最後のSOは偏差値63、またも通塾拒否? 本番まで59日

白目トモ子(筆者)
メディアの片隅で生き延びてきた物書き。小学生男児2人を育てる。目下の悩みは不登校で発達特性ありの長男の中学受験。
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12月3日

16:20 またも通塾拒否!?塾の授業前の鬼電

仕事中に長男から何度か着信があった。今日は木曜日、サピックスの平常授業がある日だ。16時20分、この時間は授業前テストが始まる頃。塾に行けないから助けてというSOSだろうか。何度も繰り返してきたやり取りを思い出しながら、苦い気持ちで長男の携帯を鳴らした。

太郎

凸凹中受、いよいよラストスパートだ!

白目太郎の中受のこれまで

小4でS入塾。S偏55からスタート。同年、発達特性と高IQが判明。ADHD薬の服薬で落ち着きのなさはおさまり、クラスはαに上昇。

小5秋に大失速、サピックス退塾。転塾、再度の退塾を経て小6の夏前からサピックスに復帰。11月にS偏65に到達するも、絶賛足踏み中。

ところが、通話に出た長男の声は妙に明るい。

——この声なら塾には行けそうだ。

ただし、油断は禁物だ。取扱注意であることに変わりはない。声掛け一つで雲行きが一気に怪しくなるのが長男だ。まずは状況確認。「今どこ?」と尋ねてみる。答えを渋っている様子。きっとまだ家を出ていないのだろう。

「遅れるよ、早く行きなよ」と言いたいのをグッと堪え、「まだ家を出ていないなら、今から教室の前で待ち合わせようか?」とできるだけ明るい声を絞り出してみた。

「んー」。少し考えるような声が返ってきたが、聞かなくても答えはわかる。「うん、来て」。

自宅からは少し距離がある場所まで来ていた。電車に乗っても塾までは50分かかる。「どうせ会社まで戻るから、タクシーで途中で降りれば?」と同行していたカメラマン。長男には少ししてから家を出るように指示を出し、タクシーに乗り込んだ。

17:30 ミスドを買って塾前で待ち合わせ

四谷でタクシーから電車に乗り換え、塾に向かった。途中でミスドに立ち寄り、長男の好物のポンデリングを手土産に。偏食で食が細く、甘ったるいものは苦手なくせ、ドーナツ、それもポンデリングにだけは目がない長男。あのくらいの声の調子なら、多分ポンデリングで持ち直せるだろうと踏んだ。

現れた長男は、遅刻したことへのバツの悪さと、私に会えたことの安堵感が混ざったような表情だった。最近の長男は、私が外出する際に一緒に付いてくることが多くなっていた。今日は塾に間に合わなくなると考えてあえて置いて出たが、その判断が裏目に出たようだった。

「もしかして、ポンデリング全種類?」

ミスドの箱を渡すと、長男の顔がぱあっと明るく輝いた。その表情だけで、50分かけて駆けつけた甲斐があったと思える。そして駐輪場の片隅でストロベリー味を頬張りながら、まるで何事もなかったかのように言うのだ。

「塾の前まで送ってよ。」


50分の道のりを駆けつけて、ミスドを「貢ぐ」くらいでこんなにも簡単に解決するなら、何度でもやるさ。これまでの「通塾しぶり」を思えば、この程度の手間で塾に行けるなら、大した問題じゃない。とにかく、この調子で最後まで走り切ってくれ。そう願いながら、意気揚々と塾の中に消えていく長男の背中を見送った。

22:00 帰宅後の大荒れ

と、それだけで済むわけがないのも織り込み済みだった。案の定、帰宅した長男は荒れに荒れていた。授業中に行われたテストの合計点がクラス最下位級だったらしい。それに加えて、「遅刻していったのに、隣の交換採点の子が『遅刻』って書いてくれなかった!」と涙目で訴え、「次はまたクラスが落ちるんだ」と勝手に絶望している。

そんな状態だから、何もかもが気に入らない。調整していたクラスに戻るのも嫌、かといってαにいるのも嫌。どちらにしても劣等感を刺激され、「どこにも合格できない気がする」と言い出す始末。全身からネガティブな感情を撒き散らしていて、まるでジブリ映画に出てくる負のキャラクターのようだ。

私も、大人気なかったとは思う。けれど、その負のオーラに当てられて、つい若干の非難のニュアンスを込めて言ってしまった。「大丈夫だよ、志望校また下げれば何とかなるし、とりあえず落ち着こうよ」。――完全に火に油を注いだ。

「僕はそんなことは言ってない!そういうことじゃない!」(じゃあどういうことなんだよ)。

「僕はもうどこの学校にも行きたくない」(ここまで3年やってきて、今さらそれ言うんかい)。

「お母さんに喜んでもらえれば、それだけでいいのに」(おっと???)。

「そんな風に怒っているお母さんは見たくない」。

話がどんどんすり替わっている気がしたが、どうやら長男の本音はこうだ――テストの点が悪くて意気消沈して帰ってきたところに、母親までイライラしているのは耐えられない。だから、とにかく笑顔でいてくれ。そう受け止めた。

泣きに泣いた長男は、最後はすんと静まり、秒で寝た。さすがに、あれだけ泣けば少しはスッキリしたのだろう。明日には完全に持ち直していますように。

12月4日

13:00 最後のSO結果確認

SOの結果を確認。「僕が見るから見ないで」と言われ、画面を長男に渡す。しばらくの沈黙。「くっそー」と言う声が聞こえる。ダメだったのか?どうだったのか? ドキドキしながら長男の表情を伺うが、クールな表情でどんな成績だったのかはわからない。

しばらく画面を触りながら、順位や採点済みの回答、判定結果などを確認している様子だった。一通り見終わった後、「見ていい?」と尋ねると、長男は画面を渡してくれた。

偏差値63。前回が良すぎた分、下がった印象はあるが、サピックス偏差値で63は十分に立派だ。何よりも、私の母校である桜蔭の偏差値を上回っており、「打倒母」を目指してきた長男の目標はしっかりとクリアしている。

それでも長男の表情が冴えないのは、これまでの合格力判定SOの偏差値が63、65、69と上がり続けていて、「最後は70」という目標を掲げていたからだ。4科目が揃えば偏差値70にも手が届くと思っていたが、最近のスランプを見ていると、今のタイミングでは厳しいだろうとも感じていた。

「やっぱり無理だったか」と思う一方で、「とはいえ63」だとも思う。

夏までは偏差値55以下だったのだから、ここまで伸びたのは間違いなく大躍進。今年の1月には入塾テストから逃げ出し、その後、中規模塾への入塾と退塾という混乱を経て、6月にようやく8か月ぶりにサピックスに復帰。復帰早々、授業内テストで20点の洗礼を受け、帰宅して泣きながらテストをビリビリに引き裂いたあの頃を思えば――。

その後も通塾をしぶる日が何度もあり、そのたびに小さな山を一緒に越えながら、SOを最後まで受け切った。そして、その結果は、4回の平均偏差値65超え。これ以上、何を望める? ここまでの道のりを振り返れば、もう充分すぎる成果だ。

実際、偏差値65を超えていれば、御三家ですら偏差値上では安全圏から合格圏に入る。志望校は最近組み替えたばかりだし、相性を見極めながら、あと2ヶ月かけてじっくり悩めばいい。70は届かなかったけれど、よくここまで頑張った。まだまだこれからも伸びる余地はある。

太郎

今はだいぶ落ち着いたけど、相当山あり谷ありの2年間だったよね。

トモ子

何度も塾にも行けなくなったし、発達外来で薬ももらって、やっと調子が整ったよね。調子も成績も整ってきたのは、6年の秋だった。

 
 
21〜31日
 

Coming soon

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