子供の頃、友達とは「花とゆめ」とか「りぼん」とか「少女コミック」とかで話は盛り上がった。
祖母の家は五右衛門風呂で、火をつけるために叔母が読み終えた漫画がたくさん積んであったから漫画には困らなかった。その頃もう1つ夢中になっていたのは学校の図書館にあった「奇巌城」や「813の謎」「果樹園物語」といった本だった。興味がある話じゃないと盛り上がらないので、なんとなく話さなくなった気がする。ただ、漫画の話にはついて行けるので、仲間外れになった感じはなかった。
音楽を聴き始めた頃も同じ。妹に付き合ってピンクレディーは踊ったし、御三家の歌も歌った。仲間には入れるし、ピンクレディーもジャニーズも歌謡曲も好き。ただ、洋楽も好きだった。たまに洋楽の話が出ても、興味のありそうな人がいなかったので話さなくなったんだろうな。
時々、洋楽や翻訳本の事も、みんなでワイワイ話せると楽しいんだろうなと思っていた。ところが、「本の好みは食の好みより合うのが難しい」というような事が書かれていたのを読んだ。たしか角田光代さんの本だったと思う。皆でワイワイ話せるのはもともと一部なんだと納得した。漫画も本も音楽もジャンルもたくさんあって、知られているものばかりじゃない。
時々、洋楽や翻訳本が好きという人と知り合ったりするけど、その人たちは邦楽や漫画を馬鹿にするので付き合わなくなった。興味がないものをけなされるのは聞いていて気分が悪くなる。
ジジは好みも近いけど、他を馬鹿にしない。興味がないのは興味がないとはっきり言う。相手が興味がないと話しても楽しくないので、私は話さなくなる。そういう所が付き合いやすい。
やっと、好きな本や音楽や映画の話が出来るなと思ったら、困ったことが起きた。名前が出てこない。本や映画のタイトル、バンド名や作家名、俳優さんの名前。不思議な事に周辺の情報は全部出てくる。
「サッカーの映画に出てた人で、悟空も出てくる映画の監督さんもやってた人で」
「チャウ・シンチー?」
「それー、その人が監督した映画でアパートが出てきて」
「カンフーハッスル?」
なんて具合で、連想ゲームになってしまう。夫の記憶力がよくて、私の記憶力がポンコツ過ぎるのかと思ってたけど、不思議と仕事に必要な名前とかは憶えていたりする。なんでだろう?と不思議に思っていた。
そんな時読んだ森毅さんの本に「たくさん読むから覚えていられない、自慢したくて何を読んだか記憶していた時期もあったが、あれはつまらん」みたいな事が書かれていた。
昔、誰かと話す事がなかったから覚える癖がついてなのかもなと思った。夫は「この間読んだ本の」とかでも通じたりするから、いつまでたっても覚えない。
本を読んで賢くなるとは思わないけど、ちょっと疑問に思っている事が解決したり、心のつかえがとれたりする。人の話は面白い。