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プロ野球・中日が随所で協力 異色のドラマ「バントマン」とは…

バントする主人公の柳澤大翔=東海テレビ提供 拡大
バントする主人公の柳澤大翔=東海テレビ提供

 プロ野球・中日ドラゴンズの協力の下、東海テレビ(名古屋市)が制作したドラマがフジテレビ系列で放送中だ。その名も「バントマン」。元中日選手の柳澤大翔が戦力外通告を受けた後、人を幸せにするために“犠牲バント”のような行いを積み重ねていくヒューマンドラマ。ついに21日に最終回を迎える、この異色の作品がどう作られているのか、プロデューサーの遠山圭介さんに尋ねた。

戦力外通告から「秘密の福利厚生」に

 遠山さんは愛知県出身で子どもの頃からの中日ファン。5年ほど前から脚本家とドラマ制作について話していく中、元プロ野球選手を主人公として、ドラマを作る構想を温めてきた。東海テレビは中日球団と関係が深く、中継映像の素材も持っている。そのため球団に相談したところ、協力を快諾された。

 ドラマ内では中日の本拠地・バンテリンドームナゴヤで撮影されたシーンも使用されている。実際の中日の応援歌も劇中に登場する。

 主人公の柳澤は地元の高校野球のスターでドラフト1位入団したが、結果を残せず、戦力外通告を受けた。それでも現役にこだわっていたところに、ある企業から誘いを受け、SBO部(秘密の福利厚生組織)に配属される。社員たちを陰からサポートしていく日々を過ごすというあらすじだ。

初安打初本塁打は「当時」のユニホーム

「バントマン」のプロデューサー・遠山圭介さん=東京都内で2024年11月19日午後、岸本悠撮影 拡大
「バントマン」のプロデューサー・遠山圭介さん=東京都内で2024年11月19日午後、岸本悠撮影

 細部にこだわる演出も見過ごせない。柳澤役の俳優・鈴木伸之さんは野球経験があるが中学まで。自主トレとして素振りなどトレーニングを重ねて撮影に臨んだ。プレーするシーンもあるため、元プロ野球選手の指導も受けたが、アドバイスする部分がほとんどないという評価だったそうだ。

 柳澤は2010年ごろにドラフト1位で入団し、プロ初安打が本塁打だったが、24年10月に戦力外通告を受ける。入団当時のユニホームは現在と異なり、ホームなら白を基調に肩に青のラインが入り、背番号も青だった。そして、柳澤が最も選手生活で華やかだったプロ初安打初本塁打のシーンでは、鈴木さんはこのユニホームで登場する。

「頑張っている人の背中を押したい」

 プロ野球を題材としながらも、決して華やかなだけの物語ではない。むしろ、ごく普通の生活や支える立場の人々にフォーカスしているのが本作の特徴だ。遠山さんは「やはり(米大リーグ・ドジャースの)大谷翔平選手みたいな存在が目立つけれど、世の中のほとんどの人は、日常の中で何かを犠牲にしながら誰かのために頑張っている。そんな人たちの背中を押したい」と語る。その象徴が「バント」だった。

 長打力が持ち味の選手だった柳澤が人生という試合の中で、コツコツと“バント”、登場人物たちを幸せという名の“本塁”に向けて導いていく。プロ野球に限らず、派手な結果にばかり注目が集まる風潮について、考えさせられる面もある。

 「バントマン」最終回は21日午後11時40分放送。配信サイト「TVer」「FOD」でも視聴することができる。

【岸本悠】

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