椎体骨折が死亡率を高めてるってホント?|椎体骨折と身体機能の関連性【予防理学療法】
- 2023.12.06
- 体幹 評価
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こんにちは!
理学療法士のヨシキです!
今回は骨粗鬆症性骨折で最も多い椎体骨折と機能障害の関連性についてまとめていこうと思います。
椎体骨折を契機に脊椎変形が進み、運動機能低下を引き起こしている方は少なくないですし、脊椎後弯している患者さんも多くみられると思います。
そのため、椎体骨折と身体機能の関連性を理解すると多くの症例に活かせるのではないでしょうか。
椎体骨折の身体的特徴と健康関連QOL
結論から述べると、椎体骨折患者では、体幹伸展可動域の低下・体幹前傾角の増加・QOLが低下することが報告されています。
椎体骨折は、高齢者4大骨折に数えられる骨折で最も頻度の多い骨折です。
しかし、骨折に伴って要介助となる確率は低いとも報告されています。
というのも、椎体骨折患者の60%は疼痛を伴わない無症候性のものが存在するためと考えられます。
ただ、最初に述べたように、椎体骨折患者では、体幹伸展可動域低下・体幹前傾角増加・QOLが低下してしまうため、見落とすと後々健康度に影響が及んでしまいます。
脊椎変性とロコモリスク
椎体骨折による影響が分かりましたが、なぜその影響が生じてしまうのか?
椎体骨折に関する報告は数多く存在しますが、最も関与しているのは脊椎変性にあると考えます。
ロコモ度と脊椎変性の関係についての報告によると、
出典ーInfluence of Global Spine Sagittal Balance and Spinal Degenerative Changes on Locomotive Syndrome Risk in a Middle-Age and Elderly Community-Living Population./BioMed Research International 2020(1-2):1-7/Masaaki Machino,et al.ーロコモ度が高くなるにつれ、腰痛とVASスコアは有意に増加し、背筋力と身体能力は有意に低下した。
ロコモ度が高くなるにつれ、腰椎前弯角の減少と脊椎傾斜角の増加が生じた。
と、報告されている。
また、一般的に椎体骨折は胸腰椎移行部に頻発し、発症に伴い脊椎前弯角の減少が報告されています。
つまり、ロコモ度と腰椎前弯角の減少と脊椎傾斜角の増加に相関があるため、発症に伴い脊椎変性を伴う椎体骨折患者も同様にロコモ度、強いては、身体能力の低下が生じてしまうということになります。
因みに、上記の研究では、ロコモ質問用紙で判定されるADL・QOLの低下は報告されていません。
加えて、椎体圧潰率の変化がADL・QOLに及ぼす影響について検討した研究においても、椎体圧潰の進行がADL・QOLに影響を及ぼす可能性は低いと報告されています。
だから何って感じかもしれませんが、
1項目目でも解説したように、椎体骨折に伴って要介助となる確率は低いと言われており、今回の報告においても椎体骨折によってADL・QOLに影響が及ぶ可能性は低いとされているため、椎体骨折自体の直接的な生活への障害は少ないということがわかります。
しかし、影響が少ないからこそ見落としがちなのが、この疾患の憎いところで、ADL・QOLへの影響は少ないにも関わらず、椎体骨折を有する高齢者の死亡率は高まってしまうと報告されています。
そのため、椎体骨折によって脊椎変性をきたすと、身体能力の低下が生じ、結果的に活動性の低下や転倒リスクの増加など後々に影響してくる事象が引き起こされてくるのだと考えます。
CAS(Cumulated Ambulation Score)の有効性
最後に、少し話は逸れますが、早期離床と予後予測に有効な評価方法を紹介します。
CASという評価なのですが、術後患者のベッド上動作から屋内移動レベルまでの移動能力に関する回復過程を把握できる指標とされています。
最近では、欧州の方で注目されおり、特に大腿骨近位部骨折のガイドラインでも推奨されている評価になります。
【評価方法】
- 術後1日目〜3日目にかけて、患者の①起き上がり、②立ち上がり、③歩行を評価する。
- 各動作を不可;0点、要介助;1点、自立;2点でスコア化し、3つの動作のスコアの合計を算出する。
評価はこれだけです(笑
起き上がり、立ち上がり、歩行を評価するなんてほとんどのリハビリで当たり前にように実施する内容なので、術後患者であれば多くの患者さんに利用することができそうですね。
【カットオフ値】
- 1日目:合計2点以下で約9割自宅退院できない可能性がある。
- 2日目:合計5点以上で約9割自宅退院が望める可能性がある。
- 3日間合計:合計10点以上で約9割自宅退院が望める可能性がある。
カットオフ値に書いていますが、あくまでも可能性があるという表記がされているため、断定する評価ではなく、変動の激しい急性期における転帰先の検討などのスクリーニングに用いることができる評価となります。
ただ、上記のカットオフ値は椎体骨折患者を対象に実施した研究報告によるもので、
大腿骨近位部骨折患者に対するCASの検討報告では、
CASが3日間合計10点以上であれば、1ヶ月生存率99%、自宅退院率93%であったと報告されています。
出典ーPrediction of postoperative morbidity, mortality and rehabilitation in hip fracture patients: the cumulated ambulation score./Clin Rehabil. 2006 Aug;20(8):701-8./Nicolai B Foss,et al.ー
CASについての論文を探してみると多くの論文で、3日間合計のスコアから予後予測されているため、予測精度を高めるには3日間の動作評価が必要と考えます。
というのも、急性期における3日間は疼痛の増減で容易に状態が変化してしまうため、1日だけの評価では正確性にかけてしまうからではないかと自分なりに解釈しています。
ただ、簡便かつ高確率で予後予測できる評価ということは報告からわかるので、今後広がっていく評価ツールとなるのではないでしょうか。
まとめ
椎体骨折は臨床で頻回に診る疾患だけあって、疾患の理解をすることで日々の臨床力は劇的に向上するのではないでしょうか。
たかだか椎体骨折、されど椎体骨折。
骨粗鬆症の診断にも用いられる骨折なので、円背や身長低下などがみられる患者さんには積極的に体幹伸展可動域や背筋力に対する治療と合わせて、食生活の指導等も含めた骨粗鬆症治療が組めると質の高いリハビリが提供できると思います。
それでは、今回はこの辺りでおしまいです。
今後も皆様の役に立つ情報を発信できればと思います。
理学療法士 ヨシキでした!
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