅延は、一般的には、天候や航空会社の事情等の複合的な要因により生ずるものであると考えている

雑感(今後の質問主意書に期待したい)

阿部裕美子氏は、昨年の衆議院議員選挙の小選挙区で石原宏高氏(自民)に敗れ、比例で復活当選した1年生衆議院議員。その前は品川区選出都議1回(都議の前は品川区議5回)として、何度も羽田新ルート問題を取り上げていた(たとえば、24年第1回都議会定例会)。

区議(当選5回)から都議(当選1回)を経て、自民が政治とカネの問題で逆風を受けているタイミングで、一気に衆議院議員へと駆け上った。今回、満を持して(!?)質問主意書を提出。

ただ、質問主意書を練る時間が足りなかったのか、政府からは「〇〇の意味するところが必ずしも明らかではないが」という常套句を4回も食らっている。

「1時間当たり最大95回できる」の更Qに加え、国交省はこれまで羽田新ルートの導入により年間3.9万回の離着陸枠を増やしたと喧伝してきたが実際には「新ルートによる効果は最大でも2.6万回(正確にはさらにそれ以下)にとどまること」など、今後の質問主意書に期待したい。

あわせて読みたい

2024年6月1日、このブログ開設から20周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.
  翻译: