『皇帝円舞曲』

 

    

                     1947年度作

 

 

1945年に失敗作だと思った作品ー(失われた週末)がアカデミー賞、

カンヌのバルムドール賞、その他諸々の賞を総なめにしたその後の

このミュージカル映画は、

 

ワイルダー監督の作品の中では、

名作というわけではない。

 

かと言って

一般の娯楽作品よりは当然面白いし、

特にワンコの名演が

素晴らしい。ので、ご紹介いたします。

 

 

主演のスミス氏にビング・クロスビー。

ヒロインの伯爵令嬢に、

ジョーン・フォンテインという

ちょっと洒落た映画でござります。

 

皇帝役にリチャード・ヘイデンが扮してます。

(サウンド・ミュージック)でトラップ大佐の友人役。

ザルツブルグ音楽祭にトラップファミリーを出演させたあの方です。

 

 

米人の蓄音機のセールスマンがウイーンにやってくる・

蓄音機を爆弾と間違えられたり、伯爵令嬢と恋が芽生えたり、

飼い犬も同時に恋をしてひと騒動起きる。

 

クロスビーの美声は相変わらずに心地よいソフトな美声で

聞き応え十分。

 

犬が物語をけん引してくれるおかげで思ったより楽しめる。

ワイルダーのカラーは薄まっているが、デイズニー映画を見ているようで

わたしは個人的には好きな作品でした。

 

人間さまの恋💕と

ワンコの恋💕が

同時進行。

 

なんやかやと理屈が多くて、こ難しい言葉の羅列の映画レビューもいいが、

こういった手放しで楽しめる作品は理屈抜きで楽しい。

 

かのレコード会社 ヴクター の商標登録犬 ニッパーがモデルなのかな。

 

   

 

音楽はビクター・ヤング

衣装担当はイデス・ヘッド

共にアカデミー賞にノミネートされました・

 

 

     〜お話〜

 

 

オーストリア皇帝に蓄音機を売りに来たスミス(クロスビー)は、

アメリカから愛犬と共に

商売にやって来たセールマンである。

 

案内されたロビーの待合室には

皇帝に謁見する人たちの順番待ちで

スミスは愛犬バトンズと末端の席に座った。

 

お行儀の良いバトンズ君は、

スミスが傍に置いたトランクの上に

チョンと乗って座った。

 

伯爵令嬢のジョアンナ(フォンテイン)の愛犬シェラガーデが斜め前にいて、

バトンズと目が合った。

 

バトンズが気に食わないのか、

ジェラガー嬢はバトンズに嫌なサインを送ったようで、バトンズ君はいきなり

お嬢(令嬢の愛犬)に飛びかかっていった。

 

このことがきっかけで、

スミスとジョアンナは

知り合うことになったのである。

 

ただ、ジョアンナは貴族独特の

プライド高き性格で、

俗人でしかも外国人ということで

スミスをあからかに見下した態度で二人の仲は決して良好ではなかった。

 

 

ジョアンナの愛犬シェラガーテは、

皇帝の愛犬との交配が決まっており、

ジョアンナの父親の将軍は、この交配が実現すれば皇帝の側近になれると意気込んでいる  ので、

バトンズに近寄られては

迷惑なのだが...

 

令嬢の父親が将軍なのに、

頼りない人で、

経済的にも破綻しており、

お嬢(愛犬)と皇帝の愛犬との交配に必死である。

 

しかし、

肝心のお嬢の様子がちとおかしい。

 

心配した父親らは獣医に見せるが、

どうやら情緒不安定。

 

やがて、お嬢(ジョアンナの愛犬)は邸から

脱走してしまったのです。

最初はあんなに

険悪な二匹さまだったのに

 

お嬢はスミスの愛犬バトンズに

恋心💕を抱いたようでございます。

 

ボタンズのほうも惚れられれば ねえ・💕

 

ジョアンナとのトラブルが原因で

国外追放を宣告された

スミスとバトンズ。

 

アルプスを越えて・・・を目指して、てくてく人と犬は歩く。

それを知ったジョアンナは愛犬の為にスミス氏を車で追う。

 

ジョアンナはいつしかスミス氏に恋をして夜も眠れぬ様子。

お嬢も眠れず、ホテルの窓辺でボーっと・・・

ジョアンナは

お嬢に言って聞かせる。

”あきらめるのよ、あんな犬はほかにもいるわ。

お願いだから聞き分けて・・明日は晴れ舞台なのよ”

皇帝の犬との交配に向けて・・・かな。

 

すると窓の外からスミス氏の歌声が♪~

うっとりと窓辺で月の光の下、聞きほれるジョアンナ。

 

ベッドからとぼとぼとお嬢も歩いてきて二人で聞きほれる。

ジョアンナはお嬢に言う。”似た者同士ね!!”

このシーンは素敵です。

 

バトンズの方もなにやら様子が

おかしく、

スミスはホテルから離れた小島に

連れて行き、リードで繋いだのです。

 

そのバトンズに会いに

湖を渡って会いに行くお嬢。

邦画のマリリンみたく...

ジョアンナはすぐさま、スミスと一緒にボートで追う。

 

スミスはその2匹の犬に向かって

持ち前の甘い声で

歌うとバトンズとお嬢はうっとり。

ジョアンナもつられてうっとりと

スミスにますます夢中になったのです。💕

 

スミスとジョアンナはすっかり恋仲となり結婚を決意するが、

その結婚には皇帝の許しを乞わねばならず、

その身分の違いからほぼ不可能。

 

どうなるんでしょう・・・・

 

ネタバレ行きますか??

気になりますよね。

 

ワンコは引き離され、お嬢は皇帝のワンコと交配させられていたはず?だった。

 

お嬢が産気づいて獣医が

子犬を取り上げる。が、真っ青!!

 

ボタンズはスミスが止めるのも聞かずに、犬舎へまっしぐら。

 

追いかけるスミスは何のことかわからない。

ジョアンナに一度だけお嬢にボタンズを合わせてやってくれと懇願するが

”無駄よ!”と振られた腹いせに・・・

 

が、生まれた子犬は白い子犬三匹。

ボタンズ君は生まれて来る子犬が

自分の子だとわかっているから

心配でたまらなくて犬舎へやってきた。

 

ジョアンナの父と獣医は子犬を処分とこっそりことを運ぼうとするが。

ボタンズを追ってきたスミスは事情を察し、子犬を奪い、

舞踏会の始まったホールへと向かい、大きな声で皇帝に叫ぶ。

 

血統がそんなに大事か・子犬を処分なんてひどいと訴える。

血統のない犬の子は処分か!!  と。

 

何も知らなかった皇帝はスミスにジョアンナと踊って来い・・子犬は

  わたしが育てると・・・

洒落たラストでした・・・・

 

ーーーーーーー

 

 

宮殿ではお商売をさせてもらえない・・・・

スミスとバトンズは追い出された。

 

ワンコの恋を温かく見守るふたり。

 

 

 

身分違いの恋に

ワイルダー監督はこの平凡なストーリーに

ワンコ同士のラブストーリーをダブらせた。

ここが、ワイルダーの

才気でしょう。

 

そして、この犬たちの名演技。

ビックリします。

 

この犬たちの演技を観るだけでも一見の価値あり。

犬好きのわたしには

スミスの商売道具である黒いトランクの上に

キチンと座っているバトンズの姿を見るとたまらなくかわいいです。

 

バトンズとお嬢犬のラブシーンもいいです。

 

それとお嬢がお産をするところをバトンズが心配そうに窓から覗き込むシーンは

たまらなく愛おしいです。

 

それから・・蓄音機をのぞき込む犬・・・そう、あのメーカーを連想しますね。

ニッパー君・・そんな遊び心も面白い。

 

ね、そっくりでしょ!!

 

しかしワイルダー監督はこのコメディの中にもピリリとしたスパイスを忘れない。

 

獣医がシェラガーテの診察をするのに、

フロイトの精神分析をクソ真面目に引用するところには、

フロイトに対する皮肉が込められていると思うし、

 

仔犬が生まれてくるシーンでは、

君主政治による身分制度への厳しい批判と、

その身分を守るための近親婚に

皮肉を込めている・

 

ワイルダーの出生地オーストリアに対しての

彼なり厳しいメッセージが込められているように思いましたね。

逆に、オーストリアの美しさも見事に撮られていました。

 

ただ、ミュージカル監督としての彼の演出力はどうなのかな?という不満は残った。

チロルの山村を活かしたヨーデルの合唱シーンや弦楽器の演奏。

ビング・クロスビーの甘い歌声と、村人らのダンス。

もっと迫力出してほしかった・・

 

どうやらミュージカル映画の才能はないかもしれない。

 

ワイルダー監督らしさが薄い。

ワンコの名演を楽しみましょう。

 

機会があればぜひご覧になってくださいな。

 

 

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