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インプラント治療において、正確性と安全性を向上させるために活用される「サージカルガイド」。この記事では、その定義や目的、そして使用される技術について詳しく解説します。サージカルガイドがインプラント治療のどのような課題を解決するのか、その重要性を理解するために、ぜひ最後までお読みください。

サージカルガイドの基礎知識

サージカルガイドとは何か?

定義と目的
サージカルガイドとは、インプラント手術において歯科医師がインプラント体を正確な位置に埋入するための補助器具であり、患者の口腔内のCTデータとインプラントシミュレーションソフトLANDmarker®を連携させて解析した結果をもとに設計されます。このガイドは、手術中にドリルの角度や深さを高精度にコントロールできるよう作られており、インプラントの埋入位置、角度、深度をサポートします。

写真のサージカルガイドを口腔内に装着し、順次三つの黒く見える穴からドリルを挿入し、インプラントを埋入するための穴を掘ります。

この装置を使うことで、下歯槽神経・オトガイ神経麻痺やオトガイ下動脈・舌下動脈の断裂、上顎洞・鼻腔の穿孔など医療事故を防ぐことが出来ます。

※ このサージカルガイドは左下奥歯に3本のインプラントを埋入する為に作られたものです。

CTスキャン

CTスキャン

利点

  • 骨量診断:血管や神経の通っている下顎管、上顎洞の位置を3次元(立体)空間として正確に把握できます。
  • インプラントを埋め込む位置、方向及び長さの決定に重要な情報を提供してくれます。このデーターを元にサージカルガイドを作成します。
  • 骨質診断:CT値による骨密度の把握が可能です。

欠点

  • 高額な装置のため撮影費用が高額です。
  • インプラントは保険が適用されないので全額自己負担です。


LANDmarker®

CTスキャナーと連携するソフト

インプラントシミュレーションソフト|ランドマーカーは、CTデータをパソコンに直接読込み、インプラントの埋入位置、方向、深度をシミュレーションするソフトです。

パノラマレントゲン写真では診断出来なかった3次元的な顎骨の形態を把握し、安全性だけでなく完成度の高い治療が実現できます。

ソフトのデータをもとに下記のインプラント用サージカルガイドの作成を行います。

サージカルガイドの主な目的は以下の通りです。

  • 治療の精度向上:埋入位置の誤差を最小限に抑えます。
  • 安全性の確保:神経や血管などの重要な組織を避けるため、リスクを軽減します。
  • 効率化:手術時間を短縮し、患者への負担を軽減します。

使用される材料と技術
サージカルガイドの作成には、主に以下の材料と技術が使用されます。

  • 樹脂素材:耐久性と精度を兼ね備えた生体適合性の高い材料が使われます。
  • CAD/CAM技術:コンピュータを活用して、CTデータからガイドを設計・製造する技術。
  • 3Dプリンター:設計されたデータをもとに、実際のガイドを作成します。

サージカルガイドが必要な理由

インプラント治療における課題とリスク
インプラント治療は高度な技術を必要とし、正確性が求められます。しかし、従来の手術では以下のような課題がありました。

  • 埋入位置の誤差:手術中の視覚的な判断だけでは精度に限界があります。
  • 神経や血管の損傷リスク:重要な組織に近い場合、位置のズレが大きなトラブルにつながる可能性があります。

サージカルガイドが解決する問題
サージカルガイドを使用することで、上記の課題は大幅に解消されます。事前に綿密なシミュレーションを行うことで、治療計画が正確に反映され、手術中のリスクを最小限に抑えられます。
また、治療の精度が向上することで、術後の患者満足度も高まり、治癒期間の短縮にも寄与します。

サージカルガイドの作成は、インプラント治療の成功を左右する重要なステップです。このプロセスでは、初期診断から設計、製造に至るまで、高度な技術と精密な計画が求められます。

初期診断とCTスキャン

サージカルガイド作成の第一歩は、患者の状態を正確に把握することです。特にCTスキャンを活用することで、口腔内の詳細な情報を取得します。

どのようにデータを収集するか

  1. CTスキャンによる詳細な撮影
    患者の顎骨や歯の位置を立体的に把握するため、CTスキャンを行います。このスキャンデータには以下の情報が含まれます。
    • 顎骨の形状や厚み
    • 神経や血管の位置
    • 残存歯の状態
  2. 診断と治療計画
    スキャンデータをもとに、インプラントの埋入位置や角度、深さを決定します。この治療計画がサージカルガイド作成の基礎となります。

ガイド設計のステップ

収集したデータを基に、サージカルガイドを設計します。この段階では、最新のデジタル技術が活用されます。

CAD/CAM技術の活用

  1. データ処理と設計
    CTスキャンデータを専用ソフトウェアに取り込み、3Dモデルを作成します。治療計画に基づき、インプラント埋入位置を正確に再現するサージカルガイドのデザインを行います。
  2. シミュレーション
    デザインが完成したら、ソフトウェア上で治療のシミュレーションを行います。これにより、計画通りに治療が進められるかを確認します。

ガイド製造工程の詳細

  1. 3Dプリンターによる製造
    デザインデータを3Dプリンターに送信し、実際のガイドを作成します。この際、耐久性と精密さを兼ね備えた樹脂素材が使用されます。
  2. 品質チェック
    作成されたガイドは、設計通りに仕上がっているかを徹底的に確認します。特に、インプラント埋入用の穴の位置やサイズが正確であるかを確認することが重要です。
  3. 患者への適合確認
    最後に、作成したガイドを患者の口腔内で試着し、適合性を確認します。この工程で問題がなければ、ガイドは治療で使用されます。

江戸川区篠崎の当院では、インプラント手術を安全に行うためにCTスキャンとデジタルコンピュータによる3Dシミュレーションソフトから得られるデーターを元にインプラント用サージカルガイドを作成し、インプラント手術に臨んでいます。サージカルガイドを使用することで、治療の精度と安全性が向上します。このセクションでは、ガイドを使用したインプラント手術の流れを具体的に説明し、ガイド未使用の場合との比較も行います。

ガイドを使用した手術のステップ

実際の埋入手術の様子

  1. 事前準備
    事前に作成したサージカルガイドを患者の口腔内にセットします。ガイドが正しく装着されているかを確認し、治療計画通りに進められる状態を整えます。
  2. ドリリング(穴あけ)
    サージカルガイドの専用ホールを通してドリルを挿入し、インプラントを埋入するための穴を形成します。ガイドによって角度や深さが制御されるため、精度の高い処置が可能です。
  3. インプラント埋入
    形成した穴にインプラント体を挿入します。ガイドを使用することで、治療計画通りの位置に確実に埋入でき、周囲の神経や血管へのリスクを軽減します。
  4. 術後の確認
    埋入が完了したら、ガイドを取り外して状態を確認します。その後、仮歯を装着する場合や、治癒期間を確保する場合の指示を患者に伝えます。

術後のケアと経過観察

  1. 術後の経過観察
    埋入後は、インプラントが骨としっかり結合するまで数か月間の治癒期間が必要です。この期間中、定期的に診察を行い、インプラントの安定性を確認します。
  2. ケア方法の指導
    術後の感染リスクを防ぐため、患者に適切な口腔ケア方法を指導します。また、過度な負担をかけないよう、食事や生活習慣に関するアドバイスも行います。
  3. 最終補綴物の装着
    インプラントが骨と結合したら、最終的な補綴物(クラウンやブリッジ)を装着します。これにより、治療が完了します。

ガイド未使用の場合との比較

ガイド未使用の場合の課題

  • 治療の精度に差が出る可能性
    歯科医師の技術に依存するため、埋入位置に誤差が生じる可能性があります。
  • 手術時間が長くなる
    手術中に位置や角度を微調整する必要があり、時間がかかることがあります。
  • リスクの増加
    神経や血管など、重要な組織に損傷を与えるリスクが高まる場合があります。

サージカルガイドを使用する場合の利点

  • 高い精度
    事前に設計された計画通りに手術が進むため、埋入の正確性が向上します。
  • 短い手術時間
    ガイドにより治療の効率が高まるため、患者の負担が軽減されます。
  • 安全性の向上
    ガイドが手術中のリスクを軽減し、患者に安心感を提供します。

サージカルガイドの使用は、インプラント治療においてさまざまな利点をもたらす一方で、課題も存在します。以下では、それぞれのポイントを詳しく解説します。

デメリット


費用面の課題

  • 作成コストの増加
    サージカルガイドの作成には、CTスキャンや3Dプリンターを使用するため、追加のコストが発生します。これにより、患者の負担額が増える場合があります。
  • 保険適用外
    日本では、インプラント手術が保険適用外となることが多く、サージカルガイドの使用も全額自己負担となるケースが一般的です。

技術的な制限

  • 特殊な設備と技術が必要
    サージカルガイドの作成には、CTやCAD/CAM技術、3Dプリンターなどの高度な設備が必要です。また、これらを扱う技術を持つ歯科医師が限られている場合があります。
  • 症例による制約
    骨量が極端に少ない場合や、特殊な口腔内の形状を持つ患者では、ガイドの適合性が制限されることがあります。

メリットとデメリットの比較

ポイントメリットデメリット
正確性高精度な埋入が可能技術や設備が必要で実施できる歯科医院が限られる
手術時間短縮され患者負担が軽減コストが増加し、保険適用外の場合が多い
術後の回復リカバリー期間が短縮し快適な治療が可能一部の症例で適用が難しい場合がある

サージカルガイドは、インプラント治療の精度と安全性を向上させる革新的なツールですが、導入には患者や歯科医院のコスト負担や技術的な準備が求められます。メリットとデメリットを十分に理解した上で、治療計画を立てることが重要です。

サージカルガイドの作成と使用には一定の費用がかかりますが、その詳細や保険適用の可否について事前に理解しておくことが重要です。ここでは、費用の内訳と保険適用の現状について詳しく解説します。

インプラント治療費用のご案内

安心してご相談いただけるように、インプラント治療にかかる費用を明確にしております。 初回の相談料は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

診断料の内訳

診断料は総治療費の約10%になります。サージカルガイドの作成と使用料は、診断料に含まれます。

  1. iCATナビゲーションシステムの使用
    高度なコンピュータ技術を活用し、正確で安全な治療計画を立てます。
  2. CT撮影用テンプレート
    患者様ごとにカスタマイズしたテンプレートを使用します。
  3. 診断技術料金
    専門医による精密な診断と治療計画を行います。
  4. サージカルガイド
    手術時に正確な位置を確保するためのガイドを作成します。

サージカルガイドを使ったインプラント治療費(1本あたり)

  • インプラント手術費用: 200,000円(税込み 220,000円)~
  • 人工歯冠: 84,000円(税込み 92,400円)~
  • アバットメント(土台) : 10,000円(税込み 11,000円)
    総額: 約320,000円~

治療に使用する機材や材料は、最新かつ高品質なものを採用しています。患者様の状態に合わせて最適なプランをご提案させていただきますので、ぜひご相談ください。

保険適用の可否と自己負担額

1. 保険適用の現状

  • 日本の歯科医療制度における課題
    現在、日本ではサージカルガイドを使用したインプラントの治療は保険適用外であるケースがほとんどです。その理由として、インプラントが「高度先進医療」に分類されるため、通常の保険診療の枠を超える技術とされている点が挙げられます。
  • 保険適用の例外
    医療機関や特定の症例によっては、部分的に保険が適用される場合もありますが、基本的には患者の自己負担が必要です。

2. 医療費控除の活用

  • 医療費控除の活用
    サージカルガイドを含むインプラント治療の費用は、医療費控除の対象となるため、確定申告を行うことで一部の費用が還付される可能性があります。

費用を考慮した選択のポイント

サージカルガイドを使用したインプラントは高額ですが、治療の安全性や精度が向上するメリットを考慮すると、費用に見合った価値があるといえます。費用に関する不安がある場合は、当院の歯科医師に相談し、詳細な説明を受けてください。

サージカルガイドは現在、インプラント治療の精度と安全性を飛躍的に向上させていますが、その可能性はさらに広がっています。最新技術や世界的なトレンドを取り入れることで、将来的にはより多くの患者に恩恵をもたらすことが期待されています。

サージカルガイドの今後の可能性

最新技術とAIの活用

AIによる治療計画の最適化

  • AIの役割
    AI(人工知能)が治療計画の立案を補助することで、より迅速かつ正確なプランニングが可能になります。AIは膨大なCTデータを分析し、患者一人ひとりに最適な埋入位置や角度を提案します。
  • メリット
    • 計画精度の向上
    • 医師の負担軽減
    • 時間の短縮

ロボティクスとの連携

  • 自動化の進化
    サージカルガイドに加えて、ロボット支援手術が普及しつつあります。ロボット技術がインプラントの埋入を自動化し、人為的な誤差をさらに減らすことが期待されています。
  • 具体的な応用例
    ロボットがサージカルガイドを利用して正確なドリリングを行うことで、治療の成功率を向上させます。

3Dプリンター技術の進化

  • 材料と精度の向上
    近年の3Dプリンター技術の進化により、より耐久性が高く、生体適合性の高いガイドが製造可能になっています。
  • コスト削減
    技術の進歩により、ガイド作成コストが低下し、多くの患者が利用できる環境が整いつつあります。

世界的な普及状況とトレンド

グローバルな普及状況

  • 先進国での普及
    アメリカやヨーロッパでは、サージカルガイドを標準治療の一環として採用する歯科医院が増加しています。特にAIやロボティクス技術との組み合わせが注目されています。
  • 新興国での導入
    新興国では、3Dプリンターの普及に伴い、サージカルガイドの利用が徐々に広がっています。費用対効果の高さから、今後さらに導入が進むと予想されています。

トレンド: デジタル歯科治療の普及

  • デジタル技術の統合
    サージカルガイドは、デジタルスキャナーやCAD/CAM技術と組み合わせることで、完全デジタル化された治療プロセスを実現しています。
  • 遠隔医療との融合
    デジタルデータを活用することで、遠隔地の専門医と連携し、より高度な治療計画が可能になります。

患者意識の変化

  • 安全性と精度への関心
    サージカルガイドを利用した治療は、患者から「安全性」や「正確性」を求められるケースが増加しています。これにより、サージカルガイドを導入する医院がさらに増えると考えられます。

未来への期待

サージカルガイドは、最新技術とグローバルなトレンドにより進化を続けています。今後は、より多くの患者がその恩恵を受けるだけでなく、歯科治療全体が効率化・高度化することで、世界的な健康向上に寄与すると期待されています。

サージカルガイドに関するよくある質問にお答えします。これらの情報を参考に、治療への理解を深めていただければ幸いです。

基本的にほとんどの患者が使用可能
サージカルガイドは、多くのインプラント治療において利用可能です。ただし、以下の条件を満たしていることが重要です。

  • 十分な骨量がある場合
    サージカルガイドは、インプラントを埋入する顎骨の形状や骨量に基づいて設計されます。そのため、骨量が不足している場合には事前に骨造成手術が必要になることがあります。
  • 口腔内の健康状態が良好である場合
    歯周病や感染症が進行している場合には、ガイド作成の前に治療が必要です。

使用が難しいケース

極端に骨が薄い症例や、骨の形状が特殊な場合には、ガイドが適合しないことがあります。このような場合、歯科医師が手術方法をカスタマイズすることで対応します。

高齢者への対応

  • メリット
    高齢者は全身の健康状態を考慮する必要がありますが、サージカルガイドは手術時間を短縮し、体への負担を軽減するため、適していると言えます。
  • 留意点
    骨粗鬆症のある場合は、骨の強度を事前に確認し、必要に応じて補助的な治療を行います。

特定の疾患を持つ患者への対応

顎関節症の場合
ガイドが適合するかを事前に確認する必要がありますが、多くの場合で治療が可能です。

糖尿病の場合
血糖値がコントロールされていれば、サージカルガイドを使用したインプラント治療は可能です。ただし、術後の感染リスクを考慮し、慎重なケアが必要です。

心臓病や血液疾患の場合
全身麻酔や鎮静法が必要になる場合は、医師と連携して治療計画を立てます。

江戸川区篠崎で安全で正確なインプラント治療をサージカルガイドで実現

インプラント治療に不安を感じている方へ。
江戸川区篠崎の当院では最新の「サージカルガイド」を活用したインプラント治療を行っています。サージカルガイドとは、患者様のCTスキャンデータを基に作成された精密な治療計画を実現する補助器具です。これにより、以下のメリットをご提供します。

  • 高い正確性:インプラントを計画通りの位置、角度、深さに埋入し、治療の成功率を向上させます。
  • 安心・安全:神経や血管を避け、リスクを最小限に抑えた治療が可能です。
  • 患者様への負担軽減:手術時間を短縮し、術後の腫れや痛みを軽減します。

「もっと安心して治療を受けたい」「できるだけ負担の少ない治療がいい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。最先端技術で、患者様一人ひとりに最適なインプラント治療を提供します。

まずはお気軽にご相談ください!
あなたの笑顔を、サージカルガイドが支えます。

【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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