この前の衆議院選挙について雑感を書こうと思いますが、内容は以前『円安でFIRE達成手法に変化はあるか』という記事(1/2)を補足する形になります。つまり今回の選挙結果で円安が一段と加速するという予測です。
ですので結論は変わらず、円経済圏からの脱出を一刻も早く進めるしかないという事になります。悲観論を読みたくないという方、あと国民民主党に投票された方はお互い不愉快な思いをしない為にもここで引き返す事をおすすめします。
まず本論に入る前に、自分が以前Xでのフォローをおすすめした磯野直之氏と米山隆一氏のツイートを引用します。
立憲民主党の政策は左寄り過ぎると批判してきた国民民主党がれいわ新選組と見間違えるような極端な財政バラマキ公約をして議席を4倍に増やした。石破首相は生き残りのために、国民民主党の公約の一部を取り入れ、その代わりに、首相指名選挙の決選投票で野田立憲民主党代表を支持しないこと、予算案に… https://t.co/qvz5owOdGD
— 磯野直之 (@IsonoNaoyuki) October 28, 2024
今回の選挙では、国民とれいわが伸長しました。その原因の一つである「ばらまき」は正直非現実的で、この様な安易な主張が広まる事に危機感を覚えます。SNSを通じた広報戦術等は学び、取り入れつつ、我々は、真っ当な財政・金融政策を打ち出すべきだと思います。https://t.co/G7ZcGf8en3
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) October 29, 2024
個人的な話をすると、ちょっと前までは国民民主党の党首である玉木雄一郎氏に対して好感を持っていました。政策提案型の野党というコンセプトは面白いと思いましたし、孤独担当大臣の新設を提言した時には成程と思ったものです。
それがおかしくなったのは、当ブログが一貫して批判してきたハンキン(半緊縮派)学者でネットに流布する多くのデマの発信源である高橋洋一と絡み始めてから。それ以降は特に経済に関して頓珍漢な発言を繰り返していた記憶があります。
(彼の流布したデマの一つ「国債はデフォルトしないと財務省のホームページに書いてある」は以前検証しました。需要があれば玉木氏も採用した「財源は外為特会が使える」という説についてもファクトチェックしたいと思います)
これは以前から書いていますが、FIREやインデックス投資の手法については既に正解がある一方、金融に関しては天動説と地動説のごとく意見が真っ二つに分かれており、前者で正しい事を言っていても後者で間違う事は往々にしてある。
そしてもし日本が経済危機に陥った時は、デマの発信源は勿論デマを拡散した側も責任を負うというのが自分の考えで、その代表が「ほったらかし投資術」の筆者である山崎元と水瀬ケンイチという話は以前もさせて頂きました。
今回の選挙前に玉木氏は資産課税や安楽死を肯定するつぶやきでプチ炎上する一方、教育国債とかポピュリズム丸出しの発言もしていましたが、結果はご覧の通りの大躍進。若者のルサンチマンを刺激する選挙戦略が見事当たったという所でしょうか。
極右と極左がカルト化するのは分かるのですが、一見中道に見える国民民主党の支持者もネットでの狼藉ぶりはかなりのもので、おそらく同党の支持層は金持ち・年寄り・財務省に怒りをたぎらせる他責思考の貧乏人。
そして今は財務省に向かっている彼らの怒りが富裕層に向かうのは時間の問題だと思っています。とはいえ超富裕層は幾らでも資産を逃がす伝手があるので、結局割を食うのはFIRE民・リタイア民のような小金持ちとなる訳です。
これも以前から話している事ですが、日本でFIREする最大のリスクは国の財政赤字と他人の足を引っ張る国民性。悲観論を読みたくない人も多いでしょうが、ここから目をそらして夢物語を語るのは不誠実ではないかと個人的には考えます。
FIREの賞味期限、更に言うと日本という国家の賞味期限を考えるなら、まだ「日銀は政府の子会社ではない」と断言した石破さんを勝たせた方が希望が持てたように思いますが、結局は国民のレベルを超える政治家は出ないという事です。
正直今回の争点が「小さな政府」vs「大きな政府」ならまだ救いはあったのですが、日本の対立軸は「ばら撒き」vs「もっとばら撒け」「うまくばら撒け」の戦い。エミン・ユルマズ氏の言葉を借りれば「日本の政党は全て経済左派」が現実。
なら経済右派とは何かと言えば一般的には小さな政府寄り、政府の介入は最低限に留め自由競争の中で民間の活力を促すような考え方を指すと思います。もちろんそれが向いているか否かは国民性にもよるのでしょう。
よくS&P500指数の上位5社を除けば、日経平均のリターンと変わらないという人がいます。数字を見ればその通りなのですが、自分は内心次のマイクロソフト・次のアマゾンも結局はアメリカから生まれる事になるんだろうなと思っています。
何故なら日本の企業も労働者も、努力して新しいサービスを開発したり生産性を上げたりするより、非効率でも公金チューチューする方が安全確実だと気づいてしまったから。その延長線上にMMTのような打ち出の小槌理論の需要があるのでしょう。
日本人が何時からそうなったのかは不勉強でよく分かりません。ただ自分も含めて勤勉さを失った日本人には、次の経済危機を乗り越えるパワーは既になく、戦後復興のような奇跡はもう起きないだろうと考えています。
これからの日本に待っているのは、老いも若きも男も女も「今だけ金だけ自分だけ」の精神で限られたリソースに群がる地獄絵図。それが日本人の総意というなら自分は何も言う事はない。くわばらくわばらと思いながら資産運用を続けるだけです。
短期的にはともかく中・長期的に見れば、円安およびそれに伴う物価高は止まらず、グレートリセットで政府の債務と国民の資産をチャラにしてようやく収まるが、その時は金持ちも貧乏人も身ぐるみ剥がされるというのが自分の考えるテールリスクです。
そして今回の選挙結果は円安を加速させ、結果的にはFIREの賞味期限を縮める事になる。これからドル資産を積み上げる人には茨の道が待っているし、既に積み上げた人は短期的には利益を得ても、財政問題に無関心なままなら最後は資産を失う。
ならどうすれば良いかという話ですが、とにかく円経済圏からの脱出をなるはやで進めた上で、4%ルールに基づき資産を貯めたら終わりではなく、最終目標を海外脱出に設定するしかないのではないかと思います。
タイムリミットが何時になるのかは予測困難ですが、自分の見立てが正しければ国民民主党が法案を通すたびに為替が急激に円安に振れ、トラスショックならぬタマキショックが起こる。そうなったらもう終わりの始まりと思った方が良いです。