インプラントの保険適用

  • 保険適用されるケースが限られるインプラント治療。その条件や費用の特徴を分かりやすく解説します。
  • 治療を受けられるのは大学病院などで施設基準を満たした医療機関のみです。

インプラント治療の保険適用とは?

インプラント治療の保険適用とは?

1. インプラント治療の基本

インプラント治療とは?

インプラント治療は、歯を失った部分に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。この治療は見た目の自然さと、咀嚼機能の回復に優れているため、多くの患者に支持されています。しかし、通常は自由診療として扱われ、保険診療との差が大きいのが特徴です。

  • 自由診療と保険診療の違い
    自由診療では、高品質な材料や最新技術を選択できるため、患者一人ひとりに合わせたカスタマイズが可能です。一方、保険診療は一定の基準内で治療を行うため、費用を抑えられるものの選択肢が制限されます。
  • 一般的な治療費の相場
    インプラント治療の費用は1本あたり30万円~50万円程度が相場です。この中には、診断料、手術費用、人工歯の作製費用が含まれます。ただし、患者の状態やクリニックによって大きく異なるため、事前の見積もりが重要です。

インプラント治療が保険適用される背景

  • 日本におけるインプラント治療の現状
    日本では依然としてインプラント治療の多くが自由診療に分類されます。これは、保険適用の条件が非常に厳しく、適用される症例が限定されているためです。そのため、多くの患者が医療費控除や分割払いなどを活用して治療を受けています。また、健康保険が適用される場合でも、治療方法や材料に一定の制限があることが一般的です。

2. 保険適用となる条件

保険適用となる条件

健康保険でカバーされるインプラント治療のケース

  • 先天性部分無歯症の場合
    先天的に6本以上の歯が欠如している「先天性部分無歯症」が診断された場合、健康保険が適用されることがあります。このケースでは、インプラント治療が噛む機能や顎の発育に不可欠と判断されるため、保険適用が認められます。特に小児期から治療が必要な場合が多く、専門的な診断が求められます。
  • 事故や病気による顎骨の欠損
    交通事故や病気により顎骨が連続して1/3以上失われた場合、インプラント治療が保険適用の対象となることがあります。この場合、義歯では十分な機能を補えないと判断される場合が多く、機能回復を目的にインプラント治療が選択されます。特に、がんの手術後や外傷による重度な欠損が対象です。

保険適用のために必要な手続き

  • 病院や医師の選定条件
    健康保険でカバーされるインプラント治療を受けるには、特定の条件を満たす医療機関で治療を行う必要があります。保険適用が認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
    • 保険医登録された医療機関であること。
    • 歯科医師が所定の教育を受け、保険適用のインプラント治療を行える資格を持っていること。
  • 必要な診断書や書類
    保険適用を受けるには、詳細な診断書が必要です。これは、以下の情報を含む書類が求められる場合があります。
    • 保険適用の対象である疾患名(例:先天性部分無歯症、外傷性顎骨欠損)。
    • 治療計画書と使用するインプラントの詳細。
    • 治療の必要性を証明する医師の所見。
    また、手続きが煩雑になるため、事前に医療機関に相談することをお勧めします。

3. 施設が満たす基準

大学病院なら施設基準を満たしますが、一般開業の歯科医院では下記の条件を満たす歯科クリニックはほぼないといってよいでしょう。

大学病院
  • 歯科または歯科口腔外科の病床の数が20以上を完備している病院であること。
  • 歯科または歯科口腔外科に5年以上の勤務経験がある、または、3年以上のインプラント治療の経験がある常勤歯科医師が2名以上いること。
  • 宿直医や日直医が整備され、医療機器保守管理や医薬品の安全管理のための体制が整備されていること。

4. 保険適用外となるケース

保険適用外の治療内容

  • 自由診療となる理由
    インプラント治療の多くは、保険適用外の自由診療に分類されます。その理由としては以下の点が挙げられます。
    • 美容目的や機能向上を目指した治療は、保険の対象外となる。
    • 健康保険は必要最低限の治療を対象としており、高度な技術や高品質な素材を使用するインプラント治療はその範囲外である。
    • 患者の症例が保険適用条件(例:先天性疾患や重大な欠損)を満たさない場合。
  • 適用外でも利用可能な助成制度
    保険適用外の場合でも、以下の助成制度を活用できる可能性があります:
    • 高額療養費制度:一定額以上の医療費を支払った場合、超過分が払い戻される制度。
    • 民間の医療保険:一部の生命保険や医療保険では、インプラント治療が対象となる特約がある場合があります。
    • 自治体の補助:特定条件に該当する場合、自治体が一部費用を助成する場合があります。

5. インプラント治療に生命保険は適用される?

支払い対象外

2012年(平成24年)4月1日よりインプラントは先進医療の対象外となりました。従って、歯のインプラント治療は、先進医療給付金の支払い対象外で、民間の生命保険の手術給付金の対象となりません。

例外

病気やケガの治療を目的としてインプラント治療で入院した場合は、入院給付金の支払い対象となります。 従って、歯周病や虫歯が原因で歯を失った場合のインプラント治療は手術給付金の支払い対象外ということです。

契約している民間の保険会社によって条件がそれぞれ異なるので、一度問い合わせてみることをお勧めします。

6. 費用負担を軽減する方法

費用負担を軽減する方法

医療費控除の活用

  • 医療費控除の対象となる条件
    インプラント治療の費用は、高額であるため医療費控除の対象になる場合があります。以下の条件を満たしていることが重要です:
    • 1年間の医療費(世帯合算)が10万円または総所得の5%を超える場合が対象。
    • 通院にかかった交通費(公共交通機関の利用)が含まれる。
    • 美容目的でなく、機能回復を目的とした治療であること。
  • 実際にどれくらい負担が軽減されるか
    医療費控除による還付金は、所得税率によって異なります。例えば、年間の医療費が50万円で控除額が40万円の場合、所得税率が20%であれば、8万円が還付されます。また、地方税も軽減される可能性があります。実際の還付額は次のように計算されます:
    • 還付額 = (医療費 - 控除対象外額) × 所得税率

保険適用を活用するための注意点

  • 適用可能な病院のリスト
    保険適用を受けるには、特定の条件を満たした医療機関で治療を行う必要があります。以下のようなポイントを確認してください。
    • 保険医登録がなされているか。
    • 保険適用条件に精通した歯科医師が在籍しているか。
    • 必要書類の作成や申請のサポートがあるか。
    各地域の保険適用可能な病院リストは自治体や保険者に問い合わせることで入手できます。また、歯科医院の公式ウェブサイトでも確認可能です。

7. インプラント保険適用に関する最新情報

診療報酬改定の影響

  • 診療報酬改定とは?
    診療報酬改定は、日本の医療費の基準を見直すプロセスで、インプラント治療の保険適用条件にも影響を及ぼします。最新の改定では、次のような変更が見られました:
    • 適用範囲の拡大:先天性部分無歯症や事故による欠損以外の新たな適用条件が検討されています。
    • 医療費負担の軽減:患者の自己負担額を軽減するため、インプラントの保険点数が見直される可能性があります。
  • 具体的な影響
    令和6年度の改定では、次のような影響が予測されています:
    • 6本以上の歯が欠損している患者への保険適用の拡大。
    • インプラントに関わる診断や手術に対する報酬の引き上げ。

最新情報は厚生労働省や歯科医院の情報を定期的にチェックしてください。

海外の保険制度と比較した日本の特徴

  • 海外の保険適用例
    ヨーロッパや北米では、インプラント治療が公的保険または民間保険でカバーされるケースが多く見られます。
    • ドイツ:公的保険でインプラントがカバーされることがあり、患者の自己負担額が低い。
    • アメリカ:民間の歯科保険で部分的にカバーされるが、プランによって適用範囲が異なる。
    • 北欧:インプラント治療が高齢者福祉の一環として無料で提供される場合がある。
  • 日本との比較
    • 日本では保険適用の条件が厳しく、適用範囲が限定的。
    • 自由診療が主体のため、治療費用は患者の全額負担となるケースが大多数。
  • 日本の制度の課題
    • 高齢化社会における咀嚼機能の維持は、国民の健康寿命に直結する重要な課題。
    • 海外の先進事例を参考に、保険適用条件の緩和や助成制度の充実が求められています。

8. 保険点数

保険点数は毎年の改正で変更されます。あくまでも目安をして参考程度のとどめてください。

・広範囲顎骨支持型補綴診断料:1,800点

・広範囲顎骨支持型装置埋入手術:一回法による手術: 14,500点

・広範囲顎骨支持型装置埋入手術:二回法による手術: 一次手術:11,500点, 二次手術:4,500点

・広範囲顎骨支持型補綴(インプラント義歯): ブリッジ形態のもの:18,000点 床義歯形態のもの:13,000点

※材料費 別

インプラント体標準型:2,020点,3,500点,2,370点、インプラント体特殊型:7,880点

暫間装着物:(Ⅰ)620点,(Ⅱ)361点,(Ⅲ)519点,(Ⅳ)164点

アバットメント:(Ⅰ)1,410点,(Ⅱ)1,370点,(Ⅲ)2,740点,(Ⅳ)1,620点

アタッチメント:(Ⅰ)436点,(Ⅱ)1,380点,(Ⅲ)340点

スクリュー:280点

シリンダー:826点

※ 2/3顎以上の範囲にわたる場合は4,000点を加算。上部構造は別途加算。

9. まとめ

保険適用されるケースを把握し、計画的な治療を目指そう

インプラント治療は高額な自由診療として認識されることが多いですが、一部の条件を満たす場合には保険適用が可能です。先天性部分無歯症や事故による顎骨欠損など、特定のケースでのみ保険が適用されることを理解し、適切な診断を受けることが重要です。

計画的な治療を進めるためには、以下を意識しましょう。

  • 自分の症状が保険適用条件に該当するか、専門医に相談する。
  • 保険適用可能な医療機関や治療内容を事前に確認する。
  • 必要書類や手続きについて医療機関から正確な情報を得る。

費用負担を軽減するための具体的なステップ

インプラント治療の費用負担を軽減するためには、以下のような具体的なステップを取ることが効果的です:

  1. 医療費控除の活用
    治療費や通院交通費を含む医療費控除を申請することで、税金の還付を受けることが可能です。領収書や証明書を必ず保管しましょう。
  2. 専門医との相談と事前見積もり
    治療の選択肢や費用を明確にするために、専門医に相談し、事前に詳細な見積もりを取得します。これにより、治療計画が立てやすくなります。
  3. 最新情報のチェック
    診療報酬改定や保険適用条件の変更に関する最新情報を定期的に確認することで、より有利な選択肢を見つけることができます。

保険適用される条件や費用負担軽減の方法を理解し、計画的に治療を進めることで、経済的にも負担を抑えながら健康を維持することが可能です。インプラント治療を検討する際は、まず専門医や保険者に相談し、適切なアプローチを選択しましょう。

インプラント治療が保険適用になるかどうかは、以下の手順で確認できます。

健康保険組合や市区町村の保険窓口に確認し、適用条件に合致するかを確かめましょう。

保険適用条件の確認

インプラント治療は特定の疾患や状況(例:先天性部分無歯症、事故による顎骨欠損)に該当する場合にのみ保険適用となります。

保険適用となるかどうかを、歯科医院に相談しましょう。

医療機関への問い合わせ

保険医登録を受けている医療機関であることを確認します。

医師に診断書を作成してもらい、必要書類を保険者(健康保険組合や国民健康保険)に提出します。

インプラント治療の費用負担に関する保険の仕組みは、健康保険と生命保険で大きく異なります。

  • 健康保険
    • 日本の公的保険制度で、特定の条件下でインプラント治療費の一部がカバーされます。
    • カバーの対象は、先天性疾患や事故など、機能回復が必要な場合に限定されます。
  • 生命保険
    • 主に民間の保険で、死亡保障や医療特約が含まれる場合があります。
    • 特約の内容によっては、インプラント治療が保険金支払いの対象になる場合もあります。ただし、自由診療としてのインプラント治療は一般的には対象外です。

健康保険が日常の医療費負担を軽減する役割を果たす一方、生命保険はリスクに備えるための保障として利用されます。

現在、インプラント治療の多くは自由診療ですが、将来的には保険適用の範囲が拡大する可能性も議論されています。

ヨーロッパや北米では、保険適用の範囲が広い国もあり、日本も同様の方向性に進む可能性があります。

保険適用の現状

日本では2012年に一部条件でのインプラント保険適用が始まりましたが、適用条件は非常に限定的です。

将来の可能性

高齢化社会の進展により、咀嚼機能の回復が生活の質(QOL)の向上に直結するため、インプラント治療の需要が高まっています。

診療報酬改定や政策変更によって、適用条件が緩和される可能性があります。

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当院では、患者様に出来るだけリスクの少ないインプラント治療をご提供するため、日本口腔インプラント学会指導医が治療を担当し、オペ環境や設備、術後のアフターケアやメンテナンス等にも力を入れております。江戸川区篠崎駅前で安心・安全で精度の高いインプラント治療をご希望の際にはぜひ、当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

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日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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