1997年の話。
午後出発予定だったリロングウェ発ロンドン行きは、機材故障によって翌日に時間がずれた。
予定は完全に狂った。だが、どうしようもない。
リロングウェ市内で最も高級とされるキャピタルホテルで宿泊することになった。
ブリティッシュ・エアウェイズが諸々を負担することになる。
スーツケースを部屋に置き、晴天も下、誰もいないプールサイドでくつろいでいた。
自分の都合では絶対に立ち寄らないホテルだったが、一泊ぐらいなら滅多にない機会ぐらいに考えていた。
ホテルに知り合いがいるわけでもなく、エリア3の自宅へ戻るにしても余計なタクシー代もかかる、
ただひたすら時間が過ぎるのを待つしかなかった。時間が永遠に続くような錯覚。
翌朝、集合の時間になってもシャトルバスが出発する気配はなかった。さらに部屋で待機。
結局、午後3時くらいになってついに空港へ出発した。まる24時間以上遅れることになった。
空港に着いても、さらに待たされた。原因の機材故障は回避できなかった。
最終的に、直行便だったはずが、一旦、南アフリカ、ヨハネスブルグ空港へ飛び
便を乗り換えることになった。どうこうしているうちに夕方になってしまった。
薄暗い中、着陸した中型機は、今まで見たこともないマークのデザインだった。
南アフリカ航空の機体だった。
ブリティッシュ・エアウェイズがチャーターし、急遽、南アから飛んできたようだった。
ようやく搭乗できた頃、既にとっぷりと闇に包まれていた。
みるみる間にマラウイは離れていく。空港以外、地上にほとんど明かりは見えない。
時間の経過がわからない。暗闇の地上が急に明るくなってきた。南アのボーダーを過ぎたのか
オレンジ色の街灯の1本1本がはっきりと見えた。水銀灯なのだろうが、すべてオレンジ色だった。
地上が明るいことに驚いた自分に気がついた。不思議な気分だった。
ヨハネスブルグ発の席に座ったきり記憶がない。夕食をとらなかったことに気がついたのは、翌朝だった。