認知症は老化?糖化と健康寿命の関係
歳を取れば誰しも、見た目だけでも老いを感じるものです。歳を重ねて10代の見た目であろうとするのは無理難題。そうすると必然とどのように年を重ねていくほうが良いのか、より健康で居たい、成熟した人間でありたいという願望が生まれてきます。
実は、老化というものに密接に関係しているのが糖化です。"老化とは糖化である"と言い換えても良いでしょう。なぜなら糖化は老化の促進因子だとされているからです。"体のコゲ"とも表現される糖化は、余分な糖質が体内でタンパク質と結びついて細胞を劣化させます。そうして、表面的には皮膚などに現れるシミやたるみの原因となっているのです。
老化はAGEsが蓄積されることによって生まれる糖化でもあります。そもそも加齢やそれによる衰え自体がAGEsを分解する代謝を減退させる原因に挙げられています。この終末糖化産物/AGEs(Advanced Glycation End Products)は糖化反応によって生まれます。糖化は、糖(主にグルコース)がタンパク質、脂質などに結合して起こる化学反応とされていますが、この反応の最終産物がAGEsで、これは加齢とともに体内に蓄積していきます。
同時に認知症と糖尿病の相関関係については以前から指摘されている問題なのです。行政が発表する認知症の患者数の推計に役立っているのが、この糖尿病患者数の推移です。
糖化反応で生成されるAGEsが血管や神経にダメージを与え、脳血流低下やアミロイドβ蓄積を助長するのですが、インスリンはこのAGEsやアミロイドβを分解する役割を担っているのです。糖尿病の場合には、インスリン分解酵素が不足する事も広く知られています。高血糖やインスリンの働きが弱まることによって慢性炎症や酸化ストレスを促進してしまいます。
このAGEsは一度形成されると分解されにくい不可逆性の特徴を持っているとされています。そのため、体内に次第に蓄積されていく事が、老化や疾病に対する促進因子となります。アルツハイマー型認知症の特徴としてあげられる大脳皮質の「神経原繊維変化と老人斑」ですが、この老人斑にはアミロイドβの蓄積が見られています。したがって、このAGEsへの対策が老化や認知症予防にも効果を持つと考えられます。
現段階において分かってきた研究においては、アルツハイマー病患者の脳内で、AGEsが増加していることが確認されています。AGEsがアミロイドβの凝集や毒性を増幅し、神経細胞死や炎症を誘導するメカニズムが仮説だてられ、生活習慣によるAGEsの蓄積が認知症リスクに関連している可能性も示唆されています。ただしこれらの因果関係を現時点で完全に証明するには至っていないということも留意しておく必要があります。
AGEsが生成・蓄積しやすい条件
加齢によって身体機能が衰えていく事そのものが、運動することを阻害していきます。その運動と共に、日光を浴びることやお風呂に入ったり歯を磨くなどの行動が精神を高揚させ、また安定させます。これらはリラックス効果や慢性炎症の予防に繋がるデトックスです。
しかし老化は、そうした行為自体が出来なくなっていく要因となります。そしてまた精神が落ち込んでいれば、食事がおろそかになったり、次第にお風呂に入ったり、歯を磨く、外に出て運動するという心身の健康にとって大切な事柄も考えられなくなっていきます。これが負のスパイラルを招くのです。
AGEsの蓄積を防ぐ方法と生活習慣
このような事を考えていくと、そもそも生活習慣病を予防する事がAGEsの増加や蓄積を抑えることに繋がります。勿論、これら疾病には遺伝の要素も大きいという事は付け加えておかなければなりません。同時に健康的な生活こそが、精神の健康にも大きく影響しています。これらを意識した生活を行うと、健康寿命は明らかに伸びていくものだと考えられます。
日ごろの生活そのものが、"健康への積み立て投資"という訳です。
「健全なる精神は健全なる身体に宿る」は、古代ローマの詩人ユウェナリスの一節でもありますが、適切な運動やバランスのとれた食事は、正のスパイラルを生み出し、心にとっても重要な意味を持ち続けます。
このような事を意識して生活する事で、きっと誰にとっても健康寿命を延ばし、悪化を防止する一助になると確信しています。食事や運動などを含めた生活を送る事と支援を行う事はその人を支える事、そしてまた自分を支える事と同義なのです。