愛に恋

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オー・マイ・ガアッ! 浅田次郎

存亡禍福は皆己に在るのみ。天災地妖もまた殺(そ)ぐこと能わざる也。まるで今の私のようなことだが、舞台はアメリカン・ドリームの都・ラスベガス。友人に裏切られすべてを失ったお気楽中年男・大前剛、キャリアウーマンから娼婦に「転職」した梶野理沙、そしてベトナム戦争の英雄なのに落ちぶれたジョン・キングスレイ。人生くすぶりまくりのそんな三人が一台のスロットマシンで史上最高の大当たり5400万ドルを叩き出す、エンタテインな話。浅田次郎という作家は本当にバリエーションの広い小説家だと思う。おそらく早書きで勉強家。私はラスベガスに行ったこともないし、ギャンブラーでもないので、当地での常識や遊び方、ルール、専門用語など一切知らない。例によって著者は何度となく通ったツーで物知りのような書き方。僅か数十年前まで田舎町にすぎなかったラスベガスは今や世界最大のギャンブル観光地。 Las Vegasとはスペイン語で、Vegasは牧草地。 Lasは定冠詞である。論語、陽貨篇に曰く。「飽食終日、心を用ふる所無きは難いかな。博奕(ばくえき)といふもの有らずや。之れを為すは猶已むに賢れり」つまり孔子はボンヤリしているぐらいならバクチがあるじゃないか。何もしないよりよっぽどマシだとはっきり言っている。遊ぶことは決して悪行ではないと。ギャンブル依存で煩い人たちが聞いたら何と思うだろうか。ニュースなどでたまに高額配当の金を当てたなどということを聞くがあれのような話だ。併し決まりでは配当金は当てた当人の物で複数人で分け合うということは出来ぬ、そこが味噌なエンタメな話なのだ。

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