「対岸の家事」
1.「対岸の家事」作者 朱野帰子
「わたし、定時で帰ります。」の著者が描く、終わりのない長時間労働ー家事について描かれています。
「対岸の家事」は、現代の多様な家族形態や働き方を背景に、家事や育児の大変さ、孤独感、そしてそれに対する共感や支え合いの重要性を描いた作品です。この本は、家事や育児に奮闘する人々の姿を通じて、日常生活の中で見落とされがちな価値を再認識させてくれます。
2.あらすじ(ネタバレ注意)
主人公27歳の詩穂は、自分の意思で専業主婦になることを選びました。しかし、家事や育児に追われる日々の中で孤独感や自分の選択への疑問を抱きます 。物語は、詩穂の他にも様々な立場の登場人物たちを描いており、育児休暇を取って子育てに励む父親、家事と仕事を両立させるワーキングマザー、姑や患者にプレッシャーをかけられる主婦などが登場します 。詩穂は、彼らの苦しみや悩みに寄り添いながら、自分にできることを考え始めます。それぞれが自分の意志で選んだ生き方に自信を失いそうになりつつも、詩穂をきっかけにつながり合い助け合うことで、それぞれが満足できる生き方を見つけていきます。
3.テーマ
「対岸の家事」は、現代の多様な家族形態や働き方を背景に、家事や育児の大変さ、孤独感、そしてそれに対する共感や支え合いの重要性を描いています。専業主婦、専業主夫、ワーキングマザーなど、様々な立場の人々が登場し、それぞれの視点から家事や育児の現実を描いています。
この作品は、家事や育児の大変さを理解し、支え合うことの大切さを読者に伝える内容となっています。
4.読もうと思ったきっかけ
わたしは独身で、小さなワンルームマンションに住んでいますが、自分一人分の家事にすごく時間がかかってしまいます。家庭持ちで働く人々を尊敬し、「家事」というテーマに惹かれてこの本を手に取りました。
5.心に残った言葉
専業主婦の詩穂が「専業主婦は絶滅危惧種」と言われ、自分の選択に悩みながらも紫陽花を見て、ささやかな幸せを感じる時。
これは正しい暮らしではないのかもしれない。でもそんなことは全部忘れて、紫陽花を見て、「きれいね」とか「ぶどうみたいに見えるね」とか言い合うこの時間は、きっと遠い将来、詩穂の宝物になるだろう。
思い出すだけで泣きたくなるような、まばゆい記憶になるだろう。
紫陽花はひっそり日陰で咲く。たいていの人は、その花の盛りに気づくことはない。足早に通り過ぎ、電車に乗ってめまぐるしい社会へと出ていく。
その花の存在に気づくのは、大きな穴に落ち込んでしまった時だ。
誰もそばにいてくれなくなって、初めてその色の鮮やかさに気づく。”
詩穂が近くの公園で、ちょっと苦手なタイプのパパ友と出会った時。大空を飛んでいる飛行機雲を見ながら感じたこと。
決して交わらなかったであろう人と、いま詩穂は話している。
それは遠い国に行くのと同じくらい得難い時間なのではないだろうか。
いつか遠い将来、詩穂にとって大切な宝物になるかもしれない。たとえ相手が苦手なパパ友だったとしても。
詩穂がさまざまな人達と出会い、寄り添い、自分の選択に自信を持てたことを感じた時。
どんなことでも一線を超えると新しい風景が見える。料理も掃除も洗濯も、ご近所付き合いも恥ずかしがらず、やったことのないことに挑戦していれば、きっと新しい自分でいられる。
どんな変化にだってついていくことができる。
世界はいくらだって広げられる。時代が移り変わってもきっと大丈夫だ。そう思えた。
専業主婦の詩穂が紫陽花を見てささやかな幸せを感じる場面や、パパ友との交流を通じて感じた新しい発見など、詩穂が日常の中で感じた小さな幸せや気づきが印象的でした。
6.感想と気づき
この本を読む前は、専業主婦の方達の大変さを全然理解できていませんでした。
家事や育児の大変さを理解し、母や姉、友人たちにもっと優しい言葉をかけたり、手伝うことの重要性を再認識しました。
少し想像力を働かせて、相手の立場になって考えてみようと思いました。
7.まとめ
『対岸の家事』は、身近すぎて見落としがちな「家事」について考えさせられる一冊でした。家事や育児に携わる人々に感謝し、自分の家事にも誇りを持つことが大切だと感じました。また、新しいことに挑戦する勇気や、他者との支え合いの重要性を再確認するきっかけにもなりました。