1. キャリートレードとは?
キャリートレードは、低金利の通貨を借りて高金利の通貨を運用することで金利差を収益とする投資手法です。
この取引により、低金利通貨は売られ、通貨安が進む傾向があります。
例えば円を短期で0.1%で調達できたとしましょう。
この円を売ってドルを買い、米国債(4%)に投資します。
そうするとこのポジションを保有している限り、4%-0.1%=3.9% の利鞘が取れます。
この取引が市場に拡大していけば、円売りドル買いが多く発生しますので、円安ドル高に動きます。
そうすると、為替差益も得ることができます。
2. 円キャリートレードのこれまで
過去数十年間、日本円は世界でも有数の低金利通貨としてキャリートレードの主要な「調達通貨」として利用されてきました。
特に2022年以降、主要国が利上げを進める中で日本は低金利を維持。
この状況が円キャリートレードを加速させ、円は2023年7月に対ドルで1ドル=160円を突破しました。
3. スイスフランへのシフトの背景
現在、スイスフランが新たなキャリートレードの調達通貨として注目を集めています。その主な理由は以下の通りです。
スイス中銀の積極的な利下げ
スイス国立銀行はインフレ鈍化に対応し、政策金利を1.75%から3回連続で引き下げ、現在は1%。さらに12月には0.5%の利下げが予想されています。
日銀の利上げ観測
日本銀行は12月に0.25%の利上げが予想され、スイスとの金利差が縮小しつつあります。
実際に日本とスイスの国債のイールドカーブを見てみましょう。
2Y以上の金利はスイスの方が低くなっています。
今後、スイスは政策金利(短期金利)が引き下げられ、日本は逆に政策金利が引き上げられるので、短期金利も逆転する方向でしょう。
【スイスのイールドカーブ】
【日本のイールドカーブ】
フラン売りの増加
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、投機筋のフラン売り越し幅が急増し、円を上回る状況です。
これらの動きが、キャリートレードのフランシフトを促しています。
4. 今後の為替市場への影響
フランシフトが進むことで、円売りの圧力は和らぐ可能性があります。
この変化により、次のような影響が予想されます。
円の底堅さ
円キャリートレードの縮小により、円安圧力が弱まり、対ドルでの円相場は安定化する見込みです。
フランの下落リスク
スイス中銀の利下げが続く中、フランの下落傾向が強まると予測されます。
ドルの強さの持続
米国の利下げが緩やかであるため、ドルは引き続き高金利通貨として人気を保ちそうです。
5. まとめ
キャリートレードにおける「フランシフト」は、為替市場の新たなトレンドを示しています。
この動きが進むことで、円の売り圧力が和らぎ、フラン売り・ドル買いの構図が主流となるでしょう。
日本の利上げの方向性とこの円売り圧力が和らぐことで、これまでのような160円を超える過度な円安は当面なくなるでしょう。
一方で、米国は利下げの方向性ですが、トランプ大統領の政策でインフレが進み、これ以上の利下げには踏み込めない可能性があります。
過度なドル安もないと言うことです。
結果的にドル円は当面150円を挟んだボックス相場が続くのではないでしょうか。