ノベルの読書ブログ

読んだ作品は忘れないようにその時どう感じたかを備忘録として記録に残していきます!また読書をする時間がない方にかいつまんだ内容を読んで作品を少しでも楽しんでいただけたらと思います!

朝井リョウ「正欲」(新潮文庫)を読んでみて。〈7〉

 

 

《あらすじ》

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよなーーー。

息子が不登校になった検事・啓喜。

初めての恋に気づく女子大生・八重子。

ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。

ある事故死をきっかけにそれぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。

 

読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。

 

【要約・感想】P81-P93

桐生夏月

2019年5月1日まで、443日(平成から令和へと元号が変わるまで)

「やっぱ桐生じゃ」

夏月が仕事している最中に、男が珍しいものでも見つけだしたかのような声で言い放った。それは中学生時代の同級生である元野球部キャプテンの西山修、そしてその妻である広田亜依子も同級生でありベビーカーを押していた。

とうとう見つかってしまったのか。今まで誰とも出会わなかったことに感謝した。

西山修が夏月をちょうど探していたとのことである。それは今度、同級生である穂波辰郎と桂真央が結婚式を挙げてその二次会に同窓会をしようということで夏月に連絡を取りたかったが携帯電話を中学卒業から代えたため音信不通だったのである。

もう一人連絡がつかない同級生がいる。それは三年生の途中で転校した佐々木佳道。西山修から「お前ら二人で校舎の水飲み場におるとこ見た気がするんじゃけど」と忘れ物をどこに置いたかふと思い出したかのように昔の記憶を掘り起こした。ひょっとしたら二人の関係が今でもつながりがあるのではいかと推測して聞いたのである。

仕事が終わり帰宅してからも佐々木が気になってしまう。ネットで「佐々木佳道」と検索してみると大手食品会社に勤務をして写真まで掲載されてあったのですぐに本人だとわかった。

思い出したあの日。佐々木と二人で浴びた冷たい水飛沫。

内容は採用サイトであったため、インタビューの質問に答えていた。

【Q この会社に就職を決めた理由は?】

【A 端的に言うと、食欲は人間を裏切らないから、です】

 

西山修は同級生で目立つタイプの人気のある男子であって、今回の同窓会も率先して企画をしている。私自身の学生時代を思い出すと、同級生から人気で先生からも気に入られている男子がいた。子どもながらに少し羨ましい気持ちと嫉妬に近い気持ちも一緒に感じていた気がする。私は中学生時代はとくに目立つわけでもなく学力もそこそこでスポーツのクラブ活動もそれなりに楽しんでいたが目茶上手かというとそんなことはなかった。これが平凡というのだろうか。今思えば、あの時こうしたらよかったのになぁと振り返ることがたまにあるが、でもそれでいいのだ。

いや...それでよかったのだ

佐々木佳道。登場してしまったか。あの児童ポルノ摘発事件の容疑者が。

夏月の同級生ではあるが、佐々木が転校してからは特に会っているわけでなく、どこで何をしているのかさえ知らないくらいであった。これからどのように佐々木と夏月が関わっていくのか、またあの日二人で水飛沫を浴びたときに何かがあったのだろうか、それとも佐々木との絡みがそれしかなく、それしか思い出せなかっただけなのか。

インタビューに食欲は人間を裏切らないと、夏月はむしろ食欲は裏切るもので睡眠欲は裏切らないという思想があるなかで、佐々木との考え方や思考について今後どのように影響を与え与えられるのだろうか

 

 

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