昨日の続き

そしておばさんは「ところで綿子さんは大分悪いんな?まだ帰って来れんの?」
と言った。

「いえ、体の方はすっかり良くなってるんですけど、痴呆の方が進んでるんで、入院していた佐藤病院からそのままいぶきの森に入所したんです。なのでもう帰っては来ないんです」

お「そうなぁ。けど痴呆って、そんな感じはなかったけどなぁ」

「みんなそう言うんですけど、大分きてたんです。でもちょっと話したくらいでは分からないもんみたいです」

お「そうみたいやな。この間な、〇〇さん(元ご近所さん)が息子さんと一緒に来たんやけど、息子さんが同じようなこと言うとったわ。今、しっかり会話出来とるけど明日になったら全部忘れとるんやって」

〇〇さんもかなりきてるのね。

お「昔はしっかりした人で車も運転して一人でどこでも行くし、何でもシャカシャカする人やったのに。いつもキレイに化粧してこざっぱりしとったんやけど、こないだ来た時は化粧もしてないし、なんか歳とった感じはしたんや。けど喋ったら普通なんやで」

綿子さんもちょっと会話しただけではボケてるとは思えないとみんなに言われたよな。
けどパジャマでウロウロしたり、シミだらけの服で出かけたりとかしてたっけ。
やっぱりボケるとみな同じようになるんだなぁと感じた。

「米さんが先にボケて、綿子さんがその後を追いかけてる感じなんです」

お「米さんもボケとるんな?」

おばさんは米さんがボケて入所したことは知らなかったようだ。
そこで米さんが出かけると自宅への帰り道が分からなくなってきたので家族が心配して入所させたことを伝えるととても驚いていた。

お「ここで綿子さんと話するのが楽しみやったから、残念やわ。綿子さんとわたしは里が近くでな。昔の話とかも出来てよかったんや」

おばさんちの畑とうちの畑は隣あってるので、畑で会ってはおしゃべりしていたのだ。
おばさんもよくおしゃべりしていた相手がだんだん減ってきて寂しいのだろう。
わたしとはこんなにしゃべったことは無かったのだが、今日は話が止まらない。
自分もボケてきてるかもしれない、息子に「それさっきも聞いた」って何度も言われるんやとか、3食の食事の支度が大変だとか、コロナが怖いとかいろいろ話してくれた。
綿子さんも同じだったんだろうなと思う。
もっと話相手になってあげればよかったとちょっと後悔した。
最後におばさんは「長々とごめんな」と言って帰って行った。

家に戻るとかつおさんが「何しよったん?えらい時間がかかっとったな」と言うので

「向かいのおばさんに会って話込んどったんや。おばさんが綿子さんいつ戻ってくるん?って言うから入所したんやって言うたら驚いとったわ」

「ええっ⁉」

「どしたん?」

「いやこの前わしもおばさんに「綿子さんは?」って聞かれて入所したって言うたのに。「そうな入ったんな」って言うとったのに」

やはりおばさんも大分きているようだ。
ブログアイコン


↓ポチッと押して頂けると喜びます\(^^)/
にほんブログ村 介護ブログへ
にほんブログ村