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北朝鮮が対ウクライナで「ロシア派兵」した本当の理由

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北朝鮮の目的は、最大の敵である米国を屈服させることにある=Bloomberg
北朝鮮の目的は、最大の敵である米国を屈服させることにある=Bloomberg

 北朝鮮がロシアを支援するため、ロシアに援軍を派兵した。派兵は米国や韓国と戦うための準備であり、今回もその一環といえる。

 2024年10月に北朝鮮が軍部隊をロシアに派兵したことをウクライナが発表し、韓国や米国、NATO(北大西洋条約機構)が確認した。23年から始まった武器支援に続く、北朝鮮によるロシア軍事支援である。

 これまでも北朝鮮は数多くの海外軍事支援を推進してきた。1945~94年の間に世界の約4分の1にあたる53カ国に対して軍事支援を行ったことを公表している。戦闘部隊を派兵した戦争も少なくとも5例はある。北朝鮮による過去の海外派兵をベトナム戦争と第4次中東戦争のみと論じた記事が散見されるが、これは大きな誤りである。

 北朝鮮では、海外派兵を公表しないことが通例となっている。戦後、何年もたってから公表するのである。従って、ロシアに派兵された軍部隊の詳細はまだ分からない。ゲリラ戦を専門とする特殊部隊という情報もあるが、未確認である。北朝鮮の特殊部隊はベトナム戦争で初めて派兵され、在ベトナム韓国軍に対する心理戦を実施し、実際に何人かの韓国人兵士たちを寝返らせた。

 北朝鮮の派兵について、外貨稼ぎと論じる記事があるが、実際には、北朝鮮が軍事支援をしてきた国々はたいていが見返りとして外貨や報酬を期待できない貧しい国であった。ベトナム戦争の場合には、ほぼ北朝鮮側の持ち出しである。兵士の食料ですら、一部は北朝鮮から送った。米国からの支援を期待してベトナムに派兵した韓国とは全く反対であった。

米国の敵対国を支援

 確認できる限り、北朝鮮の海外派兵は経済的にマイナスの効果をもたらすことが多かった。北朝鮮はそれを覚悟の上で海外に派兵してきた。それは北朝鮮の目的が最大の敵である米国を屈服させることにあるからである。

 北朝鮮の各個人がどう思おうと、これは共産主義革命を目指す朝鮮労働党と社会主義国家である北朝鮮の最大の目標なのである。21年1月に開催された朝鮮労働党第8回党大会でも、金正恩党総書記が「対外政治活動を、我々の革命発展の基本的な障害であり最大の敵である米国を制圧し、屈服させることに焦点を合わせ、方向づけるべきである」と語っている。

 武器支援も海外派兵も、最も重要な目的は、最大の敵である米国やその同盟国と戦う国を支援することである。報酬をもらうことは副次的な目的である。おそらく…

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