日本経済新聞によれば、2023年のコンビニの年間来店客数は、のべ154億人にものぼるという。それだけの人数が来店するとなれば、当然ながら迷惑な客も少なくない。

 今回話を聞いたのはコンビニで7年間アルバイトをしている松野風香さん(仮名・26歳)。長年働いた中でも特に印象深い迷惑客について語ってもらった。

◆長時間居座る高校生カップルにうんざり…

「2年前ぐらいのことです。噂になっていたお客さんがいたんですよね。高校生のカップルなんですけど、何が迷惑かって言うと、とにかく帰らなくて長時間居座るんです」

 松野さんが勤務するコンビニにはイートインコーナーはない。普通に考えれば、居座る理由はないはずだが……。

「別れを惜しむスポットとして使われてたみたいなんですよね。『もうバイバイかと思うと寂しい』とか女の子が言ってたんで、たぶん女の子の家が店の近くにあるんじゃないかと。彼が家まで送ってきて、別れる前にふたりで過ごすために使っていたっぽくて」

 寒いと帰るのが億劫になるのか、冬になってからはさらに滞在時間が伸びたという。

「2月ごろがひどくて。1台のスマホでふたりで1時間ぐらい動画見てたり、見つめあったり、抱き合ったり、いやいやデートする場所じゃないからってツッコミたくなるくらい、本当に帰らないんですよ」

◆物を買わないのに「こっちは客だぞ」と逆ギレ

 迷惑に思うのは、それだけではなかった。

「お金がないのか、全然物を買わなくて。なのに滞在時間は長いっていう。ついには個室の男女兼用のトイレにふたりでこもるようになって、さすがに店長が怒って注意したんです」

 店長の言葉に男子高校は逆ギレ。店内は物々しい雰囲気になった。

「男の子の方が、『こっちは客だぞ! 何で店にいたらダメなんだよ!』ってキレだしたんです。店長が『用もないのに長時間居座られるのは迷惑だ』って言ったら、『二度とこんな店使わねえからな!』って捨て台詞を吐いて店を出て行ったんですが、スタッフ全員が『頼むからそうしてくれ』って思いましたね」

 念願叶い、その後カップルはやってこなくなったという。

◆“トイレを意図的に流さない”50代男性

「もう一人は『トイレの番人』って呼ばれてたお客さんですね。これは自分が標的にされたやつだったんですが、ガチでうざかったです」

 夜遅い時間にやってくる、常にチノパン姿の50代ぐらいの中年男性だった。

「うちの店のトイレ掃除は当番制なんですが、店長とふたりの時はバイトがやる感じになるんですね。そうすると決まった時間に私が掃除することになるんですが、トイレの番人はそれを狙って仕掛けてくるんです」

 松野さんが言う「仕掛けてくる」とは、トイレを流さない迷惑行為だという。

「大小どっちの場合もあるんですが、私がトイレ掃除に入ると“ブツ”が残っていて……うんざりしながら流して掃除をする。終わってトイレを出た時に、その客がニヤニヤこっちを見てくるっていう。しかも、大きいときのほうが明らかにうれしそうな顔してこっち見てくるんです……」

◆耳元で気持ち悪いセリフを吐かれ…

 トイレの番人に標的にされた松野さんは、店長に相談することにした。

「『掃除の時間をずらして良い』と言われた通りに従っていたんですけど、トイレの番人は決まって遅い時間に来店するんです。お客さんが少ないことに加え、時間差でトラップを仕掛けてくるため、結局仕掛けられた“ブツ”に遭遇することになったりするんですよね」

 最悪だったのは、清掃した後に声をかけられたことだった。

「私に近寄ってきて、耳元でこう言ったんです。『トイレって、流す時に中身が飛沫になってトイレ中に飛び散るって知ってた?』って。脳が言葉の意味を処理した時に、ガチで膝から崩れ落ちそうになりましたね」

 その後、理由は不明だが、ある時からトイレの番人は店に来なくなったそうだ。だが、不意にニヤつく顔を思い出してしまい、吐き気を催すことがあるという。

<TEXT/和泉太郎>

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

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