俵屋宗達が天正遣欧使節の一員としてヴァチカンに行ったかどうかは別にして、使節が実際にローマに向かった頃は、スペインではフェリペ二世の統治下、カトリックはグレグリオ十三世の時代。カトリックもスペインも我が世の春の頃といってもいい。あの時代、帆船で長崎からローマに行くなんざ、まさに命懸け。嵐、猛暑、水、海賊とそれらを全部クリアして立ち向かわなければならない。併し、宗達らは考えた。伴天連が来たということはこちらからも行けるはず。確かにそうだが、自分の身に置き換えるとどうだろうか。だいたいのことは訊いて分かっていただろうが、知れば知るほど二の足を踏んでしまわないか、生きて帰れる保証もない。それでも行くか?無事着いた 宗達らは現地でダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を見るが、その場所で少年カラヴァッジョに出くわす。この物語、読めば読むほどフィクションが過ぎるような気もしてくる。作り話もここまでくれば着色しすぎという気が湧いてくるところが残念だったかな。