2SK170というFETトランジスタの代わりに出たの2SK2145という表面実装タイプのトランジスタです。しかも1チップに特性のそろった2個の回路が入っているので、2SK170の特性を合わせる必要がないという何ともお得なチップなんです。
この特性を活かしてぺるけ式ヘッドフォンアンプ Vr.4を作ろうと思います。ぺるけ式は差動回路を使っていて、特性のそろった2SK170がペアで二組必要なのです。そのためにはたくさんの2SK170を買って測定し、特性を分別しなきゃいけません。でも2SK2145を使えばその労苦が不要なので、よくこれを作ってくれたものだと感謝です。
でも問題はとにかく小さい、手組みするのでチップマウンターの代わりをしなきゃいけないのが老眼鏡を嵌めている身分としてはちょっとつらい。ピッチが狭すぎてハンダが付けにくいので、基板用フラックスを買っておきました。
中央にあるのが秋月電子で買った2SK2145でペアの2個入りで、左がDIP変換用基板、右が2SC3422トランジスタ、下がボールペンの先ですから、いかに小さいか判ります。変換基板に先にハンダを付けて、チップをピンセットで挟んでセットし、フラックスを脚に塗ってハンダゴテを当てるのですが、なぜか傾くので何回かやり直し時間をかなり要しました。
測定が出でますからハンダ付けはOKです。Vgsが僅かに違いますが、ドレイン電流IDが変化した時にどれだけ似通うのかは判りません。特性が揃っているのなら伝達特性(ID-Vgs)も揃っているのでしょうと思いたいです。
2SK2145の回路はソースが1箇所で2素子を動かしていますので、ぺるけ式のようにソース側にボリュームを付けて調整することができませんし、タカス製のユニバーサル基板への配置や配線も変わります。基板の線を一部カットしないといけませんが、配置図を書き込んだ時になんと変換基板の大きさを間違えていて、ちょっと青ざめました。正方形ではなく3P*4Pのピッチ距離でした。幸いにも修正可能な位置だったのでカット位置を変えるだけで済みました。本当に運が良かったです。
上の写真で右側のチップに配線を通す場所がないのでチップ基板上部に抵抗を直接ハンダ付けすることになりました。もともと密集した配置なので下書きが重要です。もっとも部品の大きさを間違えていてはいけませんが……
調整用のボリュームなしで製作して音声出力の電圧を測ったのですが、-4mVと-5mVとなりLR両チャンネルともに僅かに調整範囲の±3mVを外れてしまいました。ボリュームへの配線はしてあるので後付けでボリュームを嵌め込みました。ソース側での調整になりますので50kΩのものをつけました。
ヘッドフォンアンプの筐体に取り付け、蓋をして電源を入れたら、しばらく放置です。庫内が暖まったら再度音声出力をの電圧を微調整して完成です。
さて試聴です、まずは音が出てほっとしました。ヘッドフォンはHiFiMAN HE400se、DACはTopping DX7proを使ってイヴァン・フィッシャー指揮、ブダペスト祝祭管弦楽団の演奏でブラームス交響曲2番(PCM192kHz24bit)を聴きました。弦は伸びやかなブラームスらしさが広がり、ベースの低音部分も思いの外に出ており、制動の効いた重さのある音が出ています。ブラームスの低音は奥にひっそりとした感覚なのですが、それが意外としっかり聴こえます。音の分離もよく定位もよく、明確でありながらも粘りがあるいい音です。夏になればヘッドフォンかイヤフォンをずっと聴くことになるので、また追記したいと思います。