イケてるオーラを少しでも出したい
かというとそれは少し不正確である。

イケてる自分にもちろんなりたい
けれど、それよりも先にとにかく
はるかに切実に、まずは、まずは
【イケてない感】を少なくしたいのだ。

「ない」と
ノータイムでつっぱねられない程度に。


Go姫(ごうひめ)はまず髪を切った。
駅前の、1000円ちょいで切れる
チェーン展開している簡易美容院
をチョイスした。

美容師さんは充分にスキルが高いし
おおよそいつでも同じ人が勤務して
いることもリサーチ済み。

【指名】という概念は無いけれど
少し待てるなら(お得過ぎることに)
毎回【同じ人に】切ってもらえる。

リーズナブルな料金設定だから
ちょくちょく(マメに)足を運べる。

そのわりには
だいぶちゃんと切ってくれる。
コスパもレベルも(満足度も)高い！


Go姫は(恥ずかしかっただろうが)
女の子にウケのいい感じで
【さわやか】にして欲しいと
いった旨を勇気をふりしぼって
美容師さんに伝えていた。

スムーズではない言葉。
何度も何度もカミカミしていたが
意図はちゃんと伝わったようだ。

俺(ダン)は、口出ししたい気持ちを
グッとこらえ、Go姫を見守った。

(えらいぞGo姫。いいぞ。かっこいいぞ)


30歳ぐらいの
女性の美容師さんだった。
うん。いいぞ。いいぞ。

男性の美容師さんがダメということ
は全く無いが女性だとなお良い。
うむ。これはラッキーだ。


Go姫の注文(要望)に美容師さんは
「ふふふ」とくちびるだけで笑い
「わかりました」と言ってから
テキパキとハサミを動かし始めた。

俺はその隣でハゲ頭をいじくられ
鏡にうつる自分のブサ面にウンザリ
しつつも、横にいるGo姫のことを
終始気にしていた。

Go姫のくりんくりんのうねった
髪の毛がどんどん短くなっていく。
やはりかなり手際がいい。
(俺もあの方に切ってもらいたかったな)

散髪自体は10分ほどで終わり
他にお客さんもいなかったためか
スタイリング、セットのしかたを
アドバイスしてくれたようだ。親切。

短くスッキリしているので
特別セッティングしなくても大丈夫
だが、余裕があるならヘアワックス
などで毛先をわざとはねさせると
オシャレな感じに見えるよ。30秒
ぐらいでできるよ、簡単だよ、と
いった言葉が聞こえてきた。


Go姫、おま、ラッキーだな。
最初の最初で、
こんな親切ないい感じの
店員さんに出会えるなんて。

まGo姫はな、日ごろの行いが良いからな。
そうだよな。良かった。

運命がチャンスを用意して
待っててくれたわけだ。
Go姫がそこへたどり着いた瞬間だった。