何で、そんなことを聞くんだ?
ジュンペイは、そう思うけれど。
「いや、特に、なにも」
小声でささやくように、返事をする。
「でも…どうしようか?」
まだ、前方の老人たちは、自分たちには気付いてはいないようだ。
(ジュンペイのじいちゃんが、気付いていない限りは)
だが、後をつけて、行き先を確認することしか、裕太は頭になかったので、
これからどうするのか、まだ何も思いつかない。
「どうするって…」
ジュンペイが、一歩足を踏み出そうとする。
「あっ、ちょっと」
あわてて裕太が腕を引く。
「なんだよぉ」
すっかりその気になっていたので、ジュンペイはブスッと不機嫌を
丸出しにする。
「ちょっと、待って、あれ!」
ふいに裕太が、岩の陰にジュンペイを押し込めると、老人たちのいる
反対側を指さす。
「なんだよ」
憮然とするけれど、ジュンペイはしぶしぶその方向に目をやる。
「何があるって、言うんだよぉ」
どうせ、大したことはないだろ、と目を向ける。
すると、ジュンペイたちが、ずっと探していたものが、そこに
無造作にポンと置いてあるのが目に入った。
「えっ」
ジュンペイが、小さく声をもらすのを、裕太は横目で確認する。
「なっ」
ほら、と裕太はジュンペイを見る。
「あれって、もしかして…」
どうして、とジュンペイが呆然としている。
「そう、ジュンペイの」
「えぇっ?なんで、ここに?」
あれほど探しても、見つからなかったものが、期せずして今目の前に
放置されていたのだ。