
連載
わたしの気持ち
読者の皆様からの投稿欄「わたしの気持ち」。「女の気持ち」「男の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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香りと記憶 さいたま市浦和区・平野陽子(主婦・49歳)
2025/3/7 02:00 529文字先日、父の一周忌を終えた。 突然の訃報で、遠方から駆けつけたときは間に合わなかった。2年前に母が亡くなっていて、父は1人で富山県の実家で暮らしていた。亡くなる2カ月前には電話で元気に話していたのに。 四十九日法要で帰省したときは春になっていて、あるじのいなくなった家の裏にはたくさんのスイセンの花が
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闖入者の心得 大阪府島本町・小倉素子(児童発達支援員・66歳)
2025/3/6 05:22 553文字結婚して40年がたち2人生活も長い。夫は料理が得意なので、共働きの我が家はとてもありがたかった。子供たちにはお袋の味ならぬおやじの味が染みこんでいる。 昨年私も退職、週3で仕事をしながら、4月からにわか主婦?としてキッチンに参入した。このタッパーは汁漏れしないので「漬物用」に、など一つ一つ彼の中で
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返信 横浜市青葉区・佐藤光徳(会社員・61歳)
2025/3/6 02:00 534文字前略 2月22日本欄「字を習う」の投稿者さんへ。 あなたの投稿を読んで、結婚前に妻と交際していたときのことを思い出しました。 当時はパソコンは存在していたものの電子メールは普及しておらず、妻との連絡手段は電話が主で手紙もやり取りしていました。確かに手紙だと「ああ、この人はこんな字を書くんだな」とわ
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ありがとう 和歌山県新宮市・片山紀子(主婦・68歳)
2025/3/5 05:06 551文字私にとって三女であるあなたは、重度重複障害という重い言葉の中で42年間生きてきたけど、いつも笑顔を絶やさず、私たち家族の中心でいてくれました。どんな重篤な時も何度も乗り越えてきたのに、あっけなく旅立ってしまいました。 でもあなたが残してくれたものは大きく、通夜、葬儀には大勢の方が参列してくださり、
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孫娘 山梨県富士吉田市・小野富子(無職・78歳)
2025/3/5 02:01 542文字昨年暮れに帰ってきた孫娘が正月、「日帰りだけど」と言ってアルバイトでためたお金で箱根に連れていってくれました。彼女は今年、大学4年生になります。 孫娘が高校2年生のとき、母親に病気が見つかりました。母親は治療を続けながら、孫娘のお弁当を作ったり塾の送り迎えをしたりなど受験のサポートを懸命にしていま
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ため息 奈良市・大倉美代子(無職・71歳)
2025/3/3 05:07 549文字私は97歳のしゅうとめと同居している。私は71歳で最近、病院通いが増えてきたが、75歳の夫は元気だ。しゅうとめは認知症もなく、ほとんどのことは一人でできる。人生100年を地でいっている。 以前からしゅうとめは食事の時、ため息をつくことがあった。食べている最中に「はあー」と何度もするので、私はそれが
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野外幼稚園 東京都世田谷区・武藤奈緒子(自営業・48歳)
2025/3/3 02:01 563文字高校生から小学生まで3人の子どもがいます。長男が生まれたときは不安ばかりだった私が今、3児の母親になっているのは、ある幼稚園との出合いがきっかけでした。 その幼稚園は東京都内の住宅街で38年間、園舎を持たず野外で保育を行っています。自然を教材とした保育や昔ながらの遊びのすばらしさはもちろんですが、
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義母のレシピ 兵庫県川西市・宮路陶子(自営・54歳)
2025/3/1 05:08 554文字2月15日の本欄「レシピ帳」を読み義母を思い出した。新聞のレシピは頼りになり、ポケットアルバムに入れるとちょうどいいといった内容だ。一昨年亡くなった義母もよく新聞のレシピを切り抜いて冷蔵庫に貼っていた。冷蔵庫の側面は色あせた記事から最近のものまで混在していた。義母が生きていたらその整理法を教えてあ
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二つの楽しみ 千葉県印西市・今野礼子(主婦・68歳)
2025/3/1 02:00 552文字♪こんにちはこんにちは 懐かしい三波春夫さんの「世界の国からこんにちは」が脳裏によみがえる。 前回の大阪万博が開催された年、夫は17歳、私は14歳だった。関東に住む私たちはそれぞれ、はるばる大阪まで万博を見に行っていた。 当時、外国人を見る機会はほとんどなく、夫は初めて見るベトナム館の美しい装いの
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離れていても 滋賀県草津市・浅井順子(会社員・67歳)
2025/2/26 05:08 556文字しばらく前、大学生の次男の学舎が変わるため、寮の引っ越し手伝いに行った。高校を卒業した時は段ボール2箱だった荷物が、本や雑貨であふれている。増えたものは成長の証しだろうが多すぎるとぼやいていたら、遠方に住む長女と長男が手伝いに来た。 ここ数年、感染症拡大の影響や学業や仕事の都合で会えずにいた3人兄
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ナナとの別れ 長崎県諫早市・鎮守賢治(会社員・60歳)
2025/2/22 05:07 569文字「ナナ、おはよう」。私の朝はこの一言から始まる。返事はないが代わりに足音が近づく。ナナは愛猫の名前。13年前に知り合いが保護した猫だ。縁あって我が家に迎え入れた。猫を飼うのは初めてだった。ナナという名前はこれまで寂しくつらい思いをしてきただろうから、これからは良いことにたくさん出会えるように「ラッ
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字を習う 神奈川県茅ケ崎市・佐藤裕紀奈(自営業・29歳)
2025/2/22 02:01 543文字小さいころからずっと、人には見せたくないほど字が汚いことが悩みだった。2年前からペン習字教室に通い、少しずつだが自分の字を矯正しているところだ。 もともと友人宛てに手紙を書くことが好きで、思い立っては手紙を送っている。突然手紙が届いて驚く友人も、普段スマホでのやり取りが多い中で手紙をもらうのはうれ
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「子育て失敗」 東京都・匿名(団体職員・59歳)
2025/2/21 02:00 547文字1月31日本紙、人生相談のタイトル「私は母の失敗作なのか」にドキッとしました。私の娘からの相談かと思ったのです。私も何気なく「子育て失敗したかな」とつぶやいたことがあります。 現在の子どもたちの人生に不満があるわけではありません。経済的な理由などから進学させてやることができず、結果として人生の選択
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梅が香薫る 大分県竹田市・油布晃(農業・71歳)
2025/2/20 05:11 536文字大学を終えると、すぐに高校の国語の教員として採用された。卒業式の答辞を添削するようにと、上司から指示された。 学生時代の私は、将来は文筆で生計を立てたいと考えてもいるくらいだった。「梅が香薫る……」という冒頭の常とう句をまず変えた。するとすぐに呼ばれて「こういうのには、定型というのがあるのだから」
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靴下 兵庫県宝塚市・假家由子(主婦・88歳)
2025/2/19 05:08 532文字◇假家(かりや)由子 気に掛かりながら、しばらく放置していた包みを開けた。3年前、夫が入院療養していた病院を転院する時、持ち帰った手回り品である。時計や眼鏡と共に靴下があった。(おや? 私のたたみ方ではない……) あれは晩秋の薄ら寒い日であった。「外に出るとき、足が冷たいので靴下を持ってきてくださ
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きょうも満点 茨城県東海村・斎藤道子(主婦・40歳)
2025/2/19 02:01 551文字中学生の娘がいる。反抗期娘VS短気母。イライラを抑えられず、夫からは「会話のキャッチボールからはほど遠く、豪速球を投げ合っている」と、あきれられる日々だ。 娘がおなかにいるとわかったのは、東日本大震災のすぐ後のことだった。余震が続き、道はあちこち通行止め。電気も水もたびたび止まり、やっと見られるよ
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形のない贈り物 高知県南国市・後藤利彦(会社員・56歳)
2025/2/18 05:09 566文字25歳の時、工場建設のため滞在していた埼玉・南越谷で偶然、阿波踊りを見かけた。初めて見た阿波踊りは美しく、力強く、夢のような世界に衝撃を受けた。つらい毎日を忘れ、元気づけられた。同時に、中に入ってみたいと思った。その後、工事も完成。仕事も次々と変わり時は過ぎていったが、あの時の光景はいつも心にあっ
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ラジオ放送100年 長崎市・福吉拓雄(80歳)
2025/2/16 05:03 560文字今年はラジオ放送開始100年。もはやラジオは空気のような存在だ。ラジオを意識しだしたのは3歳の頃だったと思う。当時はラジオは裕福な家庭の象徴のような存在であった。 昭和25(1950)年に小学校に入学。すでに祖父の家には真空管ラジオがあった。家に上がり込むとすぐさまスイッチを入れ、NHKを聴いた。
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最期の贈り物 岐阜県美濃加茂市・渡辺清美(自営業・63歳)
2025/2/13 02:01 523文字私と一番ウマの合う大好きな父が、入院して3日で亡くなった。91歳、ステージ4の胆管がんだった。 毎月1回、かかりつけの病院で定期的に検査もしていたのに、なぜ早期発見ができなかったのだろう。いつも付き添っていた自分を責めた。 父は昨年の夏もスイカなどの夏野菜作りに精を出し、とてもおいしい野菜を育てて
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自転車 奈良市・榎並公子(主婦・77歳)
2025/2/12 05:02 554文字結婚を機に奈良に住むようになってから、車が生活必需品だった私が、自転車に頼るようになったきっかけは阪神大震災だった。 子育ても終えたその頃、運動不足解消のためにジムに通っていた。震災当日も「こんなことをしていていいのか」と思いながら、自転車こぎをしていたら、ジムの窓の下を買い物に行くらしい女性が自
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