嗅覚異常が7割ほど回復しました(前回参照)。
今回の件で、香りがわかることの有難みが心に染みました。
風味を感じるって、素晴らしく楽しいこと。
匂いのわからない食事やお茶はなんとも味気なく(文字通り)何ていうか「何食べても一緒だな……」とテンションもあがりません。
機能が戻ってきた今、自分の鼻への感謝の気持ちがすごいです。
というわけで、今回は「香り」をテーマに、特にお茶の香りの中でも代表的なダージリンの「マスカテルフレーバー」についてまとめました。
この記事は
- 紅茶を飲み始めた、あるいはダージリンに興味があるけど「いまいちマスカテルフレーバー」が何なのかわからない
- 自分の感じている香りが本当にマスカテルフレーバーなのか自信がない
- 色々なダージリンを飲んだがマスカテルフレーバーを感じたことがない
という方に向けて書きましたので、参考になさってくださいね。
「マスカテルフレーバー」についてはお茶の専門家さんやティーテイスターの方が今までに色んな考察や持論を展開されています。
逆に言えば、この香りには数々の謎や不思議がいまだあり、全容は解明されていないとも言えます。
それを前提としたうえで、ある程度のご説明はできますので以下をお読みください。
大まかに言えば「マスカテルフレーバー」のダージリンには3種類あり、
- もともとマスカットのような香りがする茶
- ウンカに噛まれたことによる反応で甘い果実香が生じた茶
- ダージリンの製造過程(乾燥条件や火入れ等)でマスカットの香りが出るようにした茶
*フレーバーを付けるわけではありません
となります。
本来お茶の香気成分には白ブドウの香りと同じもの(リナロール、ネロール、ゲラニオール)が微量に含まれていますが、いまだ特定されていないものもあります。
なお発見されているお茶の香気成分は700種類以上あります。
やや小難しい話になるのですが、ちょっぴりお付き合いください
香気成分とは、生葉に含まれるテルペン配糖体、カロテノイド、脂肪酸、アミノ酸等その他の成分が栽培・製茶中にさまざまに変化したものです。
現在、マスカテルフレーバーはホトリエノール(3,7-ジメチル-1,5,7-オクタトリエン-3-オール)などによるものと考えられているそうですが、この他にも青葉や花やスパイス、柑橘などの香り成分や要素と複合・重なり合ってお茶の香りとして作用するので、マスカテルフレーバーは確実にこの因子に由来する! とは断言できかねるところでしょう。
また、「紅茶のマスカテルとはマスカットの香りではない」とおっしゃる専門家さんもいます。
‟マスカテルとはフルーティーな風味や香り、濃厚な味やボディ全般のことを指し、生のマスカットの味や風味があるわけではない、また「紅茶のシャンパン」というのも複雑で豊かな香りをもつダージリンにかかる「比喩表現」である” というものです。
つまりマスカテルと表現されていても、必ずしも「マスカットの香り」が感じられるわけではないということですね。
もちろん、本当にマスカットの香りがするお茶に出会うこともあるでしょう。
酸味が勝つような若いマスカット、甘く芳醇なシャインマスカット、発酵したワインのようなマスカット、多種多様なマスカット香のお茶が存在することは間違いありません。
ですが、果実香や甘い香り、豊かなボディやコクをすべて総合的に判断して「マスカテル」と表現しているお茶も中にはあるので、もし「“マスカテルフレーバー”と表記されているのにマスカットの香りが全然感じられない!」とあなたが不安に思ったとしても、おそらく問題ないかと思われます。
もしかしたらその「マスカテル」は複合的な香りや風味全般のことを指しているのかもしれません。
私もその昔、マスカテルですよと言われて飲んだダージリンに「え、これがマスカット? 思ってたのと違う、ブドウの味がしないんだけど……!」と焦って、私の味覚が変なのかなと思いそれから色々なお茶をお味見しまくりました。
だってマスカットと言われたら、例えばビールのIPA(インディアンペールエール)のホップ香りのような「ガツンとしたブドウ感」のあるアロマと味を想定するじゃないですか。
まあ実際私の嗅覚が特段に優れている!という自信はないので、昔飲んで焦ったダージリンももしかしたらかすかなマスカットの香りがあったのかもしれませんが、そんなに微かなら謳わないでもらえると助かります、というレベルだったと思います(何となくいい香りはしましたが)。
まったくの無味無臭であれば、そのお茶の質がかなり微妙か嗅覚の異常が疑われますので、試しに他の方に飲んでもらってください。
まとめ
マスカテルフレーバーと説明されたダージリンから“生のマスカット”の香りが感じられなくても別に不思議ではありません。
そもそも茶園によって定義が違うというか、マスカテルの表記は任意ですので画一の香りがあるわけではありません。
また、マスカットの香りが感じられないのは自分の嗅覚に起因しているかも、と思ったら、お店や茶園・価格帯を変えたりお店の方のレビューや淹れ方のアドバイスを聞きながら色々飲んでみてください。
嗅覚も、訓練というか経験によるものも大いにあるので、利き茶を繰り返していると「あ、なんか分かる」という瞬間があったりします。
「これはマスカットの香りに近いかしら」というダージリンも、他のフルーツやお花の香りも多様に混ざっていますし、淹れ方ひとつでその香りもうまく出なかったり全然違う様相になったり渋みばかりが出たりしてしまうので、結局のところ複数のお茶を飲みかつ何度も試行錯誤して淹れる練習をするのが「これぞ!」という香りのお茶に出会う近道かな、と思います。
少しでも参考になりましたら幸いです。
読んでくださりありがとうございました。