緩和ケア開始

うちの猫のポテが縦隔型リンパ腫と診断された。それから約2週間悩んだ後、我々は化学療法ではなく緩和ケアを選択することにした。その経緯とポテの様子について記録しておく。

 

緩和ケア開始まで

11月13日に病院から戻ってからポテの具合はどんどん悪くなった。1日のほとんどを横たわって過ごすようになり、トイレまで歩いていくときなどの足取りも頼りなく、日に数回下痢をした。餌にはいよいよ手をつけなくなって、それなのに下痢は出るので体がすっかり痩せてしまった。この期間は見ている人間もつらくてたまらなかった。

外注検査の結果が返ってくるのを待つ予定だったのだが、とにかく食べないのが不安で、11月24日に病院に連れて行った。診てもらった結果、リンパ節が2カ所それぞれ2~3cm腫れていること、80~100ccもの胸水がたまっていることが分かった。体重は10日間で4.2kgから3.6kgまで減ってしまった。食べないために脱水状態になっていて、それと大量の胸水とがしんどさの原因らしい。

獣医の先生から改めて治療と予後について説明を受けたうえで、私たちは緩和ケアを選択することを伝えた。まずはこの日から3日間、病院に通ってステロイド剤を点滴してもらうことになった。それ以降はステロイドを錠剤で処方してもらい、通院の頻度を減らしながら様子を見る。緩和ケアを選択した場合の予後は、最初の診断から1,2カ月である。

 

緩和ケア開始後

点滴に通うようになって2日目の夜からポテは明らかに調子が戻ってきた。食欲が復活してカリカリもウェットもよく食べ、家の中を軽快に歩き回り、整腸剤のおかげで下痢もおさまった。体調が悪化している間は聞くことができなかった鳴き声やゴロゴロ音も復活した。調子の良さそうなポテを見るのは幸せなことだった。

12月3日に病院へ様子を見せに行ったところ、胸水はほとんどたまっておらず、腫瘍も小さくなっていることが確認された。ステロイドが効いたようだ。そもそも緩和ケアとしてステロイドを使用するのはどうなのか素人考えで悩んだりもしたのだが、胸水がたまる速度を遅らせるためと説明を受けてお願いすることにした。胸水がたまるとポテはつらいし、胸水の抜去も負担が大きいし、通院回数を減らすことができるのも有難い。

なお、この間に細胞診の結果が返ってきて、やはり当初の診断通り縦隔型リンパ腫であった。ステロイドはうまくいっても1カ月ほどで効かなくなる。

目にも力が戻ってきた

選択にあたって考えたこと

ポテがいなくなることを思うとものすごく悲しい。もともと私も同居人も、生き物に無理な延命はしないという考え方を共有していたが、いざ目の前にいる愛猫の予後を聞かされると動揺して何も決定できなかった。抗がん剤のために毎週数時間ポテを病院に預ける選択肢はないと思いつつ、最初の数回だけでも試してみてはどうかと迷ったりもした。何度も2人で話し合ったけれどなかなか結論が出なかった。ただただポテと別れる心の準備ができていなかった。

でもその間にポテの体調が悪化し、ぐったりしている姿を見ているうちに気持ちに少し変化があった。何というか、別れる準備なんてできないのだということが腑に落ちる感覚があった。ポテと別れるとして、それが今だとしても、化学療法がうまくいって半年後になったとしても、奇跡的に10年一緒にいられたとしても、耐えがたく悲しいことに変わりはないだろう。だからどうするのが良いという結論になるのかは、まだうまく言語化できないんだけれど。

愛猫を亡くした経験のある人の話を聞く機会があったことも助けになった。それと父がここ1年ほど抗がん剤治療を受けているのだが、父と話すと気持ちが落ち着いた。高校時代の倫理の授業で聞いたケシの実の逸話を思い出した。

こうして徐々に気持ちが整理されて、11月24日の病院で先生の説明を聞きながら、緩和ケアという選択が固まった。ポテの残りの猫生を延ばすことは考えない。残りの猫生の中で苦しい時間をなるべく減らすことだけを考える。ポテの気持ちは分からないので、ポテには私たちの選択についてきてもらうしかない。もちろんひとつの命が終わるのだから、一切苦しい思いをさせないというのは不可能だろう。この選択を後悔することもあるかもしれない。でもポテは優しくて忍耐強いから、きっと許してくれると思う。

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